第464回 あの行列はどこへいった、六本木ヒルズ

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  • 2004年11月3日(水)
料理店での待ち合わせ時刻に余裕があるとき、
私は付近の再開発ビルへ行って
客の入りを見たくなる習性がついてしまったようです。
再開発ビルに料理店、
特に高額料理店の必要性を感じない友里としては、
その持論の確認がしたいがための習癖なのですが、
オープン直後は別にして、
1年もたてば大抵集客に苦労している事は
今までの経験でわかります。
このコラムをはじめた頃からの持論ですが、
高い家賃や休みの日の少なさから発生する人件費など
固定費の増大が価格を押し上げ、
また、無理に分店をだしてきますから
料理人やサービススタッフなど
店のクオリティが低下し、結果CPがかなり悪くなるからです。

そのなかでも、麻布や青山、特に六本木近辺の店へ行く場合、
私はできる限り六本木ヒルズの店を見てまわるようにしています。
あの長蛇の行列ができていた、
「ラトリエ ロブション」はもうまったく行列はできていません。
というより、かなり空席も目立つようになりました。
比較的安い店が多くて
行列がどの店にも出来ていたウエストウォークの5階も、
いまでは休日のお得なランチで「サルヴァトーレ」に
行列が多少出来ているだけでしょう。
「串の坊」やカレーの「中村屋」まで
オープン当初に行列ができていたのには驚きました。
これに並ぶまでものなく、
空いた他の地の店でいくらでも食べられるからです。
当然、もう行列などできておりません。
虎屋のカフェ、
あの劇的な父息子の再会を読売が紙面で宣伝していた
辻口氏が“働いている”ショコラ店も出来ていません。
他のけやき坂通りの高額店もしかり。

ではあの行列を造っていた人たちは
どこへ行ってしまったのでしょうか。
交詢ビルの閑散さを見ると、
最新の再開発ビルへ流れているようにも思えません。
思うに、まったくの一見客だったのではないかと。
中には私たちのように怖いもの見たさで訪れる
外食好きな方もいらっしゃったでしょうが、
ほとんどが
リピーターとなるような人たちではなかったと推測します。

しかし、再開発ビルは、
そこで働いている人以外に本来は利用目的のないものです。
ディズニーランドのような楽しむものがあるわけではありません。
よって、無理にテイストのあわない
NYのデパートのようなものを入れたりして
目玉にしようとするのでしょうが、それが失敗すると悲惨です。

第462回でも述べましたが、
これから銀座や青山、六本木、東京駅近辺、
日本橋へ出ていきたい、と考えている料理人の方たち、
再開発ビルへの出店は避けた方がいいでしょう。
立地の悪い店がなぜか流行っている時代です。
長い目というか、かなり短い目で見ても、
再開発ビル自体が客を呼んでくれる物ではないというのは、
もう誰でもわかっているのではないでしょうか。