第745回 やっぱり違うぞ、お決まりと真髄

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  • 2005年9月5日(月)
第678回のコラムで、
鮨屋の昼の「お決まり」を食べて判断すれば、
その鮨屋の真髄に触れられるといった無責任な発言をした
マッキー牧本さんを取り上げました。
「お決まり」と
真髄である「お任せ」や「お好み」は
高級店になるほど乖離しているはずだから、
テキトーなことを書くのは純粋な読者を混乱させるだけだと。
違うのは違うとはっきり伝える、
またなぜ違いが出てしまうかの理屈を説明するのが、
「レコード会社宣伝部長」
といかにも一般客側の代表のように振舞っている
書き手の義務ではないか、と。

私は街場の寿司屋、回転寿司などを除いて
「お決まり」というものを頼むことはしません。
(逆に回転寿司や美登利寿司に「お任せ」はないでしょうけど)
まったく別物な場合が多く、
有名店でも「お決まり」なら
他の街場との違いが出ていない場合があり、
わざわざ有名店へ行く理由がないと考えるからです。
しかしその後このコラムを書いた責任上、
何回か「お決まり」を
有名店(マッキーさんが挙げた店でも)で食べて確認、
もしくは他の客が食べている「お決まり」を注意深く観察して、
やっぱり違うではないかとの結論に至りました。

銀座「青木」。
お決まりを今まで食べた記憶がなかったのですが、
二番手が握ろうが主人が握ろうがやはり別物。
タネの種類も違うので単純に比較できませんが、
私は酢飯が別かと思ったほど食後感は異なりました。

築地「鮨つかさ」。
「お決まり」客の握りは山葵がまったく別物でした。
中型の器に大量にストックした山葵
(食べてないのでどのようなレベルの山葵がわかりませんが)を
「お決まり」や「ちらし」客に使用しています。
勿論「お好み」や「お任せ」客には都度山葵をすっていました。
ここからして、二つはまったく別物であることがわかると思います。

奥沢の「入船」。
私は「お決まり」は食べたことがないのですが、
経験者の話では、二番手が握るその「お決まり」の握りは硬く、
それはもう主人が握るものとは別物だとのこと。

「しみづ」、「かねさか」など
量や種類の違いだけで
タネ質などの違いがないという店もあるようですが、
ほとんどの高級店でも
「お決まり」は「お任せ」の半額以下の価格設定ですから
同じレベルの握りを出せるはずがないと考えます。
鮨屋のレベルを比較するため、
同じ条件として3~5千円の「お決まり」で比較して
店の良し悪しを判断しようというならばまだわかりますが、
「お決まり」だけで
店の表看板の握りが想像できるとは私は思えません。
しかも厳密には、「お決まり」の食べ比べ評価順位が
そのままその店の真髄である「お任せ」の優劣と
リンクしているとは限りません。
「お任せ」に比べて「お決まり」に
CPのよいタネを使っている良心的な店もあるでしょうが、
逆に、「お任せ」は高くて素晴らしい鮨でも、
「お決まり」客を重要視せず
CPの質を落としたタネを出している鮨屋もかならずあるからです。
ここにも主人の「性格」が反映されてくると思います。

最近は昼営業しないで夜だけ、
しかも「お任せ」、「お好み」だけの
高額店、高級店も増えてきました。
「お決まり」で店の真髄を・・・なんて、
マッキーさんはかなり古い考え、
データしか持っていないのではないかと考えます。