第166回 北京、上海、何でもござれ、「富麗華」

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  • 2003年12月15日(月)
「中国飯店」の系列である東麻布の中華料理店。
六本木ヒルズや麻布十番街とは反対側で人の通りは少なく、
立地は良くありません。
数年前、他の系列店とは違うコンセプト、
豪華な内装で店を出してきました。

開店早々、
小泉首相が利用したということも追い風になったのでしょう、
悪い評判を聞きません。
しかし、同じく首相が利用した
南麻布のイタリアン「イ ピゼッリ」は客が入らず
この4月で閉店となりました。
他にも、「アクアパッツァ」や「赤坂 砂場」なども
選んでいるようですが、
「通好み」とは言えない店が多いのが気になります。
この「富麗華」は北京、上海などジャンルに拘らないというか、
担当料理人を揃えて、色々な地方中華を用意しています。

1階はホール、2階、3階は個室として利用でき、
重厚感のある落ちついた内装であります。
料理は、春巻きやシュウマイなど
手頃なランチにも使えるものから、
北京ダックを主体にしたコース料理まで、選択肢は多い。
そして、コースの種類も多く、
1万円から3万5千円くらいまで6種ほど、
秋口からはこれに上海蟹をメインにしたコースが
同じく5種ほど出てきます。
でも、上海蟹は、今では生産地の問題は別にして、
街場の中華でも出すアイテムになっていますから、
それだけでは珍しさに欠けます。

「富麗華」の特徴は、
上海蟹のコースでも北京ダックを1品入れていることでしょう。
誰が言い出したか、「富麗華」のダックはおいしいと評判です。
プレゼンテーションでは、
半羽か1羽のダックを目の前に持ってくるのですが、
実際にだされるのは一人に1ロールのみ。
一口で終わってしまう量で、欲求不満が溜まります。
それに、この料理にそんなにうまい、
まずいがあるとは思えません。
あっという間に食べ終わるこの料理が、
何故評判になるのか、私には不思議です。

食指を伸ばしたくなる目玉料理を微妙に各コースに振り分けて、
高めのコースへ連れ込む戦略を感じるメニュー。
しかし、一番高いコースではなく
2番目のコースに高額料理である「佛跳嗇」を入れており、
微妙に高級食材を配分して、
原価率を調整しているのは見事としか言いようがありません。

かくして、北京ダックに限らず、
可もなく不可もない料理が続くのですが、
個室の場合は中国楽器の演奏サービスも後押しするのか、
巷の噂は過大評価となって集客は順調となる次第です。
結論は、幅のある色々な地方中華を、
値付けの高い普通の宴会料理として供する店となるのです。