第530回 友里が考える「客が納得する店」とは その5ブレイクしたときの心構え
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- 2005年1月21日(金)
客が納得する店、
繁盛する店を考えていこうという趣旨のシリーズで、
ブレイクした後の事を取り上げるのは
ちょっとなにかと思いましたが、しかしこれがなかなか難しいもの。
勘違い料理人のほとんどは、
この甘い罠にハマってしまいますから、
前々からしっかりとした心構えをもつことが必要だと思います。
これは飲食店だけにいえることではなく、
すべてに当てはまることですが、
舞い上がって自分を見失わない、初心を忘れない、
自分を見失わない、ということでしょうか。
これは私にも言えることですが、
いままで目立たなかった人が、
ちょっと注目を浴びると誰でもうれしいものです。
特に目立ちたがり屋の人にはたまらないでしょう。
私も一昨年、かなりの週刊誌や雑誌で取り上げられたときは、
その内容がたとえボロクソに言われていたとしても
嬉しいものでした。
ちょっとした有名人になったという勘違いもでるでしょうし、
自慢したくもなります。
覆面をウリにしているので、
人様になかなか自慢できなかったのが残念でしたが。
自分では気をつけているつもりですが、
一般客の一人なのに、
料理店の専門家になったと勘違いしてしまわないか、
仲間に対しても不快な思いをさせていないか、心配ではあります。
ま、私に言わせれば、これを言うとまた恨みをかいそうですが、
フード・レストランジャーナリストたちもまったく専門家ではなく、
素人に毛が生えたくらいですから、
専門家なんていうものは存在しないと考えます。
出版業界にも問題があります。
本を執筆すると決まった瞬間から、
出版社側は執筆者を「・・・先生」と呼び出します。
一瞬誰のことかと面食らったのですが、
弁護士や医者の業界でもお互いを「先生」と呼び合う不思議。
会社関係ではお互いを「社長」と呼び合う事もあります。
人間は慣れがあります。
そう呼ばれることに違和感をもたなくなり、
なにか偉くなったような気がしてしまいがちですが、
端から見れば茶番な内輪のヨイショ呼び合いです。
どこの業界でも勘違いしてしまう要素はあるわけで、
気をつけなければならないと思っております。
料理人の場合、思わぬブレイクでマスコミデビューしてしまうと、
集客がかなり楽になります。
友里が問題視しても客足は落ちないでしょうが、
マスコミのヨイショはかなりの効果があるはずです。
フード・レストランジャーナリストたちが寄ってくる、
その溜まり場になるかもしれません。
そして、なんとかプロデューサー、コーディネーターといった類の
業界人も近づいてくるかもしれません。
そのような派手な付き合い、人脈に触れてしまうと、
自分を見失ってしまいがちです。
また彼らは見失うように仕掛けてくるはずです。
自分たちの新しい仕事がかかっているからです。
しかし、その手に乗ってしまっていいものなのかどうか。
最近では秋田、角館の「一行樹」。
残念ながら私は行く機会がありませんでしたが、
雑誌の写真を見るかぎり
料理人夫婦は長靴を履いた純朴な方に見受けられました。
しかし、何を勘違いしたのかというよりおだてられたからか、
ゲンテンというバッグメーカーのスポンサーのもと、
店をたたんで銀座のど真ん中に進出してきました。
新しい店には行きましたが、
厨房やホールに夫婦のイメージは反映されておらず、
ただのダイニング調の店構え。
昨年はじめの東京でのイヴェントで出た料理が
大半をしめていたことから、
レパートリーも少ないのではないでしょうか。
秋田にあってこそ持ち味がでる
「一行樹」ではないでしょうか。
秋田の店はマスヒロさんがかなり力を入れた店で、
銀座店はオープン前にはかなりの雑誌が取り上げていましたが、
結構簡単に予約が入ります。
魂を売ってしまったといっては言いすぎかもしれませんが、
料理人夫婦は果たして銀座に出てしまって
この先満足、幸せを感じることができるのか、
私は疑問に思います。
ブレイクしたのはいいのですが、
マスコミやこの手の仕掛け人との付き合いに
注意しなければならないという一つの例ではないでしょうか。