第60回 ソムリエの実力・実態 その6発泡酒の抜栓
- Tweet
- 2003年7月17日(木)
(フランスのシャンパーニュやイタリアのスプマンテ)を
大きな音をたたせて抜栓していますね。
F1の表彰台では、泡を吹き出させて飛ばしあったりしています。
いつでも乾杯の合図のように
「ポーン」と音をたたせるものかというと
普段はある決まりがあるのです。
それは、なるべく抜栓時に音を立てさせないことなのです。
変に拘りを持っているソムリエやワインオタクは、
なんとか無音でコルクを抜こうとする
無駄とも言える努力をします。
コルクを固定している針金を解き、
右利きならば右手でコルクを持ち、
左手でボトルの下のほうをもってゆっくりと
ボトル自体を廻していくのです。
決してコルクを廻して抜栓するのではありません。
ゆっくり慎重にじわじわコルクを浮き上げていき、
最後はコルクからわからないように中のガスを漏れさせてから
コルクを引き抜きます。
つまり、少しずつわからないようにガス漏れさせてまで、
周囲の人間に音を聞かせない抜栓方法が
素晴らしいとされているのです。
結構力が要る作業でして、
最後の詰めでのガス漏れを急いでしまうと、
ポーンと無情にも音がしてしまうのですが、
私にはそんなに神経質になる作業とは思えないのです。
大きな音で客が驚いてしまうのを防ぐのでしょうが、
泡さえ噴き出させなければ少々の音など出しても
発泡酒の味わいなどに影響はないと思うのです。
実際、レストランでは
無音で抜いているソムリエをあまり見かけませんし、
裏でいつの間にか抜いてコルクだけ見せる場合もあります。
扱いが雑でみっともない抜栓を見てしまったのは
東麻布の「カメレオン」でのこと。
音どころか中身も噴き出し、
ソムリエの片手は肘上までびっしょり濡れてしまっていました。
ボトルで頼んだならば、量が減っていますから直ぐ交換でしょうが
幸いグラスサービス用でした。
どこまで雑にボトルを扱えばああなるかは想像できませんが、
なかなか発泡酒の抜栓には神経を遣うものなのです。