第267回 レ クレアシヨン ド ナリサワ 1

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  • 2004年4月7日(水)
フランスから帰国後、6~7年小田原でフレンチを営んだ蓄えと、
それによる銀行への信用力だけで、
南青山という一等地に
これほどの規模の店を出すことができるのでしょうか。
小田原でそんなにうまい商売ができたのでしょか。
実際は総合プロデューサーなる仕掛け人がいるようです。
この大仰な店名、予約時にフルネーム要求、と
かなり自信をもって(勘違いして)
成澤氏は東京進出してきたと推測されます。

フレンチだかギャラリーだかわからない外観は、高級感があります。
これからかなりの額を請求されるフレンチを食べることになると、
客に覚悟させる戦略のようです。
予約客が全員揃わないとホールへは案内しないのに、
ウエーティングのキャパは小さい。
4人グループだと
2組はスタンバイできないのではないでしょうか。

ホールは白と木目のシンプルだが高級感ある造りで、
余裕のある席配置で30名。
着席すると飾り皿の替わりに店名を記した
分厚いクリスタルのプレートが目立ちます。
そして麻のクロスにナプキン。
ガイド本には、ホールには床暖房が設置されているとありました。
レストルームにはホテル並みに
歯ブラシなどのアメニティーの他、塩胡椒も置かれています。
何でも用意してくれるのは有難い事ですが、
そのコストがそのまま客の懐を直撃する事実に、
犬養裕美子氏は目を背けているようです。

さてその料理。
オープン2ヶ月目の当時、コースが3種あるのみです。
そしてその値付けがまた奇抜。
8千円、1万5千円、2万5千円とほぼ倍々ゲーム。
コース毎に食材や調理法が書かれた
半透明の高級紙が3枚各自に渡されます。
前菜が2皿に魚と肉、
それにデセールが2皿にエスプレッソとプティフールの構成で、
最高値のコースには鮑料理がもう一皿つきます。
こんなに皿数を増やして
高い価格設定といった印象を薄めたいのでしょうか。
しかも「鰻屋の松竹梅の法則」が適用されていないようです。
梅である8千円のコース内容は
他のコースと比べると食材が見劣りします。
頼む気がおこりません。
逆に松に竹との1万円の差を感じないほど
2万5千円のコースは割高感があり、
自然と1万5千円のコースに追い込まれると私たちは思うのですが、
この店の客はかなりの割合で松を頼んでします。

ざっと見渡すと客層も独特。
富裕な自由業と思われる男性の小団体や
男性はタートルネックのいかにも業界人といったグループ。
チェックは現金で男性が支払っていましたが、
お釣は女性が受け取っていた会話がほとんどなかったカップル。
ホスト同伴の女性客と読みました。
彼らには2万5千円のコースに割高感を抱かないようですが、
男性も食前酒にミモザを頼む、
ハーフのシャンパーニュだけで通すなど、
あまりワインを飲む人たちがいないのも特徴です。
我々グループは竹と梅にチャレンジしました。
とても松は頼めません。