第12回 ソムリエの実力 その一

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  • 2003年5月30日(金)
世界で一番ソムリエが多いのは
日本だということを知っていますか。
フランスやアメリカではないのです。
日本ソムリエ協会が受験資格を
一時大幅に緩和してしまったので、
実技よりも筆記を得意とする人たちが
大量に受験して認定されてしまっていました。
最近は実務経験の証明を厳しくしているようですけど。

ソムリエなどの認定試験を受けようとすると、
まず受験対策としてワインスクールなどに通うことになります。
既に店でプロとしてでている人でも独学だけでなく
スクールに通っている人は多いでしょう。
その方が筆記試験では情報も入り、有利になります。
一次テストは筆記ですから、
知識の詰め込みに特に力をいれています。

問題はテイスティングです。
スクールではたいてい毎回、
テーマを絞って6種くらいのワインを出して味見をさせます。
スクールも営利を追っていますから、
その味見用のワインはなるべく安く仕入れたいもの。
なるべく特徴を持ちながらも格下のワインを出そうとします。
つまり、輸送や保管にあまりお金をかけないインポーターや
業者からの購入を優先してしまいます。
これらのワインは、保管状態を第一に考えていないので、
中身にちょっと疑問なワインが含まれている可能性が
あるのですが、スクールではいちいち判別せず、
そのまま出してきます。
中には「ブショネ」のワインに当たることもありますが、
軽いものでしたら気にせずテイスティング用に
出されることもあるでしょう。
つまり、スクールで勉強している
ソムリエ受験者は「まともなワイン」も
「まともでないワイン」も、
皆、「まとも」と思わされているのです。
一般の人が通うワイン講座のコースでも同じです。
これは保管が悪かったワインだ、ブショネだ、とは
まず教わりません。皆、おいしい、色は何色だ、
粘着性がある、何と何の香りがする、と教わってくるのです。
認定試験のテイスティングでも、
ブショネや駄目になったワインの判定
というものはありませんから、
これらの判定基準をまったく知らないソムリエが
どんどん誕生してくる可能性があるのです。
お店を任されてからも彼らソムリエは、
ワイン業者やインポーターの試飲会で
若いワインを多種飲むことはできますが、
古めのワインやレアワインといったものは飲んでいません。
つまり、専門職であるソムリエも
あまり本当の意味で経験を積んでいる人は少ないのです。