第10回 鰻屋の松竹梅の法則

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  • 2003年5月28日(水)
鰻屋では鰻重を松竹梅と
3段階の価格で提示しているのを良く見かけますね。
どれが一番売れているかはご存知でしょう。
そうです、下から2番目、つまりここでは竹ですね。
日本人は見栄を張るといいますか、
他人の目、連れ合いの目を気にしますから、
一番安い物は頼みにくいのです。
ですから、下から2番目をつい頼んでしまう。
店側はこの習性を充分理解していますから、
梅は実際に客に頼んでもらおうと期待していません。
竹を売らんがための飾りです。
店の採算を考える際、目標売上げから逆算して
一人当たりの単価を設定します。
店としてその一番売りたい価格帯を竹にして、
梅はやや低めに設定するのです。
ですから、この竹と梅の差なんてほとんどないのが実態でしょう。
見栄を捨てて、2人で行った時食べ比べるのも一興ですね。
実際の鰻重のランクの差は鰻の大きさに関係しています。
でも個体差がありますから、
同じ竹でも差がでてきてしまうものです。
しかも、ある説によれば、
鰻は大鰻より小鰻の方がうまい、というのがあります。
「筏」もそういった意味では小さいですし、
本当の天然ものもあまり大きくありませんよね。
ですから、高い鰻重は量が増えるかもしれませんが、
味が落ちているかもしれないのです。

この日本人の習性を利用して、
松竹梅の法則を他の料理店でも導入してきました。
今和食で主流となっているコースシステム。
小規模なところは1種だけですが、
たいていの店は3コースほど用意しています。
そして、そのコースの違いの説明は極めて曖昧。
最上の松コースは結構中身を開陳しますが、
竹と梅はその日の仕入れによって
食材が替わるので説明できない、というのがお決まりです。
実際はせいぜい、お造りの量や種類が1品増え、
お椀の中身が異なるくらいしか差をつけられないでしょう。
店は梅を頻繁に頼まれると考えていませんし、
梅コースの料理に大きく違いをもたせることは、
かえって手間となり、歩留まりを考えたら避けたいものなのです。

そして、最近はフレンチ、イタリアンの店でも、
この法則にのって価格設定をしてきているのが目に付きます。
そして、鳴り物入りで六本木ヒルズに出店してきた、
中国宮廷家庭料理の(宮廷と家庭は
矛盾しているように思うのですが)「レイカサイ」。
ここも25000、35000、45000円と3コースあるそうで、
店に聞いたらやはり竹に相当する35000円が
オーダーのほとんどを占めているそうです。