第825回 J.C.オカザワ氏の新書を他山の石として 5基準がはっきりしないぜ

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  • 2005年11月24日(木)
前々回のコラムで、
オカザワ氏はマスヒロさんに遠慮しているのではないかとの
指摘をさせていただきました。
色々読み込んでいるうちに、
より疑問というか首をひねる事に気がつきましたので、
取り上げてみたいと思います。

どうも基準がはっきりしていないのではないか。
私も偉そうな事はいえないのですが、
店選びなどの基準がどうも理解できません。
このようなスタイル、つまり超辛口で評する本の場合は、
対象となる「料理店」の選定が非常に大事であると考えます。
誰も知らない店、誰もおいしいと思っていない店、
規模の小さすぎる店などを指摘しても、
読者はピンと来ず、また溜飲を下げることもないのではないか。
そういった点で、この本はもう旬を過ぎた店、
あまり流行っていない店、
ホテルにある店などを叩いているのですが、
まったく意外性もなく、面白くもなんともないと考えます。

私の勉強不足であるかもしれませんが、
「有名店」とカテゴライズされている店でも聞いたことのある店、
行ったことのある店が半分もありません。
規模や客単価の低い店もかなりあり、
場所も文京区や台東区など極端に偏っている傾向があり、
かなりローカル色がでています。
また、帝国ホテルのイタリアン?
「チェチェローネ」を取り上げる必要があるのかどうか。
昔から帝国のご贔屓であるご老人などを除いて、
あのような店を最初から期待している客がいるとは思えません。
誰もおいしい店と思っていない、
マスコミも料理評論家もフードジャーナリストも取り上げていない
ホテルの店を叩いてどうしたいのか。誰も溜飲を下げないでしょう。
オカザワ氏は日本、
東京の一般客の水準を低く見誤っていると考えます。

ガイド本や評価本は、取り上げる店、コメントする姿勢が
すべてであると思います。
辛口、べた褒めは各著者のポリシーですので、
色々在っていいのでしょうが、
そのスタイルがぶれるということと、
取り上げる店がピンボケだということは、
この手の本では致命傷になると私は考えます。

拙著も売れなかった要因の一つに、
店の偏り、地域の偏り、客単価の偏りがあると言われました。
万人受けする本にするには、マスヒロさんや犬養さんのように、
自分の得手不得手に関係なく、
あらゆるジャンルの店を「べた褒め」するしかないのでしょうが、
売れ行きを限定して読者の層を絞るにしても、
辛口対象の店選びにはある程度のビッグネーム、注目店が必要です。

マスヒロさん系統の店には遠慮し、
発売後のクレームを避けるため、
敢えてビッグネームや煩い処の店をはずして、
反発してこないであろう
規模の小さい客単価の低い店に絞ったのではないかと
私は推測してしまうのです。

せっかくドクロマークまで表紙に書いて、
オヤジギャグからインパクトあるスタンスに切り替えたのに、
肝心の店選びを無難にしてしまった事が、
販売の伸びに繋がらない理由であると考えます。
楯突く相手は、小物より大物の方が、
観客は面白く眺めるものだと思いますよ、オカザワさん。