第38回 皿数のみで勝負だ、「松下」(早稲田)

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  • 2003年6月25日(水)
評価本ではその評価が真二つに割れています。
山本益博氏や「東京最高のレストラン」では
東京を代表する和食のごとき記述。
しかし、「東京いい店うまい店」では
味のランク付けで最低評価の3つ星です。
いくら味には主観が伴うといっても
これほどの違いが出るのでしょうか。

コース主体の営業方針で、13000円(13品)、15000円(16品)の
お任せコースが主体のようです。
立地や、カウンター割烹というジャンルの割には
かなり強気な価格設定です。

でも、この多数皿の中には
いわゆる「皿数稼ぎ」としか思えないレベルの料理が
紛れ込んでいるのです。
全体的にはいわゆる和風、居酒屋料理に準じるものが多い。
量も少ない「胡麻豆腐」や「キャベツのコンソメゼリー」は
味もぼけています。
驚いたことに、客の性別によって勝手に量を変えていました。
「ズワイ蟹」は蟹味噌和えとハサミが基本のようですが、
女性の皿にはハサミがありません。
店側のミスかと問い合わせたところ、
「品数が多いので女性には出していません」と来ました。
これって店側が勝手に判断していいのでしょうか。
椀物を含めて出汁というものに深み、特徴を見出せません。
極めて凡庸な味付けの店が、「立地の悪い名店」に
仕立て上げられていたのです。
いちいち、主人は料理を出すたびに「この店の売りだ」とか
「おいしいよ」と暗示をかけてくるのにも参りました。
反発心を持っている客、へそ曲がりな客もいるのですけどね。

「東京最高のレストラン」の座談会形式のところで、
執筆陣の一人がこの店のことを
「ただの街場の和食屋で過大評価されている」と
発言していたのですが、
推奨している執筆者の一人、北条芽以氏は
「でも、お腹一杯になります。敷居も低くて入りやすい」と
弁解していたのには驚くとともに笑わせられました。
食材や味のことで弁解しなかったからです。
「食べ手のプロ」の執筆と謳っている本で、
この発言はないでしょう。校閲ミスではないでしょうか。
カットすべき内容です。
彼女はこの本で、「食べてのプロ」と自称するには疑問な発言、
評論をかなりしていると思いますから、
次回の執筆陣に残留できるか注目のところです。

量は重要な要素ではありますが、料理店評価は
食材、味、サービス、価格のバランスあっての問題です。
立地条件の意外性だけに惑わされてはいけません。