第342回 友里征耶のタブーに挑戦 その3毎日築地へ行くことは本当に意味があるのか
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- 2004年6月21日(月)
「シェフが毎日築地へ通っている」といった言葉を使います。
毎日築地に通うと伝えることで、
読者は、シェフの勤勉さ、真面目さに加えて、
仕入れる食材が新鮮で質の良いものだ、
といった印象を感じ取るはずです。
ほとんどの読者の方が
何の疑問も持たずに受け止めておられると思いますが、
本当なのでしょうか。
東京のとある有名料亭、
高級食材を使った料理をかなり高額で提供する店ですが、
店の主人は正月初日くらいしか築地へ行かないと以前聞きました。
長年信頼関係を構築しあい、
決まった中卸しからしか購入しないシステムなので、
毎朝行く必要がないとのこと。
最高の食材を仕入れて持ってきてくれるということです。
つまり、料理店が中卸しの常連客として、
「特別食材」を「特別待遇」で入手しているのです。
ここで友里流に一ひねりしてください。
つまり、高品質な食材を扱う中卸は限られていると思うのですが、
そのような高品質食材は
常連の高級料理店向けに既に振り分け済みということです。
「次郎」でもネタ毎に仕入先は決めていると言っています。
ただ毎日いくのは顔つなぎとのこと。
フード・レストランジャーナリストがいう、
毎日通っている料理人は、
どちらかというと規模からみても個人レベル。
しかも毎日通って良い食材を選り好むということは、
仕入先が一定しないことの裏返しです。
色々見ながらその日の最高な食材を購入するとのフレーズですが、
既に良い食材は売約済みになっていて、
売りに出ていないはずです。
築地側にとっては常連ではない「一見客」になるはずです。
このような客(料理人)に、
本当に良い食材を適正価格で公平に卸すほど
世の中は甘くはないでしょう。
マグロでは「F水産」物が最高と言われておりますが、
鮨屋の主人が誰でも現金を握っていけば
売ってくれるものではありません。
シンジケートのようなものに入らなければならないのは、
「次郎」のオヤジも公言しています。
今流行の「さわ田」の主人も、
仕入先からの信用を得るのが大変だったと
雑誌か何かで述べていたのを思い出しました。
毎朝築地に通う努力は、
信頼関係構築などで必要条件ではありますが、
それがそのまま良い食材を入手できる、
といった充分条件にはならないことがわかると思います。
フード・レストランジャーナリストや料理評論家の
料理人褒め言葉のスタンダード、
「毎日築地へ足を運ぶ・・・」
というのは誤解を与えやすいので、
修正してもらいたいと考えます。