鰻
あの店は今・・・ 野田岩
by tomosato on 10月.17, 2009, 鰻
景気の回復が滞っているこの時期にこれほど繁盛しているとは思いませんでした「五代目 野田岩」。丑の日のある7月は、昼は行列、夜は満席で予約が入りません。平賀源内が煽っただけで旬でもない時に食べる必要はないと8月になって昼にフリで飛び込みをはかったところ、簡単に出来ました。暑い中、行列までした「野田岩信者」にはご苦労様と申し上げたい。
デビューして6年、友里はこの「野田岩」に対し一貫して「天然偽装」をやめるべきだと指摘してきました。「吸い物の肝や肝焼きに釣り針が入っていることがある」と箸袋で注意を促し、店主が「天然鰻に拘っていて4月から12月までは天然鰻を、それ以外の時期は養殖鰻を出している」と発言していたら、純粋な客は冬以外の鰻は全部天然だと勘違いするではありませんか。しかし冬だけではなく春、夏、秋も仕入れる鰻の大半は養殖鰻なのです。天然鰻なんて1日に何匹もでません。それは仲居さんに天然鰻を注文したら、都度厨房へ確認しに行くことから誰でもわかることなのです。
さてこの日、メニューを見てビックリ。「白焼き」は今まで100%天然と言っていましたが、不漁の際には養殖を使うとの明記に変更。逆に天然鰻を意味する「中串」や「筏」がメニューから消えています。箸袋の「釣り針記述」は健在でした。
まずは霞ヶ浦の天然鰻という「白焼き」をオーダー。いつもより身が厚かったですが、風味や旨みがまったくない。ただの柔らかい「蒸し魚」であります。続いて違いを確かめるため、養殖と天然の蒲焼きを両方頼みましたが、やはり蒸しすぎで柔らかすぎです。天然鰻は風味(悪い意味での「臭み」)があるが味が薄い。同伴者にも確認させましたが、ブラインドで食べたらこの「野田岩」では、「養殖」の方が脂も乗っており美味しく感じるのです。私は世にはびこる「天然鰻神話」に物申したい。天然なら何でも美味しいというのは嘘。時期、産地(川)、場所(上流か下流か)と行き先(上りか下りか)に加えて、個々の個体差で味はまったく異なると。産卵で海へ帰る前の下り鰻(河口付近で餌を沢山食べた大きなもの)で当たりの鰻を「直焼」で食べたら、「野田岩」が仕入れる小さ目の「蒸しすぎ天然鰻」なんて食べる気がしなくなることを広く知っていただきたいのです。
デカいだけで大味の鰻、神田きくかわ
この本店を入れて都内に3店舗展開するネットで人気の鰻専門店。すべて直営店だと思うのですが、この店は愛知県幡豆郡一色町に直営養魚場があると公開しています。3店舗で養殖場を持って採算がとれるのでしょうか。
神田の昔風の一軒家で雰囲気はでています。1階が禁煙、2階が喫煙可と分煙システムで昼時の店内は満席。ほとんどの人が頼んでいる「うな重」は大きさによって、(イ)、(ロ)、(ハ)と奇妙な名づけで、2620円、3150円、3670円と立地、店構えの割に高い値付けです。「ぐるなび」では、「江戸前のうなぎ料理は時間がかかる。せかされるとはんぱな仕事になるんでね。でもかならずいい仕事するからまかせなよ」と38分かかると書いてあったのですが、真ん中の重は20分かからず出てきました。その重を一目見てびっくり。J.C.オカザワ氏は量が多いと言っていましたが、尻尾が重からかなりはみ出る大鰻が品なく2匹乗っております。見ただけでひいてしまいましたが、目を瞑って口に含むとまず詰めの緩いタレの甘みを感じ、次は脂味だけで、肝心の鰻自身の旨みを感じません。品質が安定した養殖鰻のいいところを感じず、山椒を多めにかけてやっと食べきることができました。おかげで私は今まで過大評価でたいしたことないと言ってきた「野田岩」や「尾花」の鰻を見直したくらいです。
ネットではサービスが悪いとありますが、私に言わせると「鰻」が悪い。どう考えても高額鰻店が扱っている品質の良い「養殖鰻」と異なるもの、質だけの問題ではなく、種類が違うかもしれない
と感じたのです。紹介してくれたJCも、種が違う可能性があると後日言っておりました。その正否は別にして、高額店の仕入れる養殖鰻とは違う質のものを使用しているのは間違いない。自社の養殖場をもつ理由はここにあるのでしょうか。「養殖ハマチ」にも似たくどい脂を感じる食後感の鰻蒲焼。そりゃ量も重要な要素でありますが、大きくて量があれば何でも良いって訳ではありません。行列作って食べに行く客が多いのですが、皆さん、他の高額鰻屋と同じようなレベルの鰻だと思って食べているのでしょうか。価格だけは高額店ですが、過大評価の他店よりも食後感が悪い店。友里がおススメできる鰻屋ではありませんでした。
鰻屋にしては料理が多すぎる、いちのや 西麻布店
by tomosato on 10月.23, 2006, 鰻
流行っていなかった和食屋跡に出来た一軒屋の鰻屋、いちのや。私は「やらせ」のTVを見るまで、この鰻屋の存在をまったく知りませんでした。2年前の年末だったと記憶しております、ホテル西洋銀座で行われた一人100万円のディナー(宿泊費別)の放映。世界的に有名なワイン評論家、ロバート・パーカー氏の出版記念として、彼が選んだ究極のボルドーワイン12本と、有名シェフ、ロブションが食材に糸目をつけず調理する料理が出ると言っても、100万円は余りに高いのではないか。同時期、同価格で恵比寿の「ジョエル・ロブション」でも企画されましたが諸般の事情で中止になったくらいですから、参加者を集めるのは大変だったようです。この「究極の晩餐会」、番組の後半は参加者をレポートするもので、その一人が「いちのや」の若き主人だったと言うわけです。取材に応じる条件だったのか、参加者が集まらず頼み込んだからか、しっかりこの鰻屋を番組で紹介していましたから、仮に主人が100万円払ったとしても充分元が取れたと考えます。
川越や神泉にもあるという「いちのや」、レトロな内装で外観は悪くないのですが、テーブルに常備されている灰皿、席で携帯使い放題の客、と環境は良くありません。鰻重が2800円以上と他の有名処より強気の価格設定で、鰻が入る会席コースが7500円から1万5千円まで用意されているなど、ただの鰻専門店とは違います。しかし、居酒屋メニューのもずくや秋刀魚から、高額和食の鱧、石鯛まで扱う間口の広さに私は疑問であります。和食屋が鰻を出すならともかく、鰻屋が出す高額食材を鰻屋の調理技術で食べて満足できるでしょうか。単品専門店と和食では技術のベースが違うのですから、ここでは鰻だけを味わった方が無難であります。さて肝心の鰻重。オーダーしてから50分近く待たされます。会席コースでも、料理の順番に関係なく鰻が焼けたら直ぐ出すそうですから、マイペースな経営です。待ち時間に食したうざく(900円)、この鰻だけどうして早く焼けるのか疑問でしたが、まったく凡庸。肝焼きも普通レベルで、待ちわびた鰻重は蒸し過ぎなのかただ柔らかく、タレも甘すぎ。秘伝のタレといってもベースは醤油と味醂の調合だけですから、このうたい文句に乗せられてはいけません。野田岩よりも柔らかいかもしれない食感のない蒲焼、もとい、「蒲蒸し」に値付けの高い日本酒と二三のツマミを頼んで軽く5千円突破。高額店の養殖鰻に差があるわけではないだけに、わざわざ行く必用はないと考えます。
注)
掲載後、「いちのや」の主人からクレームがあったそうです。公平を保つため、先方の言い分も載せさせていただきます。
「鰻屋が出す高額食材を鰻屋の調理技術で食べて満足できるでしょうか」に対して、「ウチは4人の和食専門の調理人を雇っている」
また柔らかすぎる鰻重について、「これは当店独特の技術だ」
そして、100万円ディナーTV出演の件では、「あれはテレビ局に頼まれ、引き受けただけ。自分から売り込んだわけではない」
鰻がウリの店で、和食専門の料理人を常時雇っていては、固定費がさぞかしかかることでしょう。CPは当然落下すると誰でも感じてしまいます。
柔らかいのは「蒸し」を強くしただけだと思うのですが、これを独特の技術というのでしょうか。
確かTVでは、100万円ディナーの参加者を、帰り際任意に声をかけて取材すると言うスタイルでした。
自宅拝見の後、本業を聞いて店の紹介をしていましたが、「頼まれて(出演を)引き受けた」となると、あのTV番組は完全な「やらせ」だと認めることになります。TV局としてはこうはっきり宣言されたら困るんではないでしょうか。







