第315回 ポンテ ベッキオ その1
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- 2004年5月25日(火)
看板のシェフもかなり名が通っているとか。
ホテルのコンシェルジュは、
「天満橋の『ポンテ ベッキオ』と言えばタクシーはわかります」
と言っていました。
東京で、銀座の「ロオジエ」、広尾の「ヒラマツ」と言って
わかるタクシーがいるかどうかと考えながら
「ポンテ ベッキオ」と伝えたら、その運転手には通じなかった。
ホテル業界が思っているほど
その名はタクシー業界に浸透していないようです。
大阪には価格帯を変えた店がこの本店の他に3店。
ウエディングやバンケットを積極的に受け入れているらしく、
フレンチとイタリアンの違いはありますが、
西の「ヒラマツ グループ」と言えるのではないでしょうか。
思ったほど大きな店ではありません。
外からガラス越しにホールを覗くことができますが、
入り口付近にガラスでセパレートされた個室と、
奥が30名以内のホールとなっています。
座ってさすが大阪、と驚いたのは
このような高名、高額のイタリアンの割に、
卓上には塩、胡椒がセットされています。
オイルも最初から置いてありました。
高級感より個々の客の舌の嗜好を優先しているようです。
平日で雨だったからか、この有名店は満席ではありませんでした。
お任せワインをバンバン飲んでいる中年男性の団体。
シャンパーニュを
ジンジャエールで割って飲んでいる初老の男性の連れは、
簡易なカーディガンをまとったパンツ姿の女性。
二十歳を超えた息子さんをつれた夫婦は、
最後までビールで通していました。
正に都会の有名店の宿命ともいえる「客層はバラバラ」定説は
大阪でも健在です。
大阪は融通が利くと思うのですが、年齢コードは結構厳しく、
小学生には門戸を開いていないとのことでした。
ただしさすが大阪、と感心したサービスがあります。
ワインリストにあるすべてのワインは、
リスト価格の半値の2割アップで
半分だけでもオーダー可だと明記されているのです。
この見栄(店の格)というより実(売り上げ)をとった大胆な試み、
店側、客側の両者に利益をもたらすことでしょう。
1本は飲めないからグラスで我慢する客も、
半分ならばと高級ワインをオーダーする可能性もあります。
何しろ安いワインだけでなく、リストにあるすべて、
フランスのカリスマ造り手から
80年代のサッシカイアまで対象としているのですから驚きです。
想像するに、ワイン通と自称する
芸能人や業界人がこまめに来店するのでしょう。
彼らに残りを払い下げるか、
割高のグラスワインとして提供して事後処置していると考えます。
以前、東京の有名店で、
飲みたかったワインがマグナムしかなく躊躇していたのですが、
ソムリエは「1本分でいいですよ」と
さっさと抜栓してデカンタージュ。
残りは入り口付近に座っていた、
ワイン通と言われている男優グループに
注いでいたのを思い出しました。
彼らは飲みたいワインを選ぶのではなく、
レアなワインを店から勧められるのを好むようです。
勿論ここは西麻布ではありません。
「ダノイ」と違って、
シェアも追加費用なしでオッケーとなっていました。