第160回 ほとんどの客が天然を食べていない、「野田岩」

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  • 2003年12月9日(火)
山本益博氏をはじめ、幾多の著名人が絶賛している
東麻布の「野田岩」。
天然鰻に拘った店との評判ですが、
入店しているほとんどの客は、
知ってか知らずか、養殖鰻を食べているはずです。

天然鰻の時期は初夏から11月くらいまででしょうか。
この旬をはずした時季に養殖というのならわかりますが、
旬でもメニューにある蒲焼、うな重などは皆養殖物のはずです。
店の女性に確認すると、「白焼き」だけは天然物とのこと。
後はメニュー外の「筏」、「中串」と特注しなければなりません。
勿論、高島屋などの分店では
天然物に出会う機会は皆無に近いのではないでしょうか。

料理評論家やガイド本では、
「天然鰻」の代名詞みたいになっているこの店ですが、
実は店に出ている鰻のほとんどがそうではないという矛盾、
しかもその問題に敢えて目を瞑って
開店時から行列に並んでいる客が多いのが私には不思議です。

今回初めて「野田岩」で
白焼き以外の天然物を食する機会がありました。
あらかじめ電話で問い合わせしたのですが、
事前予約は受けないとのこと。
17時半に駆けつけたら本店は既に満席でしたが、
新しく出来た別館へ案内されました。
ここで、各種を比較するために、
「白焼き」、「中串」(以上は天然)、
「うな丼」(養殖)をオーダー。
本館では着席して15分ほどで出てくるのですが、
この別館では40分は待たされました。
私が以前指摘したので、
システムを変更してゆっくり出すようになったのか、
別館だけのことなのかはわかりません。
でも、注文後捌いて蒸して焼く手間をかけていると想像し、
期待は膨らみました。

「白焼き」は相変わらずフニャフニャで、
箸では崩れそうになります。
蒸しすぎなのか、天然物の香りも何も感じません。
食感というものを感じないのはいかがなものか。

期待した「中串」ですが、やはり柔らかすぎです。
養殖物と同じような蒸し加減でふにゃふにゃ。
天然と養殖の食感が同じで良いのでしょうか。
ただ、魚の香りと言うのでしょうか、
やや臭みと言ったら問題になるかもしれませんが
ある種の風味を感じるのは事実です。
明らかに養殖物とは違っていましたが、それは香りだけ。
旨みも感じず食感も良くない。
養殖と同じように蒸しすぎで脂が落ちすぎなのではと思います。

同じ蒸しすぎならば、養殖の「うな丼」に私は軍配を上げます。
有名店ではありますが、
価格は「うな丼」も「うな重」も他店と変わらぬ、
もしくは安めの設定です。
柔らかい「蒲蒸し」いや、「蒲焼」に抵抗がないならば、
敢えて天然物を追求する必要はないと私は考えます。