第224回 ある週刊誌への取材回答 その4お店側からクレームはあるか
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- 2004年2月24日(火)
<回答>
今までの料理評論家、フードジャーナリストの姿勢から、
まさか、自分の店を鋭く突っ込んでくる本が
出版されるとは思ってもみなかったのでしょう。
免疫がなかったのではないでしょうか。
出版社へ電話でのクレームは結構あるようです。
しかし、その際、彼らは絶対に名乗らなかったそうです。
ある一店を除いて。
一方的に自分の都合の良いことをまくし立てるだけとか。
名乗らないので、お店からなのか、ジャーナリストからなのか、
それとも一般読者からなのか断定はできません。
しかし、雰囲気、口調から、
お店関係者、マスコミ関係者ではなかったかと
グラフ社からは聞いています。
「カード手数料は6%が当たり前だ、常識を知らないのか」
との電話もあったそうですが、
いくつかの独立系のカード会社を除いては、
交渉によって5%以下に押さえられるのも事実です。
現にVISAからは「6%ではない」と直接私は聞きました。
マージンは人気店では当然引き下げていると推定できますし、
それは営業努力としてやらなければなりません。
しかも問題にしているのは
客に手数料を転嫁しているということです。
料理評論家、フードジャーナリストが
この事を見逃すとは普通考えられません。
彼らは毎回食事の際、
何万円も現金で支払っているということでしょうか。
決済をまさかしていない、ということはないと思いますが。
また、気がついてもそれを問題だと考えないようでは、
一般的な感覚を持ち合わせていないと考えます。
「ワインはその購入時期などによって仕入れ値が違う。
高い安いといい加減なことを書くな」
といったクレームもあったようです。
でも、最近の店は新しいワインしか置けないのが現状です。
つまり、購入時期は最近ということです。
値付けの評価に取り上げている
ノンヴィンテージのシャンパーニュの仕入れが、
3000円前後というのはちょっとしたワイン好きなら常識です。
それを7000円で売っていて安い、1万円では高すぎる、
と述べているだけです。
また、たとえ、古いヴィンテージ、古酒があったとしても、
普通の経営者や料理人よりは
現状の市場価格、オークション落札価格に、
私は精通していると自負していますので、
判断を大きく間違えることはないと考えます。
よくフードジャーナリストたちから、
「悪口を言っても駄目だ。
店は常連を含めて客が温かく育てるものだ」
という趣旨の言葉を聞くことがあります。
確かに耳に聞こえの良い言葉です。
おいしい料理を出そう、サービスを良くしようと
一所懸命努力している店は、
たしかに温かく見守ってサポートしてあげることは
客としても必要かもしれません。
でも、今回取り上げた店は
ほとんどが功なり名を遂げてしまった人気店であります。
人間で言えば、一人前の大人、
中年や初老に値する店もあるでしょう。
若いうちから甘やかされ、持て囃されて育った人間と同じく、
これらの店はもう普通に温かく見守っても、
良くはならないのです。
私は「経営者・料理人の性格」が一番重要だと主張しています。
前向きで謙虚な人でない限り、
すでに性格は出来上がっておりますから、
温かく見守るだけでは効果がないと考えます。
一般客には、店選びとして、
今までの店に迎合した情報と違った物を提供して、
選択肢を広げていただきたいと思います。