第808回 取材拒否の店とそれを雑誌に取り上げる人の問題点

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  • 2005年11月7日(月)
雑誌での料理や内装の写真掲載を了解しておきながら、
連絡先や住所などのデータを掲載させない店は
一体何を考えているのでしょうか。
またそのような店を雑誌で紹介する
フード・レストランジャーナリスト、料理評論家たちの思考は
どうなのでしょうか。

店側の主張はだいたい次のようなものであります。
雑誌に紹介されると、一見客などが殺到してしまい
店の雰囲気が激変してしまう。
常連客に迷惑がかかるので、それを避けたい。
また、雑誌を見てくる客は常連にならずすぐ去ってしまう。

しかし、本当に常連客を考え、
今までの雰囲気を壊したくないならば、
最初からきっぱりと取材を断るのが筋ではないでしょうか。
出版社は無断で店内や料理の写真を掲載するはずがありません。
かならず店側の了解を取り付けています。
そこが、店に遠慮なく了解を取り付けず批評する友里と、
読者ではなく店側に配慮して宣伝するこの手の料理店紹介雑誌の
大きな違いであります。

このまま常連客やその口コミで
静かに営業したいと考えているならば、
取材依頼を断ればいいだけです。
断らないのは経営者の自己顕示欲もあるでしょうが、
やはりその裏には集客を狙っている思惑があると考えます。
人は駄目だ、教えないと言われるとますます知りたくなるもの。
そんな常連だけの取材拒否の店ならば、
おいしいに違いないと読者に錯覚させる戦略です。
私の経験から、このような店データだけ掲載拒否といった店に
よいところはありません。
最近では、浅妻千映子さんが東京情緒食堂で勧めていた
「鮨 とよなが」。
中身は街場に近い寿司屋、主人や2番手がやっているところを見て
笑ってしまう寿司屋なのですが、
詳細は後のコラムにゆずりますが、
ご興味のある方は
今週木曜日の日刊ゲンダイに掲載する予定でありますので、
立ち読み、廻し読みでもしてください。

なぜフード・レストランジャーナリスト、料理評論家たちは、
データを出したがらない店を雑誌に紹介するのか。
「データ掲載拒否は、集客の一環としての戦術なので、
実は掲載してほしい」
という店側の願いを慮っての結果でしょうか。
荒木氏、原田氏、辻口氏など料理人に接近してネタをとり、
本を出している浅妻さんの処世術から想像できます。
店側が本気で掲載を嫌がっているのに
強行するライターがいるでしょうか。
店との良好な関係を何より重んじる方たちですから、
ちょっと考えられません。
また、それらの店を掲載しようとするライターは、
おそらく次に挙げる2点が本音でしょうか。

1.とにかくネタとして使って原稿スペースを埋めたい。
  いわゆる原稿料稼ぎ
2.私は読者が知らない、こんな店を沢山知っているんだ、
  という自己顕示欲というか、自慢したがり。
  出版社や編集者へもいい顔がしたい。

要は、店側とライター側の思惑が一致しての、
データ掲載拒否店の雑誌登場なのです。