第58回 雇われシェフの賞味期限は?

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  • 2003年7月15日(火)
第51回でオーナーシェフに「未来永劫」がないのでは
という問題提起をしました。
10年経ってしまうと時代の嗜好の変化についていけず、
飽きられてしまうというならば、
「雇われシェフ」たちはどう扱えばいいのでしょうか。
昔は今のように店が乱立していませんでした。
オーナーシェフの店というのも少ないものでした。
グランメゾンなどの大店でシェフを張って名を挙げた人たちが、
ぽつぽつ独立してきたのが1980年代半ばでしょう。
今は、オーナーシェフの店が全盛です。
いや、実際は見かけだけの店も多いのですけど。
スポンサーが別に存在する場合、
レストランチェーンが親会社の場合などがほとんどで、
出資額の過半をシェフ自身が占める店というのは
少ないのかもしれません。

大店ではなく、規模の小さい店でも
雇われシェフを交換しながら続けてきた店はあります。
一世を風靡し、一時は通りの名前の元になった
「ビストロ ド ラ シテ」。
数多くの有名オーナーシェフを排出してきました。
その名のとおり「ビストロ」の雰囲気そのもので、
最近は集客に苦労しているようにみえますが、
若い無名の料理人の登用の際の、
オーナーの見る目は確かだったのでしょう。
シェフを取替え(独立)ながらしぶとく存続しています。

私は雇われシェフの寿命は
オーナーシェフのそれの半分くらいかな、と思っております。
だいたい5年くらいです。
長く雇いすぎ、運良く評判が続いたとしても
やがては独立されてしまいます。
シェフのカラーが染み付いてしまった後の
シェフ交換は非常にリスキーであります。
例えば「リストランテ 山崎」。
濱崎シェフの店といった印象が強くなり、
次に引き受けたシェフは料理での集客に
かなりのプレッシャーを感じるでしょう。
独立した店が人気になるほど
埋没していく印象を与えてしまいます。

「アピシウス」にしても
今は「パ マル」の高橋シェフの時代が長すぎた反動か、
今は人気の面でもパッとしません。
このように、適度な期間で
思い切ってシェフを交代する勇気が必要な場合もありますが、
逆に賞味期限が過ぎてしまったシェフを、
思い切って交代させる勇気の必要な店もあります。
「ザ ジョージアン クラブ」は二代目のシェフが
もう5年近くはやっていると思います。
一時は大ブレイクしましたが、一軒屋、豪華な内装、といった
環境だけでは集客は続かないようです。
最近はかなり、客数が落ちています。
ここにもオーナーの決断が待たれます。