第198回 料理人の勘違い その2緊張感は誰に必要か

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  • 2004年1月29日(木)
店に入って凛とした印象を受けるのと、
「次郎」へ入って緊張感を与えられるのはその意味が違います。
「楽亭」の凛とした雰囲気と雑然とした「近藤」。
どちらが客へ食中の味わいのバックアップを与えてくれるかは
歴然としています。
しかし、客をにらみ付ける、値踏みする、叱咤することによって
緊張感を産み出す手法をとっている店が
鮨屋を主体にまだあるのが実情です。

料理人だけではありません。
彼らにすりよる料理評論家や
フード・レストランジャーナリストたちも、
さかんに「緊張感があって良い店」といった
表現を使っております。
なぜに、支払いをする客側が
緊張感を与えられてまで食事をしなければならないのか。
私は疑問で一杯です。
客を萎縮させて食べさせても良いと思っているのでしょうか。
いわゆる常連という人種も、
この緊張感を一見客に与えることに
手助けをしている場合もあります。
代は替わりましたが、
山本益博氏以外取り上げていないと記憶している
上野のとんかつ屋「平兵衛」。
白いだけで時間のかかるぬるい「とんかつ」でしたが、
あの常連と主人の造りだすプレッシャーは、
肝心のとんかつがたいしたことがないだけに異常に思えました。

私は何度でも言いたい。
緊張感を持たなければいけないのは、店側、料理人側だと。

客を客とも思わない態度、慢心、儲けに走りすぎて食材を落とす、
厨房に詰めないで人脈つくりや派手な交遊、
講演にうつつをぬかす、
これらは客にとって一つも良いことではありませんが、
既存の料理評論家やフード・レストランジャーナリストは
見てみぬ振りをしがちです。
我々一般客がしっかりチェックしている、
問題提起するぞといったプレッシャーを与えることにより、
料理人に常日頃緊張感がでてくれば、
長い目で見て店、客の双方にとってプラスになると考えます。