第403回 野田岩が天然鰻と言い続けていいのだろうか

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  • 2004年9月3日(金)
387回のコラムで、野田岩の仕入れ鰻の疑問について述べました。
入り口脇に山のように積まれていた発泡スチロールの箱には
「焼津養鰻魚港協同組合 鰻 蒲焼 あみ50入り」と書かれていて、
これは山本益博氏やマスコミが宣伝し、
自らも店パンフレットで拘って表記している
「天然鰻」でないどころか、養殖で既に捌いて蒲焼にした状態で
焼津の養殖屋から仕入れているのではないか
と疑問を投げかけました。

その後、
この鰻の業界に関係している読者の方たちからもお便りをいただき、
また、私のブレーンとして信頼している人が
野田岩に確認の電話をすることによって、
その実態がかなりわかってきました。

焼津産の養殖鰻といえども、
純粋な意味で国産ではないかもしれず、
仕入れる鰻屋はそのことさえも知らない可能性があるということ。
また、野田岩の場合、
やはり、年々天然鰻は入手しにくくなっているそうで、
普通は白焼きにしか使っていない。
蒲焼や鰻重には普段は使っていないとのことでした。

私はマスヒロ氏のように、
なんでもかんでも「天然鰻」が「養殖鰻」よりうまい、
と思っていませんので、
それほど「天然鰻神話」を信奉していませんが、
マスヒロ氏やマスコミが「天然鰻神話」を煽り、
野田岩自体もパンフレットで
あたかも冬の時期以外は
天然鰻に拘って客に供しているような表現をしているのは、
いかがなものでしょうか。

純米酒がアル添酒(本醸造酒)より優れているかは別にして、
純米酒に拘ってあたかも客に出していると公言している居酒屋が、
実は、燗酒にしにか純米酒をつかわず、
多くの客が頼む冷酒や常温酒には
アル添酒を出しているようなものではありませんか。

不当表示と言われても言い逃れはできないのではないでしょうか。
しかも、中元など贈答用の真空パックの蒲焼は、
野田岩で捌いているのではなく、
養殖屋からの蒲焼だとのことでした。
マスコミやマスヒロ氏が
無理に造り上げた「野田岩」のブランドをつけていますが、
この贈答用の鰻は、OEM物ということでしょうか。
わざわざ野田岩から
購入するレベルの物ではないのではないでしょうか。
デパ地下で売っている野田岩物も
このレベルのものと推測します。

他の有名鰻店のように、わざわざ「天然」と言わずに
黙って養殖鰻を出していればいいのではないでしょうか。
「白焼きだけが天然です」とはっきり言うだけで充分、
パンフにある「冬に時期以外は天然鰻云々・・・」といった
誤解を受ける、はっきり言えば客が騙される表記は
潔くないと考えます。
天然鰻の蒲焼、鰻重もたまには出せます、
と言っていれば客も誤解しないと考えます。

売らんが為、儲けるが為に手段を選ばないのではなく、
あくまで客に真摯な姿勢、正直な姿勢を見せるのが
飲食店の矜持ではないでしょうか。

野田岩自身はもとより、
謝った情報を読者にインプットさせるようにあおり続けた、
山本益博氏や他のマスコミ、レストラン紹介本、
評価本の再考を願います。