第207回 料理人の勘違い その3同じ名物オヤジでもこんなに印象が違うのか

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  • 2004年2月7日(土)
料理店に限るわけではありませんが、
客商売にはいくつかの「ウリ」が必要です。
当然、料理自体に関するウリは必要です。
「食材」にこだわる、「調理法」などテクニックにこだわる、
「小皿料理や盛り付け」といった目先の変化で客を楽します、
など選択は、価格帯や狙っている客層など
店のコンセプトによって異なるでしょう。

スタッフも「イケメン」を揃えて
集客をはかる店もあるでしょうが、
古くからとられていたのは、
その店の大黒柱といえるオヤジのカリスマ性に訴える手法です。
いわゆる「名物オヤジ」の存在です。
最近は若くしてマスコミに持ち上げられ、
勘違いしてしまった料理人を良く見かけますが、
ある程度お年を召された名物料理人といえば
私の頭に直ぐ浮かぶのは次の3人です。

「次郎」小野二郎氏、
「京味」西健一氏、
「龍水楼」箱守不二雄氏。
江戸前鮨、京料理、仔羊のシャブシャブを主体とした中華と
ジャンルは異なりますが、その業界では大変有名ですね。
しかし、彼らの店へ行った時の印象、店を後にする際の後味は、
一見客にはまったく異なるものになるのです。

流行があるようで、
マスコミへの露出度は現時点ではかなり違いますが、
私が一見として初めて訪れた時の印象では、
大きくわけて彼らは2つに分かれます。
常連と一見を完全に区別、威圧する、傲岸不遜な態度をとる、
などの手法でカリスマ性を上げ、集客をはかろうとする小野氏。
勿論、一見客は長男にまかせて握る事はしません。
しかし、たいして通いつめていないと思われる若いOL風には、
鼻の下を伸ばして笑みを浮かべながら握る姿に
ダブルスタンダードを感じます。

反面、面白みのある語り口で料理の由来を長時間説明する箱守氏。
飽きさせない独特の口上がウリになっています。
また、一見客といえども商売に徹して色々話しかけてくる西氏は
サービス精神が旺盛です。
わざわざカウンターから出てきて、
客の椅子を引く西氏はちょっとやりすぎかとも思いますが。

それぞれ価格帯も食材も客層も異なるかもしれませんが、
一見を含めて客に対する考え方が
まったく異なるのは何故なのでしょうか。
一見を差別する店でも、
一見がまったくいなくなると常連の価値が低下するのは事実です。
一見あっての常連のはずです。
客がおいしく食べるには、
鮨だけは緊張感、威圧感が必要なのでしょうか。
マスコミや常連客、そして一見客が
今一度考えるべき問題だと私は思います。