第47回 ソムリエの実力 その4独自の流派を興すのか、「笄櫻泉堂」(青山)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2003年7月4日(金)
最近よく「・・・堂」と名の店を時々目にします。
ネーミングに凝って注目させたいのでしょうか。
だいたい、こんな所に労力を使う店は
肝心の料理やサービスには力を入れないものです。
私は奇をてらった名の店に、大きな期待をしていません。

この「笄櫻泉堂」。青山のイタリアンでして、
そのバブリーな建屋、必要ない大型熱帯魚の泳ぐ池、
料理内容と色々問題のある店なのですが、
最高に傑作だったのがソムリエの立ち居振る舞いでした。
おそらくこんなことをするソムリエは他にはいないでしょう。
世界のワイン界の常識を覆す、独自の流派を興したようです。
ワインの知識や技量などに劣るソムリエは結構います。
この店も知識の点でも疑問符がついたのですが、
なによりおかしかったのはワインのデカンタージュでした。

澱のあるワインや開いていない若いワインのために、
デカンタに移しかえる作法ですが、
テーブル上にある蝋燭やマグライトは、
その際の澱のデカンタへの混入をチェックするために
下から照らすものです。当然、移し変えながらチェックをし、
澱が移りそうになったならデカンタージュを止めます。
でも、この店のソムリエは、蝋燭にかざさずに移し変えました。
多めのワインをボトルに残して。
その後おもむろに、ワインの残ったボトルを蝋燭でかざして
なにやらチェックをするのです。
そして、デカンタも蝋燭にかざしてなにやら見ています。
既に移し変えた後にデカンタ、ボトルをみて
澱の具合を調べても遅いのですけど。
そして、トドメはデカンタを思い切りシェイクするのです。
乱心したかと思われる行動でした。
新しい流派を立ち上げるつもりがないならば、
この一連の動作はなんなのでしょうか。
このようなちょっとワインを知っている人なら
誰が見ても奇異に感じることを平気でするような
「ソムリエ職」が存在できるのですから、
「ソムリエ」もたいしたものではないと思われてしまいます。

有名な機械式時計などを輸入していた会社が
経営の母体と聞きました。建屋や熱帯魚に凝る前に、
基本をきっちり教育することが必要だったでしょう。