第212回 あの店は今・・・ その3すきやばし 次郎

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  • 2004年2月12日(木)
緊張気味に扉を開けて入店したのですが、
店内の雰囲気が変わっているのです。
あまり緊張感を感じません。
ゴッドハンド、天才、日本一の鮨職人、
ロブションもフェランも脱帽の小野二郎さんの前は
既に先客で塞がれており、
またもや長男のいるつけ台の前へ通されます。
でも、以前感じたプレッシャー、客を値踏みする態度、
威圧感を受けないのです。
親子で先客の悪口をいうような素振りも見受けられません。
ただの、そっくりな無口で愛想の悪い親子の「鮨屋」といった
雰囲気になっていたのが意外でした。
次郎の雰囲気に慣れてきたからだけではないと思うのです。

ここは、完全分業制なのでしょうか。
鮨は一人の職人が客から丸見えのつけ台で、サクに包丁を入れ
シャリと合わせて一人で握るものと思っていたのですが、
何と、長男がサクから捌いたネタを、
二郎さんがおもむろに握り出す光景を見てしまいました。
我々の握りが始まるころは、
3番手と思われる職人さんがネタを捌き、
長男がそれをただ握る場面もかなりありました。
これって鮨屋でアリなのでしょうか。
手抜きではないでしょうか。
魚の包丁捌きも大切な技術の一つのはず。
握る技術だけに鮨職人の技量があらわれるわけではないはずです。

少なくとも、この日二郎さんの前に座れた
ラッキーだと思われた客も、
半分は巷言われる日本一の職人が捌いた握りでなかったことは
確かなようです。

中トロ、大トロは高いので客の要求がなければ出さない、
と本にもありましたが、
注文しなくてもコースの途中でしっかり出てきます。
さすがに、
最高レベルの中卸のシンジケートに入っているだけあって、
質は満足するもの。
大きすぎる車海老も、最初の時ほど感動はしませんが
旨みがあって満足。
鯖は別にしてコハダの〆加減が自分の好みではないのと、
ウニが本で言っていた白ウニではなく
バフンウニだったことが残念なだけで、
価格を考えなければネタ、仕事と
すべて平均以上のレベルにあるものでした。
この値段なら当たり前ですが、
せめてあと1万円安ければ
私もマスコミや料理評論家の「日本一」という賞賛に、
わざわざクレームをつけないでリピートするかもしれません。

ツマミは握りとダブります。
自腹の方は、くれぐれも握りだけの3~40分で退散してください。
その後、近くの気の効いたバーで飲みなおしたほうが
はるかに安くあがるでしょう。