第678回 高額鮨屋の実態を誤って伝えるな、マッキーさん
- Tweet
- 2005年6月18日(土)
タベアルキストという面白い肩書きを考えたマッキー牧本さん。
レコード会社宣伝部長という本業があるらしいですが、
「さとなお」さんとは違って覆面性を出さず、
マスヒロさんと共著の無理ネタ発掘ヨイショ本を出すわ、
「大人の週末」などに連載するわと、
親分と似たスタイルで大活躍中であります。
彼は「純粋な読者」ではなく、
最初はその肩書きどおり外食が好きな食通の、
本業をもつ一般人だったと思うのですが、
そんな食通の方にしては珍しい「マスヒロさん信奉者」。
前にも述べましたが、経験豊かで料理や店に一家言ある人は、
マスヒロさんの実態を知る事になり、
信奉する人がほとんど居ないというのが定説のはず。
普通、食通仲間の間では、
「マスヒロさんを信用している」
なんて恥ずかしくて言えない雰囲気のはずですが、
マッキーさんは違ったようです。
確かに迎合して、お慕い申すことで
コラム記事掲載依頼など恩恵にあずかれるわけですから、
その魅力は捨てがたいのかもしれません。
しかし、「大人の週末」6月号での「鮨」についてのコラムでは、
純粋な読者に勘違いさせる記述が特に目に付きました。
鮨屋は一軒に絞り通いつめた方がいいという考えは、
人それぞれですからどうでもいいでしょう。
しかし、その一軒を探すとき、常連などから紹介がない場合は、
各店の真髄を
昼の安い「お決まり」を食べて判断しようと提唱しています。
具体的には、青木、ほかけ、新橋鶴八などの店名を挙げていますが、
「お決まり」と旬のお勧めを1貫食べれば
店の真髄が味わえるというのです。
彼は昼間に「ほかけ」へ行った事があるのでしょうか。
それとも「お決まり」という言葉の意味を知らないのでしょうか。
扉を開けると、まず主人から、テーブルに座れと言われます。
常連や事情を知っている人なら、
「今日はお任せ、もしくはお好みで」ということにより、
初めてカウンターに座る事が許されるのです。
「お決まり」はテーブル席でしか食べられないものでして、
テーブルとカウンターの間には越えられない深い溝があるのです。
要は、「お決まり」と「お任せ・お好み」のタネ質、
そして握りはまったく別物ということです。
カウンターに座りますと、
簡単に昼でも銀座の高額鮨屋価格(1万5千円以上)に到達します。
つまり、この店の真髄を味わうには安い「お決まり」では無理で、
高い「お任せ、お好み」を頼むしかないのです。
また、青木も「お決まり」では2番手の握りになる可能性が高い。
昼でも「お任せ」、「お好み」は存在しているのです。
最近2番手が独立しましたから、
新しい2番手はまだ頼りないかもしれません。
そして、タネ自体も果たして
昼の「お決まり」と夜の真髄が同じなのかどうか。
私は新橋鶴八の昼を食べた事がありません。
一度昼に扉を開けたら、
主人が寝転んで新聞を読んでいるところを見、直ぐに店をでました。
その日だけだったかもしれませんが、
昼に緊張感がないのは間違いありません。
そんな店の昼に行って夜の真髄が味わえるというのか。
しみづ、かねさかなどは
昼夜のタネ質の違いはないと言っているようですが、
営業的には難しいはずです。
夜が1万円を軽く超える握りを、
どうして昼に同じ質で、3~5千円でだせるというのか。
昼、夜の価格が3倍以上の差が開くのは理論的に考えられません。
本当なら、どちらかの値付けがでたらめという事になります。
実際、「小笹寿し」は昼夜同じ価格と明言、
「次郎」では六本店は若干値差をつけているようですが、
本店は昼夜変わらない価格でしょう。
私は昼夜タネ質が変わらないという店で、
価格が何倍も違う店は胡散臭いと考えています。
本来、本業を持っているマッキーさんなどは、
マスヒロさんに尻尾を振るのではなく、
読者の立場に立つべきものと考えます。
矜持をもってもらいたい。
退職後の生活を考えて今のスタイル、
つまりマスヒロさんに媚売り、
店迎合の立場をとっているのかもしれませんが、
本来ならば、「ほかけ」のような客を差別する営業方針や、
「お決まり」と「お好み」のタネが本当に違うのか同じなのか、
といった
読者の為になる知識やこの業界の習慣を伝えるべきだと思います。
読者、一般客の立場ではなく、
職業料理評論家、
職業フード・レストランジャーナリストと同じ立場であるならば、
経歴にいちいち
「レコード会社宣伝部長」と書くなと私は言いたい。
ただの、そこらの店煽りライターと同じにしか見えないんですから。