第595回 天然でもおいしくない鰻がある訳
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- 2005年3月27日(日)
マスヒロさんが野田岩での
読者参加の天然と養殖の鰻食べ比べ会を企画していました。
勿論私も応募したのですが当然なのか、
残念ながらはずれてしまったのですが、
その会の報告で、参加した読者のみなさんは
「天然は風味が違う」と感心されていました。
でも、これって、
「天然はおいしい」と言うことではないのと思うのですが、
マスヒロさんは天然鰻がおいしい、と方向付けし、
そして天然に拘っている
野田岩を宣伝しようとした趣旨だったと思います。
しかし私が経験した範囲では、
そんなにおいしい「天然鰻」に遭遇したことがありません。
野田岩しかり、尾花しかり、前川や地方の鰻屋をはじめ、
都内の和食店で仕入れたものでさえ
当たりに巡り合うのは少なかった。
生態系が海と陸とで違うと批判されましたが、
陸の動物は牛、馬、豚とおいしいとされるものは皆「養殖」。
しかし、ジビエだけは「天然」というか
「野生」がいいといわれる不思議は以前に書きました。
同じ陸の生態系でも豚は養殖、イノシシは野生がうまいという、
私には矛盾したように思えることに
異論をはさむ人をみたことがありません。
要は「こういうものが旨いんだ」と
食通や先輩、親、そしてマスコミから
長年にわたって刷り込まれていってしまった結果だと思います。
チーズでも、熟成したウォッシュやアオカビを
最初からおいしいと感じる人は少ないはず。
ジビエにしてもそうです。
よってトロにしても牛にしても、鰻にしても
刷り込まれたものが「おいしいもの」と
一般にはなってしまったのでしょう。
経験や刷りこみにより、
人の感じる味わいは変化していくものと考えます。
マックのハンバーガー、大人は安いから食べるかもしれませんが、
おいしいと思う人は少ないでしょう。
でも、「おいしい」と食べ続ける子供が多いようですから、
この理論が証明されます。
肝心の天然鰻の話が遅れました。
やはり読者の方、おそらくその道の方からのお話でしたが、
天然鰻が海から上がってきて何年も上流で生息、
産卵のため再び海へ帰る際、河口付近で大量の餌を食べるそうです。
その食後の満腹な鰻がおいしいのだと。
中には上流にあがらず、
河口付近にとどまって餌を食べまくっている鰻もいるそうで、
これがまた良いとか。
ということは逆に考えると、
下流に生息して豊富な餌を食べていない鰻、
つまり中流や上流にいる鰻などはおいしくない?
そんな鰻が
天然鰻と称するものに混じっているのではないかと考えた次第です。
何でも「天然鰻」を出せばいいってもんではないはずです。
マスヒロさんをはじめ、野田岩の主人も「天然」というだけで凄い、
と思わせるように語っていますが、
天然鰻は当たりはずれが多いと言われているのは
昔からよく聞きます。
読者や一般客に知恵をつけさせたくないのでしょうが、
こんなことをやっていていいのか、
店側も客側も胸襟を開いて語り合う、意見や情報交換する、
という方向へ向かった方が
結果将来的にはお互いにメリットがでると私は考えます。
開かれた飲食店業界、これが一番です。