第560回 ワインの諸々 その49資格がなんぼのものなのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2005年2月20日(日)
拙著を出版する時、著者紹介のところで
ソムリエ資格を持っていることを公表するか迷いました。
友里自身が、ソムリエなどたいした事はない、
本当のブラインドでは誰も当てられない、
キャビンアテンダントに資格を与えすぎ、
と言っているくらいですから、
真の権威というものがないのはわかっています。
知識ではソムリエより詳しいワインオタクは沢山いますし、
レアワインや古酒など
現役ソムリエよりはるかに経験のあるワイン好きも沢山います。
古酒の抜栓技術でも同じ事が言えるでしょう。
では、たいして自慢にならないものをなぜ名乗ったか。
日本はこの肩書き、資格といった似非権威付けに弱いものなのです。
名乗らずに私がワインの値付けや薀蓄を語ったら、
それこそ検証や具体的指摘なしに
「ワインもでたらめを書いている」と批判されていたでしょう。
ソムリエの実態、業界の裏をいくらか知っているという
バックボーンを示す事で友里の防御になっていると思いますし、
資格保持者の本人が「ソムリエなんてたいしたものではない」、
と言うわけですから説得力はあるのではと思います。

しかし、今の日本でこの「資格」や「肩書き」は
単なる権威付けであるのは周知の事実でありまして、
今更世界へ通用するしない云々をいう事自体が
ナンセンスと思います。
利き酒師しかり、ビールテイスターとか、
最近は野菜ソムリエなるものもでてきました。
私の本業ですが、「社長」。
これも通用しません。
商法上の登記では、取締役と代表取締役しかないわけで、
会長や社長、専務、
最近の流行ではCEOやCOOも内輪の呼び合いです。
社内規定で決めているだけでして、
子供たちの「ごっこ遊び」での役割分担と同じようなものでしょう。

医師免許や弁護士資格といった今の日本では難関の資格も、
日本以外では通用しません。
外国では診療行為や弁護士としての活動ができないのは
良く知られています。
恐らく不動産鑑定士もそうでしょう。
勿論、大学の教授とか博士号もしかり。
世界では「プロフェッサー」と呼び合うくらいですから、
権威付けを好むのは日本だけではないでしょうが、
社長と同じく、大学もレベル差があるわけです。
大会社の社長と零細の社長を比較する無意味と同じ事が
ここでも言えるのです。
こんなことを書くとまた怒られそうですが、
大半の大企業の社長でさえ、
イエスマンとして前社長に仕えて
禅譲されるパターンがほとんどですから
その資質は知れているといえます。
その禅譲システムの弊害からか、
建て直しに外人を招聘せざるを得なかった
大会社の日産がよい例でしょう。
よく誤解されていますが、
博士号もそれぞれの大学が与える資格ですから、
大学によって難易度が違い、有り難味は違うということです。
はっきり言えば、すべて内輪同士での呼び合いです。

私もそうですが、それでも名刺やプロファイルで、
社長、教授、博士号といった
世界基準でない称号をつけたがるのは仕方がないこと。
世界に通用しないこれらの肩書きを
すべてはずす勇気のある人がいるでしょうか。
ソムリエという職業に限らず、
ライターなどにも与えるマスターオブワインも
門戸を狭めて希少性を出していますが、
だからって何ぼのものなのか、
記事や本を書く上での権威付けにしかならないのです。
何億、何十億といるイスラムの世界で通用するはずもなく、
アジアでも通用しないでしょう。
日本でも知っている人がほとんどいません。
実際、抜栓など実技がうまくないMWもいますし。
こう言ってしまってはなんですが、
資格とか肩書きというのはそんなもので、
目くじらたてるものではないということです。