第183回 店構えの割にCP悪過ぎ「ピアット スズキ」

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  • 2004年1月14日(水)
熟年の一人客も見かける大人の社交場と
「東京最高のレストラン」が高評価をつけた
麻布十番のイタリアン。
近所の「ヴィーノ ヒラタ」を
独立したシェフの店との触れ込みです。

入り口付近にはバーカウンターを兼ねたようなセラーがあり、
奥に厨房とカウンター、それにテーブル席で
20名くらいのキャパでしょうか。
狭いフロアに無理に詰め込んだからか、
テーブル間の距離はあまりに接近しています。
同じテーブルの同伴者と、
隣のテーブルの客との距離が変わらないという笑える配置。
誰とでも親密感を築けるように狙ったのでしょうか。

驚いたのは客層です。
本にあるような、
お金に余裕のありそうな熟年層はどこにも見当たりません。
我々も含めて。
取材時から一気に客層に変化が出たのでしょうか。

料理はアラカルトだけで「高過ぎる」の一言。
前菜が2~2400円、パスタも2千円以上、
そしてメインはカツレツ、オーソブッコが3200円、
Tボーン4800円以上、鴨にいたっては5400円と
出身の「ヴィーノ」でなく「クチーナ ヒラタ」に匹敵する
強気の値付けで、何処にでもある料理、選択肢も少ないのです。
一皿のポーションが大きければ許せますが、これがまた小さい。
Tボーンもこの値段なら「アロマクラシコ」と変わらず、
量・質・焼き方とすべてに劣っておりました。

大谷浩巳氏はメニュー外の物を頼める柔軟性を評価していました。
試しに、フレッシュポリチーニのタリアテッレを
4人分頼みましたが、一人当たり3850円。高過ぎです。
これだけ請求できるなら、
誰でも柔軟性をだして特注を受けますよ。

我々が前菜、プリモ、セコンドと3皿を食べ終わるときには
周りの客は既に2回転以上していました。
つまりこの店は、前菜とパスタに適当なグラスワインを飲んで
そそくさと帰るような店のようです。

お勧めの前菜、カジキもあまりの量の少なさに驚いただけの
味はいたって凡庸。
この普通のレベルの前菜、パスタ、メインと
3皿頼むだけで1万円。
ワインを飲まなくてもドルチェやエスプレッソだけで
〆て1万5千円近くになりますから恐ろしいものです。

ワインも高い。
なぜかノンヴィンのシャンパーニュ、
ロデレールが1万円を超える価格にただ驚くばかり。
イタリアの有名な白ワイン、ガヤ&レイが2万5千円と
最近のイタリアンの店の値付けからみて2割高く、
ロッシバスのグラスが2200円もやり過ぎです。
3杯売れば仕入れ値を回収出来てしまいます。
ワインリストも見るべきものがありません。
たいしたワインを飲まなくても、
一人2万円をかるく超えてしまうのが恐い。

大谷氏が言うように、
高くてもそれに、見合う雰囲気、客層、料理なら
文句はでないでしょうが、
料理とワインの価格は「リストランテ」以上で、
「ヴィーノ」(ワインバー)の雰囲気と味。
量も少なく、私は何故にこの店が流行っているのか、
まったく理解できません。
マスコミのバックアップが効きすぎているようですが、
高い店で食後の満足感はまったくありません。