シェフが同じでも場所が変わると食後感が異なった、ル・サンク

最近は出張も含めると年に何度も出かける海外でありますが、最終日の夜は宿泊しているホテルのメインダイニングで食事をすることを友里は心がけております。
その理由は、荷造りや翌日の移動を考えて、なるべく疲労が残らないよう近くで食事を済ませるため。
パリでは定宿(大袈裟)の3つ星メインダイニング「エピキュール」なんですが、今回はちょっと気分転換でホテルを変えた関係でこの「ル・サンク」を訪問したのであります。

宿泊ホテルのメインダイニングですから、朝食でも利用しているので新鮮味はなかったのですが、昼間と違った雰囲気で「エピキュール」より悪くはない。
しかもダイニングだけに限らないのですが、レセプションやコンシェルジュ含めてスタッフのホスピタリティが心地よいんです。初回から名前を覚えてくれるのもブリストルではあり得ないサービス精神。
しかもこのホテル、中国人や日本人の客が少ないんですね。かわりに南部含めたアメリカ人は多かったですけど。

さて話をメインダイニングに戻すことにします。
このレストランを選んだ理由はもう1つありまして、それはシェフが昨年訪問して大満足した3つ星「ルドワイヤン」から流れてきたから。
正確には、商売上手で鼻タカピーのヤニック・アレノが「ムーリス」から「ルドワイヤン」に移籍した事によって押し出されたと言った方が良いかもしれません。
とはいえ、HPのメニューを見る限り「ルドワイヤン」とほとんど変わらない料理だったので大きな期待をもっての訪問でありました。

頼んだ料理はこの時期旬の黒トリュフを使った料理が主体、もちろんアラカルトであります。

まずまずのアミューズの後、前菜は黒トリュフの丸ごとパイ包み。
この時期にフランスに来たことがないのでこの手の丸ごと料理は日本、しかも「セゾン」でしか経験がないのですが、さすが本場というか、フォアグラを利かせていることもあって「セゾン」よりかなり美味しい。塩強めのソースも悪くはなかった。

同行者が頼んだ前菜はオマール。
「ルドワイヤン」のオマールブルーが最高に美味しかったと言うことで再度チャレンジしたようですが、今回はハズレたのか多少がっかりしていたのが残念でありました。

メインは2名からの注文になる鶏1羽料理。もちろん黒トリュフ添えであります。

クラシックな調理ですから予想はしておりましたが、バターやクリームの割に塩が緩いと感じまして、はっきり言って普通味。
これならスペシャリテの「スパゲッティを直方体に固めたものとリードヴォー」にしておけばよかったと後悔したのであります。

分厚いワインリストは確かに種類が豊富でありましたが、ブルゴーニュは造り手が偏り過ぎていてワイン好きには面白くないもの。値付けも安くはなかった。

接待相手には最低限の満足感を与えられたと思いますが、次回はどこに泊まっても最終日は「エピキュール」にしようと決意して店を後にした(部屋へ戻った)のであります。

パリ訪問での当たりはここだけ、Les Petits Plats

数え切れないほどあるパリのビストロ。そのほとんどを知らない友里でありますが、訪問のたびに予約を試みるビストロがここ。
店名の「小さな皿(料理)」のごとく料理のポーションは多くはないですが、アラカルト対応で創作でも古くさくもない、美味しい廉価料理を提供していると感じてリピートしているのであります。

場所が中心地からちょっと離れているからか、客層は地元民主体。遭遇すると気分が一気に盛り下がる中国人だけではなく、日本人も滅多に見かけない盛況店であります。

友里が最初に訪れたのは2010年の秋。
白トリュフを買いにアルバへいく前にパリに立ち寄った時でありました。雑誌に載っていた料理写真に釣られての訪問でしたが(写真を見るだけで美味しいかペケか、だいたいわ想像できます)、予想通り満足して店を後にすることができたのです。

前菜がピエドコション、メインが羊のトリッパと野菜類をトマトベースで煮込んだストウブ鍋料理(Pieds Paquets)と、どちらも重めに見えたのですがこれが美味しくて完食。
その後もほぼ同時期に毎年訪問して、この煮込み料理を食べていたのであります。

今回の訪問は、昨年末に予定していた出張がに個人的な理由でキャンセルしたので1月末となりました。

席に座ってまず黒板メニューをチェック。もちろんこの煮込み料理があるかどうかをはやく知りたかったのですが、黒板にはしっかりPieds Paquets(24€)とあって一安心。
グラスのスパークリングワインを飲みながらスタッフにこのスペシャリテをメインとしてオーダーしようとしたのですが、何と「本日は用意していない」とのつれない返事。
「スペシャリテのはずだ」と言ったのですが、「作るのに時間がかかるのですぐ出来ない」とか、日本では通用しないエクスキューズに友里は諦めざるを得なかった。
最近は控えていたビールを飲んで気を取り直し違う料理を頼んだのですが、結果的にはそちらも正解であったのです。

まずはアミューズ替わりのタプナード。塩が強くなくいくらでもバケットにつけて食べられる。
牛ミンチベースのラザニアは中身がコンビーフみたいな食感でしたが美味しい。サーモンも悪くはなかった。

鍋料理の替わりに頼んだメインは、シャトーブリアンのビフテック。
オーブラック牛と聞いた先入観もあったかもしれませんが、これがまた美味しかったんですね。かなりレアな状態だったのですが・・・
デセールはレモンクリームで〆て、気分良く店をでたのであります。

何度行っても落胆しないパリのビストロ「Les  Petits  Plats」。
出来ましたら、スペシャリテの鍋料理があるかどうかを確認して訪問してみてください。

前評判の割にはかな~りの期待ハズレ、Thoumieux(パリ)

プラザ・アテネのアラン・デュカスで経験を積み、後にオテル・ドゥ・クリヨンで2つ星をとったシェフ、ジャン=フランソワ・ピエージュが2008年に独立してオープンしたブラッスリー(地上階)。
1階(日本では2階)にあるレストランは現在2つ星をとっていると聞いております。

最近のパリには星付きレストランの廉価版という中途半端な位置付けばかりで美味しいビストロがないと嘆いていた友里でしたが、「人気で予約困難なブラッスリーがある」と聞きまして飛びついたのはいうまでもありません。

場所はサン・ドミニック通りにあるホテルの地上階。
タクシー降りて「おっ、凄く賑わっているではないか」と中に入ろうとしたら店内に大画面のTVが設置されているんですね。よく見るとそこはスポーツバーのようなところでありまして、肝心のブラッスリーはその横にひっそりとドアを構えておりました。
外観は目立たないのですが、中に入ったらその大箱さにビックリ。でも空席の方が多かったのであります。(20時過ぎでした)

カード会社からの予約でありましたが、友里たちは下に見られたのか、ドアを開けるたびに寒風に晒される入り口付近のテーブルに案内されてしまった。
席を変えるように注文をつけたけど、タカピーな受付嬢が「今夜は満席」と却下。この時点で友里の食事前の先入観は最低レベルになったのであります。
フランスなど欧米は早い話「言ったもん勝ち」。3つ星でも高級ホテルでも気に入らずクレームつけると要求が通ることがほとんど。しかも今回は寒風という負のオマケがありましたから。
それでは料理のコメントに移りましょう。

サーモン(22ユーロ)は単にサーモンの薄切りを並べただけに近いもの。何の変哲もないサーモンでありました。
スペシャリテという烏賊のカルボナーラ(14ユーロ)。
何かと言いますと、烏賊をパスタのように細切り(早い話が烏賊素麺)にしてカルボナーラにしたもの。卵黄以外にチーズやベーコンが振りかかっていましたが、どうって事ないではないか。
これならローマの本物カルボナーラの方がはるかに美味しい。黒胡椒も利いていなかったし。

メインはなぜかビッグバーガーに鶏、仔羊、仔牛、鴨と食材は揃っていましたが、単純な火入れ調理のような気がしたので、食材重視で「プライムアンガス」(47ユーロ)をオーダー。
でも出てきたものはホント焼いただけのもの。まあ、ビストロのビフテックと思えば良いのですが、前菜のサーモンと同じく単なる食材主体のも。お味は可もなく不可もなしでありました。

この日の救いは同行者の頼んだ仔羊(31ユーロ)。チョップ以外にもコリアンダーペーストのミンチもあり、これはまずまずの食後感であったのです。

アラカルトだと2皿で軽く60ユーロは行ってしまう高額ビストロ(ブラッスリー)。
予想通り最後まで満席にならなかったこともありまして、再訪はないと心に決めて店を後にしたのであります。