第565回 素人の立場でもサイト主宰者が陥るトラップ

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  • 2005年2月25日(金)
読者の方からのお便りでこんなものがありました。

「料理評論家、フード・レストランジャーナリストといった
いわゆる『プロ』の店評価は、
彼らが宣伝屋なので胡散臭く信用していない。
しかし、店側から宣伝を頼まれていないはずの『素人』のHPや
ブログにあるお勧め店に行っても
過大評価と感じるのはどうしてなのか」

問題とされていたサイトは
恐らく鮨屋訪問では右に出るものはないと思われるもの。
月に10回以上も
いわゆる高額鮨屋(でも結構偏っている)へ行かれている方が、
店の主人やついには築地の中卸の社長とも親しくなりながら、
常連の店を褒めまくっています。
私も情報入手のため、
一般客が投稿、評価するガイドや
サイト主宰者の食べ歩き日記というものをよく見ます。
すべてとは言いませんが、
しかしほとんどの主宰者は、料理店のシェフ、板長など
料理人や食材業者との親しい関係、良好な関係を
自慢げに述べられています。
自分はこれだけ関係者と親しい、という事を
意識してか無意識かはわかりませんが述べています。
私はこれを、マスヒロ氏がロブション、フェラン、二郎さん、
などの名を利用して
自分を権威付けする手法と同じことだと考えます。

サイトで広告を募っている方もいるようですが、
原則これらの主宰者は
無料で飲食店訪問日記、評価を書いているはずです。
では、なぜ、頼まれもしないのに
このようなサイトを公開しているのか。
私、友里も毎日無償で更新していますから、
彼らと同じと言えるでしょう。
その理由は、これを言ってしまっては
またまたお怒りを買うかもしれませんが、
ずばり「自己顕示欲」以外の何物でもない。

犬養さんやマスヒロ氏、森脇さんなどは一応自称プロですから、
原稿料を貰って飲食店探訪記を書くのはわかります。
本業が何なのかはっきりしません小山薫堂さんも、
「ベージュ トーキョー」など
マスヒロ氏以外のマスコミが誰も褒めていない店を
ベタ褒めする姿勢や感性に疑問ですが、
原稿料を貰っていますから日記を公開するのは理解できます。

しかし、原稿料などない、つまり何のインカムも見込めないのに、
そして最初は誰に頼まれもしなかった店探訪記のサイトを造る、
世間に日記を公開するという動機は、
人ならば誰にも持ち合わせているであろう
「自己顕示欲」以外に考えられません。
こんなに沢山の店へ行った、自分はこう評価する、
といったことを発表したい自己顕示欲の強い方たちなのです。
友里の思い込み、断定しすぎとまたまた言われそうですが、
他の理由を挙げられるでしょうか。
ネットで公開している友里本人が言っているのですから
間違いないと考えます。
本来、日記など人に見せるものではありませんから。

かくいう私も、
料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちの評価と
自分の感想との乖離が大きいことに憤慨して、
レポートを知人たちに送り、
それがきっかけで執筆依頼を受けました。
最初は誰にも頼まれず、知人向けに勝手に配信しただけです。
賛否両論の反応があるでしょうが、
読者の方の反響が多ければ嬉しくなるのは、
この手の人は同じはずです。
世界的に有名なワイン評論家、
あの100万円ディナーの提唱者であるパーカー氏も
本業であった弁護士時代にワインの評価を知人に配信したのが
今のカリスマ誕生のきっかけだと記憶しています。

そういう「自己顕示欲」の強い人は、「素人」といえども
やはり同じ公開するならば大きな反響を得たい、支持を得たい、
と考えるのは当たり前です。
ディベート大好きのこの友里でさえ、
賛同のメールをいただくほうが嬉しいのですから、
ヘソが曲がっていない主宰者はよりその傾向が強いでしょう。
そうなると陥ってしまうのが店や料理人への密着なのです。
普通の読者はそうは店を訪問できません。
親しくなりたくても出来ないでしょう。
そこへ、自分はこれだけ通っている、
これだけ親しい、卸業者とも会話が出来る、
といったことを言いたくなるのは仕方ないことで
批判は出来ません。
かくいう友里も、このキャラで売り出さなければ
そうなっていたかもしれないからです。
業界を敵に回した感がありますから、
今では友里は親しくしたくても出来ないのが現状ですけど。

親しくなるとどうなるか、
当然冷静に評価できなくなるのは周知の事実です。
「痘痕もえくぼ」といったところでしょうか。
「サイトを通して営業(新橋の鮨屋)に貢献できた」
などと書いてあるのを読んでしまうと、
彼の陥ってしまったトラップの深さが相当のものだと感じます。
マスヒロ氏に日本有数の鮨屋と祭り上げられた新橋の店、
勘違いして派手な出版パーティを有名ホテルで開いた上野毛の店、
など最近は仕事も雑になってきたとの評判もよく聞きますが、
その辺の店の変化がもう判断できなくなっているのでしょう。

あくまで私の考えですが、素人のサイトといっても、
あまりに料理人との距離感がないような方のコメントは、
それなりに割り引いて読むほうがよいと考えます。
友里ほど極端なものがよいといっているわけではありません。
あくまで、
読者はその書き手のポリシー、スタンスをみて
判断することが必要だということです。