第241回 あの店は今・・・ その7ル レストラン ドゥ レトワール
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- 2004年3月12日(金)
フロアに一人だけのマダムは、
「ドタキャンが重なった」と弁解していましたが、
雨も夕方には上がっておりいささか疑問。
スタッフはマダム一人にリストラしているようで、
日頃から客が少ないのが想像できます。
問題点はかなり解消されていました。
向かいの
「山頭火」というラーメン屋自体の人気がなくなっているのか、
夜2日続けてチェックしましたが行列ができておりません。
しかもフロントのガラスにスモークを施したようで、
仮に行列が出来たとしても店内からはみえなくなっておりました。
サービスもマダム一人でしたが、
なにせ客が少ないので不便を感じません。
料理の出もタイミングよく、
デセールを食べ終わるのに3時間もかかりませんでした。
ま、客が少ないので当たり前ではありますが、
満席にならないこの店ならば、
もはや客はストレスを感じることはないはずです。
私が考えますに、不入りの原因は
シェフの目指す料理の値付けと方向性が
今のフレンチを支えている女性連や若い人たちに
まったく合わないからではないか。
最近の人気店、「オー グード ジュール」にしても
「サリュー」にしても料理は5~6千円で
デセールまで食べられます。
しかし、この店はコースが7500円、
基本的にお任せに近く料理に選択肢がありません。
スペシャリテなど魅力的な料理は、かなり高い追加を払うか、
アラカルトにしなければならないのです。
前菜が3~4000円、ドゥミポーションもありますが、
それでも2~3千円。
メインは4~6千円で、
ジビエ料理になると7000円を超えてしまいます。
まさに、ラーメン屋の前にオープンしている
恵比寿の小さなフレンチなのに、グランメゾン級の値付け。
仮にドタキャンで予約客が来なくても、
フリの客を期待できるはずですが、
店先のメニューを見た通行人はその価格に驚くからか
皆後ずさりして入店してきません。
料理は非常にしっかりした味付け。
濃厚な味わいの料理はワインなしでは食べられません。
例えばこの時期店のウリである「野兎のロワイヤル」。
ソースの色調からして濃厚で、
かなり手間隙かけて詰めていると思われますがこれが7500円。
腿肉の中にフォアグラや内臓を
ミンチにしたものを詰めていますが、
この強い味わいの料理はワインなしでは絶対に食べられません。
シェフの料理と営業方針の不一致が、
客の不入りの一番の要因と考える次第です。
今の客の主流である独身女性たちはそんなにワインを飲みません。
店の立地、雰囲気はグランメゾンでなく
どちらかというと女性客を頼らなければならないものなのに、
出している料理はヘビードランカー向けの超濃い料理です。
客がリピートするわけがありません。
ワイン飲みには濃厚ですがしっかりした料理、
レベルの高い料理と判断できるだけに、
コンセプトの間違いが残念でなりません。
ストイックに見受けられる三鴨シェフ。
スタッフに厳しいことを漏れ聞きますが、
それがホール内へ
悪い緊張感をださせてしまっているのも気になります。
客が入らないから価格を上げる。価格が高いから客が入らない。
若い女性の舌に合わないから新たな客が入らない。
常連や通好みの料理に走るから余計に孤立化する。
悪循環に陥ってしまっているのでしょう。
彼本来の才能を生かすなら、オーナーシェフを辞めて、
大きな資本の元で、雇われシェフに徹した方が
持ち味を発揮できると私は考えます。