第338回 フードライター特集番組 2おいしい店を探し出すには・・・

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  • 2004年6月17日(木)
料理評論家やレストランジャーナリストは、
「おいしい店」として
新しい料理店を紹介し続けるのが仕事のようです。
一般にいうジャーナリズムとは異なる、
紹介・宣伝業は彼らの仕事の中で、
大きなウエートを占めています。

TVで犬養裕美子氏は、
「安くておいしい店は郊外にある」と言っていました。
腕はあるが若い人は、都心に店を持つのは無理で、
地代の安い住宅街に店を出すからというのが理由です。
また、山本益博氏も、
「一本入った横丁とか地下や2階。
おいしい料理を出すには立地が悪くなければならない」
というようなことを言っていました。
その他、厨房が綺麗なことも条件にありました。

厨房が整頓、綺麗なのが条件ならば、
氏がかなり力を入れて宣伝している
「しみづ」や「みかわ 茅場町店」は
例外中の例外ということでしょうか。

厨房云々は別にして、この立地問題。
私は本末転倒だと考えます。
立地の悪い所の店だけが、
「おいしい」可能性があるというのではない、
まずい店もいくらでもあれば、都心など立地のよいところでも
CPの良い店は出せるはずと考えます。

要は価格と仕入れ食材、手間隙かけのバランスの問題。
必要以上に利益や見栄を重んじる性格の悪い料理人は、
立地が悪くて家賃など固定費がセーヴできる環境でも、
より食材費や手間を省く可能性があります。
都心など立地の良いところでは、
見栄を張って建屋、設備などを必要以上に華美なものにしてしまい、
過大な固定費を価格にそのまま転嫁する、
もしくは食材費を圧迫する、といった暴挙にでてしまえば、
やはりCPの良い店は期待できません。

つまり、料理人(実際は経営者ですが)の性格次第。
スポンサーに頼らないため、
立地の悪いところしか出店できない料理人でも、
性格がよければ、その立地に見合った、
身の丈に合った店構えと売価に充分見合った食材を
手間をかけて提供するはずです。
逆に性格が悪ければ、食材を落とし、手間をかけなくて
CPの悪い料理を出してくるはずです。
無理して都心に出店してやや売価を高く設定しても、
見栄を張らない品のよい店構えで、
同じく売価に見合う食材を使えば
価格に見合ったおいしい料理を提供できるのです。

確かに、一等地へ出店したいがため、
禁断の木の実ではありませんが、
スポンサーなどの力を借りてしまうと自分の意向が反映できず、
CPの悪い料理を
出さなければならない場合があるかもしれません。
しかし、あくまで料理店は経営方針でCPが決まってしまう、
立地の良し悪しは二次的なものだ、と私は考えるのです。

ただ、立地が悪い店は、
その意外性から実際の実力以上に評価されがちです。
こんな所にあるのかといったサプライズ、
わざわざ訪ねていったのでおいしくなくては困る、といった
先入観、願望から判断を誤りがちなのは、
心理学的にも説明できる事象です。

立地の悪い店においしい店が多いのではなく、
「立地の悪い店は、実力以上においしく感じてしまう」
というのが答えと考えます。