古川さんへの反論 修正前
4月7日(金) 第946回
-お待たせしました、古川さん-
このボツ原稿は古川修さんの3月24日付けのコラムに対するお返事として最初に書いた原稿です。
表現がきついとの指摘があり、ややオブラートに包んで修正しましたが、それも結果ボツとなっております。修正前、修正後を読み比べてみてください。
「シェリーのさらなる誤解」の掲載から、はや2週間。こんな駄コラムなんか待っていない、と古川さんにバッサリ斬られてしまうかもしれませんが、相手をやりこめるためにその間に、慌てて本質からはずれた専門知識を調べまくり、その道の専門家に助言を求めていたのではありません。友里は1週間以上前に原稿を仕上げていますので、その順番を崩したくはなかっただけであります。
稚拙な文章だからでしょうか、方向違いと一笑に付されましたが、ワインを真にご理解いただいている方には、どちらが的を射ている論議なのかおわかりのようで、友里コラムの読者の方からはなんのご心配もいただいておりません。
噛み合わない原因として、二人のコラム上の性格や文調の大きな違いが考えられます。古川さんは、かなりの知識と自信をお持ちのようで、それをバックに難しく権威的に語ることを好まれます。読者の方に、上から伝達し信奉させるスタンスです。
友里は、私もそうだが専門家といえどもたいしたことない。実はこんなに簡単なことですよ、と暴露的にそして問題提起的に書くスタイル。簡単にわかりやすく書いているところに、読者のレベルに関係なく、周辺的な専門知識を述べられてしまうので、噛み合うはずがないのです。友里は、自己顕示欲は強いですが、権威的に振舞うのは避けたいと常に思っているのです。
私は、「シェリーは造り手の違いがでていない」言っているのではありません。「シェリーも造り手の違いが出ているでしょうが、それはシェリーに限ったことではないんです」という一言です。
モルトだって無茶苦茶違いがありますよ。古川さんはこの事には触れられていませんけど。実戦経験がないからなのでしょうか。
要は、モルトもスティルもみんなそうだ。だから造り手によって価格の違いもある。シェリーだけ特別扱いしないでくれと言っているだけです。
人には「思い入れ」があります。特に己に自信をもたれている方は、
かなり「思い込み」も強い。でも、己が、己がではなく、他もお認めいただきたいだけなのです。
「シェリーというとドライでティオペペとかいうのくらいで、他はあまり認知されていませんが、ちょっと詳しく掘り下げてしらべたら、このワインも造り手によってかなり違いがでることがわかった。もっと皆さん飲んでみましょう」となるならば、誰も反発はしませんよ。どこで刷り込まれたか知りませんが、シェリーだけが「別格扱い」はおかしいと例を挙げて申し上げているだけです。
そこらの料理人や蕎麦打ちよりうまい料理や蕎麦を造れると豪語する古川さんの自信、わかります。本人の思い込みだけではなく、周りの人も「先生、美味しい」と言われているのでしょう。でも、世には「リップサービス」という言葉もあるのです。食べた場所、その場の雰囲気、人間関係、そして食した人のレベルなどに、料理の評価は影響されるはずです。
また、得意でない部門で、この「思い込み」、「思い入れ」が強すぎて発言すると、空回りしてしまうのではないでしょうか。
私が今回取り上げた理由は、以前からワインに詳しい方たちから、古川さんの記述、特にワインの記述に対してかなり違和感を持つとの度重なるメールをいただいていたからであります。
今回もセザール、トルソなど出回っていない品種をわざわざ書く必要があったのかどうか。読者に混乱を招くだけです。ワイン好きでも経験のあるかたは極めて少ないでしょう。ヴァンムスーだったそうです。
日本で売られているブルゴーニュでは、ガメイはボジョレーで見かけますが、その他のものはほとんどありません。ピノでも、地方ワイン、村名、1級、特級で確かに違いがありますが、造り手の違いより畑の違いの方が大きいとなぜ言い切れるのでしょうか。
それなら同じ食材を使用すれば、料理だって腕の影響があまり出ないものなのか。それとも、スティルワインと違って、料理は例外なのでしょうか。(鮨はタネ質がかなりの部分を占める例外ですね)
少なくとも、いつものあのレベルのワインをわざわざコラムで取り上げて「飲んだ自慢」されている方に言ってほしくはなかった。
普通のワイン好きなら、公開の場のコラムには気恥ずかしくて記述できないラインナップです。
おそらく「机上の情報」だけで、造り手の違いが大きく出るようなレベルの高いワインや特徴が出るヴィンテージのワインを飲んだ「実戦経験」がないからなのだと思います。
ラモネがアリゴテ種を造っていたとは知りませんでしたが、村名や1級、特級畑と一緒にわざわざ飲み比べる意味はないでしょう。品種が違うのですから。
実質単一品種で、色や味わい、タイプがまったく違うワインができるのはなにもシェリーに限りません。
「机上だけで実戦経験のない」友里でも知っている、ワイン好きなら誰でも知っているアルザスやドイツのリースリングなども。
摘む時期、選定方法や醸造方法で色から味わいまでまったく違うものができます。勿論その木の剪定や収穫などの栽培方法でも、造り手の個性はブドウ自体に大きく出ると思います。
もう一つイタリアで例を挙げると、イタリアワイン好きな人なら誰でも知っている、ピコリット。同じ品種でも辛口から超甘口まで、そして造り手の違いでその味わいも価格も大きく異なります。
ここでまた、醸造方法や品種のつまらない専門的な事を調べて反論しないでくださいね。私は知識(専門知識の調査力)の競争をしているのではなく、骨子は唯一つ、思い込みと断定で、シェリーを特別扱いしないでいただきたいと申しているだけです。
わざわざドメーヌシャンパーニュの件でメールをいただいて、私がお返事を出さなかったとのこと。
そうならば誠に申し訳ありません。返事をださなかったとの記憶がなく、ここにあらためてお詫び申し上げます。
色々と読者の方からメールを沢山いただき、すべてお返事を書いているつもりですが、書き落としか読み落としてしまったのかもしれません。今後は気をつけます。
しかし、この経緯をこの件で書く意味があるのかどうか理解できません。今回のこととにはあまり関係ない。友里をへこます手段ならわかりますけど。
以前、イタリアのプロセッコについて、イタリアワイン好きならすぐわかる致命的な思い違いの記述をされていたのをご記憶でしょうか。あまりにひどいので、友里が事務局にお教えしたのですが、事務方は「一読者」からの指摘と古川さんの面子を立てられて伝言されたそうですね。直ちに修正されたのを確認して安心しました。
友里の「ネタ不足」は、あくまで自虐ジョークです。ネタ不足はご心配無用です。
古川さんのように、どこそこのバルバリー鴨、誰かがとった鱸、
あそこの酒造会社の純米酒、といった宣伝にも取れる特定業者の食材を、数限りなく何回も繰り返しコラムで取り上げ、身内との居酒屋での宴会内容を記録的に何日にもわたって延々とつづけ、ワインのコメントも「雑味がない」と通り一遍で面白みのない褒めまりコメントに終始し、読者にさして必要ない専門知識を本から抜粋して列記するなどのコラム数稼ぎをこの友里にも許していただけるなら、私はコラムネタで悩むことはなくなります。日常的な友里の知人たちとの会食、有名人を囲んだ宴会、そして専門書の書き写し、楽なもんです。
まずは、シェリーの専門家、ドメーヌシャンパーニュ関係者など利害がからむ「特定の方」ではなく、ワイン全般に詳しい方、ある程度のレベルのソムリエ、常識あるインポーターにぜひ両コラムを見せてお聞きいただきたいものです。 両コラムを読まれている読者がいらっしゃったとしたら、 「友里氏は、知らない分野については机上の知識、あるいは業界の知り合いから学ぶ知識だけで片付けているようだが、シェリーのバリエーションを実践して飲んでみれば理解できるはずだ。」の 『シェリー』を『ワイン』や『食材』に置き換え、『友里』も『古川氏』に置き換えた方が、はるかにすっきりするとお思いの方もかなりいらっしゃると私は確信しております。
私も理工系出身で先輩や知人からよく言われたことがあります。 「お前は理工系だから、視野が狭い」 古川さん、当たらずしも遠からずではないでしょうか。