第515回 あの店は今・・・ レトワール

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  • 2004年12月24日(金)
昨年とはかなり様変わりしてしまったと噂に聞きました。
愛想の悪かったオーナーシェフの三鴨氏が
なんとホールで笑顔を振りまいて接客。
ホールスタッフを減らし続け、
マダム一人の接客だったはずですが、どうなってしまったのか。
厨房をスーだけに任せて大丈夫なのでしょうか。
昼はパスタランチを1200円で、
夜も3800円ディナーコースを看板に掲げるなど安値攻勢、
客の不入りに形振り構わぬ対策を打ち出してきました。

三鴨氏の料理の腕は前々から友里も認めております。
マニアックではありますが、
特にジビエなどクラシックで重厚な味付けは特筆すべきもの。
店構えやワイン、サービス面など
コンセプトがバラバラで集客に苦労していたはずですが、
かなり思い切った改革?をしてきたとのことで、
あの「野兎のロワイヤル」を目的に再び友里は突入しました。

これほど軽い感じだったのでしょうか。
物の怪が落ちたかのように、髪を茶に染めた三鴨氏は、
笑顔で接客しています。しかもよく喋る。
パスタが出る3800円のコースはメニューには載せておらず、
8千円のコースではジビエは出ない。
ギイ サヴォアが造っていないパスタなんて食べたくないので、
我々はジビエのアラカルトをあらかじめ予約しておきました。

相変わらず客はほとんど入っていませんでしたが、
三鴨氏は強気の発言を連発します。
我々が訪問した日以外はかなり混んでいるというのですが、
恵比寿に来た際よく前を通りますが、
そんな場面に遭遇した事がありません。
単品料理は安くなっているようです。
前菜は1600円から2300円の範囲。
スペシャリテの赤座海老のスープもこの範囲内でしたから
値下げしたようです。
ジビエもロワイヤルが7500円ですが他は5千円。
かなり頑張っています。

レストラン キノシタの木下氏が通い詰めて真似したと
三鴨氏が訴えていた牡蠣(クリームとジュレ入り)は、
相変わらずおいしい。
モザイク風のテリーヌ、ヒコイワシの前菜も出色です。
シーズン(2ヶ月)で2百食造るといっていたロワイヤルは、
以前よりツメが甘くなっているように感じましたが、
それでもレベルはかなり高い。東京でも傑出しているでしょう。
しかし、この集客状況では、
一日3羽も4羽も野兎のロワイヤルが出るとは思えません。
三鴨氏の話は話半分に聞くのが良いでしょう。

他のジビエも満足して、料理の高レベルを確認したのですが、
この店はもっと凄い変身を遂げていました。
以前は何の変哲もないワインを
かなり高い値付けで出していたので、
ワイン好きを対象に考え直したら良い、と拙著で書いたのですが、
ワインリストをみてびっくり。
ブルゴーニュがかなり充実していて、
しかも信じられないほど安い価格で提供しているのです。
有名どころのワインが市場価格と変わらない価格、
もしかしたら安いかもしれません。
専門的になりますが、ロマネ・コンティを造っている
DRC社の高級ワインであるラ・ターシュや
ロマネ・サンヴィヴァン96年が5万円弱、4万円弱であるのです。
サントリーのリリース価格より安いのではないでしょうか。
モンラッシェなども14万円と頼む人が居るかどうかは別にして、
普通の店の半値以下です。
高級ワインばかりではなく、5500円均一のワインリストや
ハーフもかなり用意するなど
ワイン通以外のワイン飲みにも垂涎のリストとなっておりました。
三鴨氏はなんだかんだと友里の悪口を客に言っているようですが、
しっかりアドヴァイスを受け入れているようにも感じ、
私は親しみを覚えてしまいました。

ただし、スタンプカードの発行はいけません。
1回行くごとに判を押してくれるようで、
3回で前菜、5回でプチフール、7回でランチ(2名)、
10回でディナー(2名)がタダになるそうですが、
一応本格フレンチに位置する店です。
ファミレスみたいな形振り構わないサービスを見て、
師匠の3つ星シェフ、
サヴォア氏は泣いているのではないでしょうか。

<結論>
ワイン好きは、リストのワインが飲み干される前に
ぜひ訪問すべきです。
安い値付けなので、絶対額の高いワインを頼んでしまって
支払額は大きくなりますが、
アラカルトの料理を含めて失望はしないでしょう。
スタンプカードは期限がないそうです。一応貰っておきましょう。