第179回 最終的には安くはならない、「あら輝」

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  • 2003年12月28日(日)
「次郎」や「小笹寿し」といった熟練した職人の店とは別に、
「さわ田」や「しみづ」、「海味」のような
30過ぎの若い職人の店が今流行っています。
これらの店は、長年の修行で培われる技術云々よりも、
仕入れ先に拘ったネタや価格設定で勝負してきています。
この立地の悪い「あら輝」も
若い主人の比較的新しい人気店であります。

最寄りの用賀駅からタクシーを使わなくてはならないでしょう。
地味な街並みにある、この人気店「あら輝」の入り口は、
店内から明々と照明が漏れてこないので目立ちません。
流行っているのでしょう、
「本日は予約で満席」といった張り紙がでていました。

カウンターのみ12席の明るい店内。
テーブルも置けるのではないかと思えるほど余裕のスペースで、
カウンターも奥行きがあり整然としていて清潔感もあります。
色々な評価本で絶賛されていて有名のはずですが、
スーツ姿の男性は我々だけ。地元の常連が主体のようです。
主人はこれまた流行のスキンヘッドに近い髪型。
2番手もつけ場に立っていますが同じ髪型です。

原則は「お任せ」のみ。
客には部位はともかく同じものを出すと主人は言っていましたが、
隣の常連には我々に出なかった
鯛のアラ煮のようなものが出ていました。
ダブルスタンダードでしょう。
これなら同じと言わない方が潔い。
アラ煮12名分の鯛を仕入れられる訳がないのですから。

ツマミも握りもネタの原産地には拘っているようです。
「江戸前の鯛」は厚めに包丁を入れたもので、
鳴門産が唯一のウリである「小山」よりは劣るものの
なかなか良く、東京湾物を見直しました。
その他、鮑も「さわ田」には劣るもののまずまず、
しかしその肝は薄くスライスしすぎて
トリュフかと見間違え物足りなかった。
アナゴの肝など数点続いてから、
赤酢のシャリと小ぶりの握りが始まります。
〆ものはやや軽め、鮪は赤身、中トロ、大トロ、ヅケとフル出場。

山本益博氏が指導したと自慢していた
「玉子焼き」は3時間かかるということで
残念ながら日曜しかないとのこと。
それなら偉そうに度々雑誌などで宣伝するなと
私は山本氏に言いたい。
前もって3時間特別に焼かせているのか、
日曜にしか行かないのか、
そこに「特別待遇」の匂いを感じました。

ネタの種類はそう多くないものの、
なかなかのレベルのツマミと握りで、
かなりのお酒を頼んで一人1万3千円前後。
近所にあれば何度もリピートしたい店ですが、
タクシーを含めた足代で、
最終的な総出費は
都心の高額店とそう変わらなくなるのが残念です。