第20回 鰻はデリバリーでもおいしいのか
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- 2003年6月7日(土)
蕎麦も鮨もデリバリーは避けろ、といわれています。
握りはカウンターで出されたものを直ぐ食べる、
蕎麦も伸びないうちに店で食べるのが一番でしょう。
中には、ちょっと時間を置いた伸びかけた蕎麦は
甘みがでてうまい、という人もいますけど。
一般に和食にしてもフレンチ、イタリアンにしても、
やはり造りたてがおいしいもの。
出された料理をすぐ口にしないで、だらだらおしゃべりをする、
酒ばかり飲んでいるだけの客をみると、
料理人もやる気がなくなります。
デリバリーは、家から出かけずにとりあえずなにか食べたい、
といった利便性を優先した場合に頼むものですから、
本来、味が云々という対象の料理ではありません。
私は、食材や料理法などの拘りを重視する店ではなく、
デリバリー専門の店や、街場のお店だけが
デリバリーを手がけていると思っていました。
まさかその分野で名店と評価されている店が
デリバリーをやりだすとは思ってもみませんでした。
東京の鰻では、「尾花」とトップを競うと評価されている
「野田岩 本店」。
天然鰻に拘る文言を店内などに記している店ですが、
ここは何と、港区近辺には「うな重」や「蒲焼」を
デリバリーしています。
最長の配達可能地域では、
ゆうに20分はかかるところもあります。
これは、その業界の格で言うと、鮨の「次郎」、
蕎麦の「竹やぶ」、フレンチの「ロオジェ」が
デリバリーしているようなものです。
鰻だけは特別で、うな重、蒲焼は
時間が経ちすぎて必要以上に蒸れても冷めても、
店の名を落とすほど味の劣化が少ないということなのでしょうか。
鰻はそんな鈍感な食べ物なのでしょうか。
「野田岩」は天然物に拘り
(本店でも実は出くわした経験がない)、
冬季でもアイルランド産の天然物を入手していると
聞いたことがありますが、
造り終えた後の時間経過に伴う味の劣化には、
きわめて寛容な営業方針に感じます。
デリバリーを頼む客は、
そんな細かいところまで気にしていないと思っているのか、
単に売上げ増を狙っただけでしたら、
それはそれで経営者側の考えとして問題だと思います。
東京で一二を争う名店と評価されていますが、
矛盾を感じるのは私だけではないはずです。