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2009年05月30日

京料理どころか和食でもない業界人料理、ます多

放送作家など業界人が3つ星確実と騒いでいる京都の創作和食店。結論から言わせていただくと、業界人が泣いて喜ぶ高級食材(質を問わず)を盛り込んだだけの「賄い料理」。京料理でないどころか、和食でもなく単なる「業界人料理」です。
のカウンター8席の小さな店で、お任せコース1本であります。
まずは由良の赤ウニが小さな箱毎出てきます。ミーハーにはウケるパフォーマンスですが、烏賊と海苔と一緒に食べるこのウニ、どうってことない質です。続く酢味噌で食べるトリガイもまったく凡庸。そして造りはトロ。京都の和食屋でトロを喜ぶ関東人は業界人くらいではないか。フランス人が東京で出るブルターニュ産オマールを喜ばないというのをご存じない。関西では東京に敵わない白身が沢山あるのにもったいない話です。薄造りは「あまて鰈」と言われましたから島根産の真子鰈のことか。東京では常磐ものが有名ですが、この日唯一満足するものでした。鮑は生の薄切りを七輪で炙って肝ダレで。嬌声を上げる業界人の姿が目に浮かびますが、夏でない時期、和食で鮑を食べたいとは思いません。
竹の子は湯がいただけのシンプル調理。長岡産とのことでしたが、上質のものと比べかなり固い。琵琶湖の稚鮎はスタッフが七輪で焼きますが、焼きが甘いというか小さすぎて蒸し焼きみたい。風味もまったく感じなかった。ここからはこの店が得意とする「濃い味」攻撃が始まります。鯛の子の次は伊勢エビと竹の子の煮付け。出汁は濃いだけではなくかなり甘かった。生節を挟んで再び伊勢エビが煮込みで登場。これまた甘いだけの出汁ですが、その後のタケノコにふられた花山椒が全然利いていないのはいかがなものか。業界人が泣き叫ぶ料理はまだ続きます。大トロの炙り見て私は「出た〜」と思わずつぶやいてしまった。シャトーブリアンをわざわざカツするセンスも問題ですが、深みのないドミグラスをキャベツがべちゃべちゃになるほど掛けて食べるのも気持ち悪い。トドメは〆にでた辛いだけの鮑入りカレーで支払い額3万円台後半。あまりに高過ぎです。
質を問わない偏った高級食材を使用しただけの濃い味賄い料理の連続。これで星がついたら、ミシュラン調査員も業界人レベルの舌しか持っていなかったと言うことです。

2009年05月02日

この時期でも客入りは悪くない、銀座 矢部

まさか未曾有の不景気、100年に一度と言われる危機的経済状態の時期に銀座に出店することになるとは予想していなかったでしょう、銀座 矢部。新宿の店(矢部)の常連客であったビルオーナーに誘われてこの銀座ビルに出てきたのがリーマンショック直前の昨年8月。外食をしながらも自社ビルへのテナント誘致を忘れないという、その常連客の営業努力に脱帽です。
昨年秋、友里以上にミシュランガイド日本進出に敵対意識を持っていると思われる幻冬舎の「月刊ゲーテ」で、「東京一の和食」のように絶賛されていたのを見て、訪れたのが昨年末でありました。
時は不景気のまっただ中で師走といえども集客に苦しむ店が多い中、カウンター、個室ともそこそこ盛況だったのが意外でありました。主人は同伴カップルが少なく回転が足りないと言っていましたが、この時期ではそれは贅沢というもの。今年になって再訪した時も7割方は埋まっていましたから、満足するべきと考えます。
最初の訪問ではオススメの5000円フグ刺しを
追加して2万円コースとしましたが、更にオススメの白子焼きを追加してしまい、一人3万円を突破してしまいました。突き出しのゴマ豆腐はウニ和えと蒸し鮑もついて思ったより薄味で○。スッポンの茶碗蒸しもまずまずでしたが、肝心のフグ刺しは既に切り置いてあり薄くて皿に張り付いた一品。主人は質を自慢していましたが、その質がわかるポーションではありません。その後の造りも傑出した質ではなかったが許容範囲内、炊き合わせ、カラスミと続いて蕎麦で〆となりました。CP的には若干疑問が残ったので、機会を見て再訪したのが今春であります。
アオリのヌタ、アン肝などこの店の突き出しは相変わらず○。若竹椀は味濃かったですがまずまず。造りはまたもや普通でしたが、なぜか追加ではなく出てきたトラフグ白子焼きは接待客にはウケました。海老入り飛竜頭(ガンモ)や鮑、そしてアンコウ鍋まで出て蕎麦で〆ての支払いが今回は2万円チョイ。結構日本酒を飲んだはずですがこの支払額なら食後感が悪いはずがありません。追加なしの1万5000円コース限定なら、傑出さを感じませんが平均点以上。銀座の和食としてはリピート可であると考えます。


2009年04月11日

これが京料理の王道だ、御料理 はやし

海外在住の知人が一時帰国時、タクシーの運転手さんからの情報で訪問して感激したという京都の和食店。ネットで検索すればいくつかヒットしますが、雑誌や京都飲食店宣伝ウーマンの関谷江里氏(自称フリーエディター&ライター)は取り上げていない店であります。特に出汁が素晴らしいとの情報に友里は居ても立っても居られず昼時に即訪問しました。
場所は北村美術館前で京都駅からタクシーで20分前後とかなり遠い。立地の妙での過大評価かと危惧しましたが、一口食べてその心配は杞憂に終わったのです。
昼は5000円から1万円まで3コース。8000円を頼みましたが、最初の先付けの蕪の煮物の出汁を味わって、本物志向の店であると確認。とにかく出汁が旨い。お椀はこの時期京都のお約束の白味噌仕立て。東京ではあまり出会いませんが、タネの海老芋も含めて満足の一品でした。
造りのメジなど鮪系は東京より上とは思えませんが鯛はさすが関西、悪くはありません。そしてグジの蕪蒸しの登場です。冬の京料理の定番ですが、これを出す店を最近あまり見かけません。創作系の料理に力を入れすぎの店が多いからなのですが、出汁が良いからか餡も含めて○。昨年末に食べた「たん熊北店」より印象的でありました。その後の穴子茶巾寿司と煮麺で昼時としてはお腹一杯。ビールと日本酒飲んで一人1万2000円前後、満足の昼食でした。
再度昼に訪問後、やっと夜の1万5000円コースにチャレンジ。突き出しから〆のご飯まで13皿くらいでしょうか、ほとんどハズレがありません。出汁を使ったお浸しのほか、前菜のタコや白魚、蕗味噌は丁寧な調理で旨い。造りも鯛の他にもう一皿(赤貝など)出ます。蓮根餅も餡含めて良く、蒸寿司や大きな鮑やトリガイを使った酢の物にも満足しました。ビールに冷酒を結構飲んでの支払いが2万数千円は〆が餡かけご飯でありましたがCP的にも充分。造りがクラッシュアイスに直接乗せられていたこと、目の前の七輪で焼いたモロコが自分的には焼きが甘く感じた点など若干の疑問はありましたが、味、食材の質、CPとこの価格帯ではトップレベルではないか。奇を衒わない王道の京料理、創作系と違って通い続けても飽きが来ることはないでしょう。

2009年03月20日

3つ星は荷が重すぎる、石かわ

一昨年末に毘沙門天裏のマンション1階に移転した「石かわ」。カウンター7席のほか、個室が4部屋と大箱化が功を奏したのか見事ミシュラン3つ星に昇格しました。個室が接待客、カウンターは常連かミシュラン読者が主体と棲み分けしているようです。レストルームは豪華の一言。男女別でサティスの全自動、照明まで自動で点灯します。個人の和食屋でここまでの設備は初めて見ました。
この手の店のお約束で料理はコースオンリーで1万5000円と1万9000円の2コースです。久々の昨春訪問で1万9000円コースをオーダーしました。
この店の料理の特徴は、よく言えばしっかりした味付け、はっきり言えば濃い目の東京和食。ご飯ものを含めての9皿は、ほとんどがインパクトの強い味わいでありました。
ウニ、アスパラ、ウドの酢橘ジュレは見た目より強い味ながら悪くはありません。稚鮎などの揚げ物も質が良かった。アイナメと蒸しアワビのお椀も濃いめながら許容範囲内で美味しい。初ガツオのヅケタタキは新玉葱の揚げ物が添えられており、旨みの強さを全面に出したインパクトある一皿です。続いて出た松葉蟹なるもの、時期的には禁漁期間のはずで疑問。太刀魚とタケノコの焼き物で一息つきましたが、ミスジ肉の餡かけから更なる濃い味攻撃が再開です。続く真鱒の鍋物もこの一品だけでは誰でも美味しく感じる濃い目の調理。しかし最後の〆のご飯はやり過ぎでありました。新玉葱と子持ちヤリイカの炊き込みご飯、食材のミスチョイスというか、旨みの強い食材を無神経に使用しているとしか思えません。それぞれ単品で食べればそれなりに満足する調理なのですが、コースとしてのまとまりに疑問。例えるならば、4番打者ばかり並べたジャイアンツ打線のようなものであります。
高級食材の羅列ではないですが、ウニ、稚鮎、蒸しアワビ、カツオ、アイナメ、ふきのとう、クチコ、松葉蟹、ミスジ、太刀魚、真鱒、ヤリイカと種類は豊富。個々の皿は悪くはないがコースとしてのバランスが悪いのはもったいない。ミシュラン3つ星昇格直後の再訪でも相変わらず濃い味攻撃は健在でした。
お酒を飲むと3万円近くになる支払いを考えると、京料理の出汁に慣れた方には話のタネに一回の訪問で充分です。

2009年03月14日

繁盛店の傲慢さがでてしまったか、未在

繁盛店、有名店のお約束の道をたどってしまったと感じた久々の京都は丸山公園内の「未在」への夏の再訪でありました。
当初はカウンターを満席にせず、時間をずらしてキャパの半分しか予約を受けなかった変則2回転営業だったのですが、いつの間にかカウンター席全員(6名)時間厳守(17時45分集合 18時一斉スタート)になっておりました。クオリティを保つためキャパ全員の料理を同時に造るのを回避した変則2回転営業が、店の都合を優先するブロイラー方式に改悪していたのです。なぜ店の都合で18時から一斉に食べ始めなければならないのか。「祇園 さヽ木」と同じく繁盛店の驕りを感じてしまいます。
吉兆嵐山本店の料理長まで努めたという石原仁司氏、イケイケドンドンの現総料理長である若主人、徳岡氏との関係で独立したと漏れ聞きましたが、そのうち「祇園 さヽ木」を真似て大箱店へ移転、ピザ窯まで備えてしまうのではないかと危惧してしまいます。当然ながらコースも2万5000円と値上げておりました。
茶懐石を意識した最初のお膳は飯、汁、向付。八丁味噌仕立てのズイキの汁に茄子の鰹&昆布のジュレの向付は普通でありました。鱧の落としは3片だけ。チリ酢、梅肉、鱧の肝が乗せられていますが、肝心の鱧が薬味に負けて旨味を感じません。
造りのアオリイカ、鯛、マグロも質は普通か。サイコロ状の醤油の煮こごりは余計でありました。お椀はタネが鮎豆腐。以前は吉兆そのものの出汁だと感じましたが、今回は昆布が強すぎるのではないか。そして焼き物は黒毛和牛。実山椒のソースは悪くなかったが肝心の和牛の質に疑問。続く箸休めの「山葵と鯛の肝のシャーベット」は山葵が変に甘すぎて箸休めになりません。豪華だった八寸も稚鮎、鱧子、鯛寿司、鴨ロース、さえずり、枝豆、ウニソーメンとアイテムは豊富でしたが、全体にクオリティが落ちたと感じました。冷製の賀茂茄子の焚き合わせの後、焦がし湯と氷菓にフルーツで〆となりましが、
一人当たり3万円弱の支払いを考えると、食材、質含めCPはかなり劣化してしまったと判断。客は信奉者のリピーターが多いようで、店としての進歩が止まってしまったのかもしれません。当分は再訪は出来ないなと思って店を後にした次第であります。

2009年02月14日

移転による値上げでCPは並になった、つか本

細い行き止まりの路地先2階という立地の妙と、5席の小さなカウンターに主人が一人での7000円コース(1万円もありました)がウケたのか、知る人ぞ知る京都の若手有名店であった「そったく つか本」。先斗町から祇園に移転してから初めて訪問したのが去年の秋でありました。
新旧問わず東京の料理人(鮨職人も含む)に銀座を目指す人が多いように、京都の料理人には「祇園」の響きは特別なのでしょうか。この「つか本」も昨年6月に祇園の南に移転してきたのです。
一軒家風の1階にカウンターはL字型の8席、奥に厨房も完備、スタッフも1名雇ったバージョンアップの代償は、コース1万3000円の値上げとなっておりました。
まずは季節物として丹波の栗、海老、イチジクの白和え。可もなく不可もない先付けでスタートしました。子持ち鮎の煮浸しは茄子、高野豆腐とも薄味でまずまず。造りの代わりなのでしょうか、鰤の冷しゃぶはオロシポン酢がかけ過ぎで肝心の鰤の味が消されています。土瓶蒸しの鱧松、軸が噛み切りにくく、質が良いとは思えません。出汁も深みなく価格通りの食後感でありました。鯖の棒寿司(2切れ)はレア感を意識しすぎたのかちょっと〆が甘く鯖の旨みが引き出されず飯も緩かった。反面、濃いめの味付けながら鴨(本シメジ、松茸付き)の炊き合わせはまずまずで、紫ずきん(丹波産枝豆)のずんだ餅は餡の出汁が美味しかった。その後のグジ饅頭にオロシ蕎麦(〆は蕎麦が定番)も価格を考えれば納得する出来でありました。
ビールに日本酒を飲んでの支払いは一人当たり1万6000円前後。東京の1万5000円和食よりは満足度が高いものでしたが、当初の7000円や1万円コースの食後感を考えるとCPの劣化を感じます。主人は「産地」を強調しますが、食材にそれほどの質を感じませんでした。
1万3000円という設定が難しい位置づけであるだけに、どうしても中途半端な食後感となってしまいますが、箱、スタッフと固定費がかかっていますから以前の価格に戻すことは難しい。この夜も客は2組だけでありました。質を上げての高額化も一策ですが、この未曾有の不景気の中では厳しい。時期的には非常にタイミングの悪い移転であったと考えます。  

2009年02月07日

単なる観光客釣りの店ではないか、紫野和久傳

高台寺の料亭を旗艦店とする京都の新興高額和食店「和久傳グループ」。京都では鱧は「納涼床」以外(エアコンの入った部屋)では落とさないで温かいまま食べる、梅肉は使わない、と地元の人でも首を捻る蘊蓄を披露するミシュラン1つ星「幸村」主人も支店の料理長をやっていた人気有名店であります。京都和久傳(伊勢丹)では出された「あぶらぼう」の調理法をめぐって女将と問答した友里、高台寺和久傳、室町和久傳と訪問して最後に残ったのがこの「紫野和久傳」でありました。
この店は他のグループ店とかなり違う営業形態をとっております。元々真の京料理なのか疑問でありますが、この店は「典座料理(てんぞりょうり)」をウリにしています。店のHPを信じるならば、「菜食を中心とした医食同源の料理」だとか。ネットで調べたら精進料理の1種であることがわかりました。創作京料理を標榜している新興料亭が、何故に精進料理の店を出したのか。答えは初訪問でわかりました。
この店のもう一つの特徴は朝の9時から20時半までの通し営業であります。午前は「典座の茶がゆ」(2100円)も出すようですが、昼夜の主体は「典座料理」(5250円)であります。京都駅からかなり離れた大徳寺近くの同店へ入店したのは10時半頃。2階にある8席前後のカウンターは2名の客だけでした。
まずは梅ジュース。続いたのが胡桃豆腐と本シメジの紫蘇煮です。添えられた蕪が酸っぱすぎ蒟蒻はかなり味濃い。自家製豆腐とアロエ(梅肉ソース)、海老芋と餅麩のキノコ餡、椎茸のお浸し、銀杏と味噌を挟んだ餅、煮て炒めたズイキ、大根と椎茸の味噌漬け、舞茸のおこわなど総量がありヘルシーさは伝わってきましたが、精進料理の限界を感じます。食材が限定されるため旨みを補填するため味付けを濃くする調理法にせざるを得ないからです。友里の辞書にある「京料理」とはまったく別物の味付けでありました。
12時近くには土産物を両手に抱えた一見で観光客とわかる女性グループが続々と入店してきました。1階は「和久傳」お得意の「おもたせ」販売コーナー。レストルームが1階にしかない設計も考えると、この店は観光客相手にヘルシー料理で釣って「お土産」の販売へつなげるビジネスモデルであると考えます。

多店舗展開の割にはまとも、たん熊北店 本店

東京の名店「京味」の西健一郎氏が修業した「たん熊」系列で、多店舗展開している北店の本店。現主人に代替わりしてから不採算店は閉めたと聞きましたが、それでもHPを確認する限りグループ店は18あります。つい最近も東京大丸に出店していますから、膨張方針に変更なし。「多店舗展開の店にCP良い店なし」が持論の友里、京料理の老舗に数えられる有名店でありましたが、経営方針が引っかかり訪問を控えておりました。
これだけの有名店ですから一度は訪問しなければならないと初めて予約を入れたのは昨年夏。「たん熊本家」は料亭形式なので回避、割烹スタイルの北店本店を選んだのです。
奥に座敷がありますが料理人と相対できるカウンターは2つ。しかしその後2度訪問しましたが、奥のカウンターは使われていませんでした。
初回はコース料理を予約して失敗。料理は悪くはないのですが、隣客が豊富なメニューから好きな料理を頼んでいたのを羨ましく感じたのです。
その時期お約束の「鱧」を主体にしたコースは2万5000円。八寸は造り置きながら手が込んでいてまずまず。造りの鱧は焼き霜に梅肉。ミシュラン1つ星「幸村」の主人は、京都では梅肉を合わせないと言っておりましたが、この老舗は例外と言うのか。鯛は質が悪くないだけに薄造りにしない方が良かった。お椀の出汁はどちらかというとしっかり目で若狭のグジ焼きはイマイチでしたが、鱧の柳川風と蓮根蒸しとまずまず満足したものでした。
単品注文ではどうかと時期を置かず再訪したのは夏の終わり頃。焼き霜ではなく落としの鱧、厚めに引いた鯛と今回の造りは満足。土佐酢で合わせて食べる水貝は、海草出汁に入ったコクある浜松町の「宮葉」に私は軍配を上げたい。前回隣客が美味しそうに食べていた鱧しゃぶ、天然鮎、炊き合わせ、梅ソーメンと単品料理をよく食べよく飲んでの支払いが二人で7万円近となりました。水貝が高かったようでその後冬に訪問した時は2名で5万円前後で、冬期の定番のグジのカブラ蒸しや海老芋もなかなか美味しかった。料理人は休んだらダメになると言う現主人の言うとおり月の休みは数回しかない「たん熊北店本店」、高額お仕着せコース専門の「菊乃井」、「和久傳」グループよりオススメです。

2008年12月27日

まるで宴会場のような喧噪さ、菊乃井本店

拙著「ガチミシュラン」で菊乃井赤坂店の掲載を決めた際、読者からぜひ本店にも「真の京料理」があるかどうか確認しろとのオファーを受け突入した友里。結論を先に言わせていただくと「TV露出好きな料理人の店に美味いものなし」の定説通りでありました。
高台寺近く、アプローチもなかなかの外観は立派な料亭。予約時はフルネームを聞かれ、数日前には確認の電話がかかってくるのも高額店のお約束ですが、いかんせん雰囲気が悪すぎないか。部屋数は10以上あるようで、東京の料亭とは違うかなりの大箱。その多くの部屋から漏れてくる客の雄叫びが半端ではありません。まるでそこらの宴会場。料亭と銘打っている割に、料理は1万5000円から2万5000円までの4コースで部屋料なしの気軽さが、この雰囲気を呼び込んでいるのかもしれません。和久傳や吉兆の本店とはかなり雰囲気が違うようです。
最初で最後の訪問と割り切りこの夜頼んだのは最高値2万5000円コースのスタートは八寸。粘りすぎの唐墨に緩いアン肝、そして鴨肝松風や紅葉烏賊、松葉そうめんもまったく美味しくない。味濃いだけで手間をかけたように見えません。先付けのクモコの銀餡蒸しもどうってことないレベルでした。向付けの明石の鯛がこの日一番美味しかったのが唯一の救い。続いたシビは冷蔵庫で3日寝かした黄味醤油がしつこくて合わない。土瓶蒸しの出汁はまずまずながら長野の松茸や鱧の質は並。中猪口のイクラと山葵オロシの後の子持ち鮎にも予想通り何ら傑出さを感じません。驚いたのは焼き物。松茸に濡れ紙をかぶせ蒸し焼きにするのですが、肝心の松茸が乾燥していたからか紙が乾く前に取ったのに焦げていました。特に軸が乾燥していたのが新鮮ではない証拠。炊き合わせの穴子も良くなく、白菜のすり流しもイマイチ。〆の松茸ご飯も緩くて香りがほとんどしなかった。
仲居さんが足りないようでウォッチングがなくお酒の追加もタイムリーにままならない自称料亭の「菊乃井本店」。
サービス料15%で酒類が安いからか支払額は一人3万数千円でしたが、
内容は旅館レベルと大差ないものでありました。しかしこの料亭でもご飯の持ち帰りの折り箱代として300円を計上するせこさ、村田夫妻には再考を願いたいものです。

2008年12月06日

あの店は今・・・、吉兆 名古屋店

吉兆ブランド4グループの中で、今でも膨張し続けている(株)京都吉兆。
今年もサミット効果を狙ったのか洞爺湖のウィンザーホテルに支店を出してしまいました。あの「美山荘」が撤退したこのホテルに敢えて7月出店した営業判断、世界的な金融不安で一気に不景気感が広まってしまった今、果たして正解だったのでしょうか。名古屋店に続くこの暴走、イケイケだけの若き店主・徳岡氏の手綱を引く人は吉兆内に居なかったのか。吉兆創業者・貞一翁の「屏風と店は広げたら倒れる」の教えを守っているとは思えません。
彼はミシュラン京都版にも当初は賛成派だったことは業界では有名です。なぜか最近否定する発言を始めているのが不思議です。彼のブログでは「秘書」の書き込みも目にします。堂々と秘書の存在を公表する料理人、典型的な「勘違い料理人」ではないでしょうか。
週はじめと条件は良くないですが、18時過ぎに各フロア(ミッドランド高層階)を歩く客は皆無に近かった。そしてこの吉兆名古屋店も、その夜のホールは我々以外にはわずか1組。あまりに寂しい晩餐でありました。昨年までの盛況はどこへ行ったのか。この7月の昼時も5組しか入っていませんでしたから、かなり厳しい状況であると推測します。
1万5000円の昼懐石が散々な食後感だったので、この夜は奮発して2万8000円のコースに挑戦しました。
前菜のキンメ、赤カブの酢の物は並。続く鱧とシメジ、クワイのお椀はインパクトある出汁で誰でもわかりやすいお味。吉兆らしいと言えばそれまでですが、表面的ではなくより余韻に拘った方が好みです。造りはシビの炙りとトロに伊勢エビ。しかし徳岡さんは伊勢エビが好きですね。有り難がる客が未だ居ると言うことでしょうか。その後は「子持ち鮎」の甘露煮が続きます。お椀の「鱧」といい11月までよく引っ張るとただただ感心。続いて焼蟹、岐阜牛の焼き物、炊き合わせの後またまた伊勢エビご飯で〆となるのですが、このご飯はホント美味しくありませんでした。
京都の有名店は経験していますが、「伊勢エビ」をここまで使用する店は他に知りません。観光客には喜ばれるでしょうが、食通が好むとは思えない。観光客以外は無縁の和食店と考えます。

2008年11月29日

分とく山

総合 ×  味 △   サービス △  内装・居心地 △  CP △

オープン20年になるようで今年のとある日曜日、記念パーティをやっておりました。
1コースオンリーの和食として、誰でもわかりやすい味付けで多皿料理を提供したのはこの店が初めてではないでしょうか。今でこそ1万円、1万5000円コース1本という高額和食は珍しくありませんでしたが、当時としては画期的ではなかったか。
マスコミに有名で料理道具など通販事業にも勤しむ野崎洋光総料理長でありますが、実は「雇われ」で他店を食べ歩くことをほとんどしていないという実態をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
「東京グランドホテル」、「八芳園」といった宴会料理の比率の高いところで働いた後、20代後半と若く「とく山」へ料理長として入店、そのまま「分とく山」の出店と人生の大半を「とく山グループ」に捧げているのです。

他店を食べ歩くことなく20年も自店で創作料理を提供するにはかなりの想像力が必要でしょう。客の要望にも耳を傾けると聞きましたが、土台が宴会料理でその後もほとんど外気に触れていないですから、料理にはおのずと限界がでてしまいます。
良く言えば、誰にでもわかる味付けで質はともかく高額食材を使用した創作料理、はっきり言えば質を伴わない閉鎖された「野崎ワールド」の創作料理とうことです。
オープン当初と違って今は1億総グルメ時代。和食と言えば何でも同じというわけではなく、今は京都から有名店まで東京へ進出してきます。また京都へわざわざ京料理を食べに行く人も多い。同じ価格帯でももっと手の込んだ調理と質の高い食材を提供する和食が東京には存在している現在、江戸風でもなく京風でもない野崎料理、多くの人にわかりやく和食を広めた功績は認めますが、そろそろその使命は終わったともいえるのではないでしょうか。

私の正体がばれている店への訪問は慎重になります。予約は連れにしてもらったのですが、だまし討ちと言われないように、ギリギリの当日、友里が訪問すると店側へ連絡をしての訪問です。おかげで、カウンター内を見られたくないからか、はじめてテーブル席に座らされました。
レンコン豆腐は梅肉が強すぎか。続く前菜盛り合わせはクラッシュアイスの上に盛られているのですが、その中でニシンを真っ先に食べてくれとスタッフに言われました。何とニシンだけ温かいんですね。なぜ氷の上にこんな料理を配するのか不思議です。麩と桃の胡麻和えも食材がマッチしているとは思えませんでした。

お椀は鱧真丈。カツオの強い出汁は別にして、この価格なら鱧そのものを出してもいいのではないか。甘いだけで肝心の鱧の味がしません。
造りのカレイ、鮑、烏賊は普通、太刀魚はイマイチでありました。
夏タケノコに鮎塩焼きですが、すでに骨抜きされた鮎、1匹分ないのでは?焼きもかなり緩かった。
その他、ジュンサイ、鱸、鮑などのアイテム食材がでて〆のミョウガご飯となりましたが、ここのところ京都での食事が続いたこともあり評価基準が上がってしまっているかもしれませんが、以前の私の評価(低評価)を覆すほどの料理には出会えませんでした。

大量生産に近い野崎氏の「独学和食」。同じような価格帯で1つ☆の「小室」や「うち山」の方がまだ本格的な和食の雰囲気(調理も含めて)が楽しめるでしょう。「小十」の1万4000円弱の料理の方がはるかに完成度は高い。
敢えてこの店をオススメするとしたら、高額和食の未経験者か初心者向けだけか。
京料理を知っている人だけではなく、外食好きや和食好きな方にオススメするには無理がある店と考えます。

最後に。連れが是非書いてくれと言った酒類の件であります。
品揃えがプア。焼酎は「黒丸」主体に他に1種だけ。日本酒も常温は「八海山」の本醸造だけでした。
シャンパンやワインを揃える前に、肝心の和系の酒類の充実が先決であると考えます。

2008年11月22日

ただのダイニング和食ではないか、万歴龍呼堂

ミシュランが21日に発売されました。そこで今週は、まったく☆に値しない和食2店(2007年版掲載)を取り上げます。
まずは東麻布の「万歴龍呼堂」です。本当に美味しい和食を提供できるなら、こんな内外装にする必要があるでしょうか。この店の料理長は「祇園 丸山」で働いていたという澤田和巳氏。この京都の有名店で修業した人がなんで格落ちのダイニング系の料理長に就任するのか。予想通り他のダイニング系和食と同様、食後感は悪いものでした。
門扉を開け打ち水された小庭を通って無意味に長い赤松のカウンターに着席。オープン当初は1万円前後のコースでしたが、現在は1万円、1万5000円、2万円、2万5000円と価格だけは高額和食の仲間入りをしております。内容を熟考の上、一番CPが良さそうな1万5000円を選択。
鮑の白味噌和えはダイニングのスターターとして想定内。牡蠣、伊勢海老、湯葉などのスープ仕立ての蒸し物は、トマトがミスマッチです。造りのヒラメが私には天然物と感じず、マグロも水っぽい。甘鯛のお椀、器のセンスはイマイチですが出汁は思ったよりはマシでした。フォアグラとアナゴ、大根の焼き物に添えたホウレン草ソースも美味しくなく、飯蒸しは柚子が強すぎでアンバランス。メインの鴨鍋は出汁が濃すぎて飲む気がしません。〆のご飯は「うずみ豆腐」といって豆腐粥のようなものでしたが、ご飯に豆腐を混ぜて何を訴えたいのか。料理長の意図がわかりませんでした。
酒類も高い。グラスシャンパンが2100円、ブルゴーニュの地方ワインが1万円前後。ネットで6000円前後の村名ワインが1万5000円を超えていましたからやり過ぎです。日本酒も種類が少なく燗酒はわずか1種だけ。驚いたのは焼酎の瓶はすべて水で約半々に薄める「割水」をしています。1週間置いてまろやかさを出しているというけど、薄過ぎでした。
ビール(900円と高い)に酒(1200円とこれまた高い)に焼酎やシャンパンをグラスでチビチビ飲んで一人2万円強の支払いはCP悪過ぎとしか評せません。
厨房スタッフが少ないのかデザート入れて9皿なのに皿出し遅く所要時間はなんと3時間。この支払でこの食材にこの調理、そしてサービスでは、一切近づかない方が無難であります。

ミシュラン掲載を拒否すべきだった、湖月

この店の1つ☆も何かの間違いではないか。常連たちの中で静かに運営していれば、少なくとも検証精神を全面に出した友里征耶の訪問は受けず、実態を晒すことはなかったと考えます。
ミシュラン掲載の通り、電話予約では1万5750円のコースしかないと女将は言っていましたが、後から一人で入店してきた常連客には「お品書き」を示して単品注文を受けておりました。あからさまな常連重視、嫌な店です。
スタートの先付けは「造り置き」の鱧ソーメン、鱧子、サーモン、海老(黄身酢)、落雁。かなり前に造り置いた街場店の宴会料理のレベルであります。ソーメンの出汁もかなり濃すぎ。お椀はこの時期お約束の鱧とジュンサイで、かなりインパクトある味。余韻は短いながらこの日唯一「まずまず」を感じた一品であります。造りは大量にバットに造り置いていた「鱧の落とし」と「カンパチ」に「鯛」。いずれも切り置いてあった刺身であります。こんな出来合調理なら、カウンター形式にしない方がいいのではないか。ここの常連は、造り置き、切り置きの連発にあまりに寛容過ぎます。続く「胡麻豆腐」の出汁はペットボトルに入っておりました。奥の厨房で焼かれた鮎の塩焼きはかなり大きい。炭火焼でないからか、焼きが緩く美味しくありません。
その後、タコ酢を供された時は小料理屋に入ったかと思いました。茄子とニシン、カボチャの炊合せも出汁が濃い割に素材に味が染みこんでいない。ご飯ものは飯蒸し(鯛入り)、もずく雑炊、ソーメン、いくらご飯からの選択ですが、客単価2万円近くの和食としてはあまりに貧弱すぎです。味噌汁も造り置きを再加熱しておりました。
ミシュランでは「京料理」と紹介されていますが、この「造り置き主体」のお店、果たして料理長は真の「京料理店」での修業経験があるのか疑問であります。
食材の質もイマイチ、調理も手間をかけず造り置き主体。街場の小料理屋に毛が生えた程度のこの和食屋で2万円前後の支払いは悪い冗談としか思えません。
造り置き主体だから料理の皿出しもはやく1時間20分あまりで終了してしまった自称「京料理店」。
ミシュラン掲載をオッケーしたために、実力のなさを晒してしまった典型的な例であります。

2008年11月15日

まるで観光地の詰め込み和食屋、とうふ屋うかい

ミシュランは、外人だけではなく和食に詳しくない日本人に対しても、大きな誤解を与えてしまいました。この店に1つ星をつけるならなら、東京の1万円以上の和食屋のほとんどに☆をつけるべきではないか。ミシュラン調査員、こけおどしの外観にまたまた惑わされたようです。
東京タワーのボーリング場跡地に、50以上の個室とテーブル席のホールを持つ巨大店。店前にはハイヤーや運転手付き自家用車が停車しています。行き帰りに車を使うほどの人たちが、なぜ「和食」としては安いこの店へ通うのか、理解できません。
迷路のようなアプローチを通る段階で、庭石、壁、塀の瓦など全体の普請が高くないことがわかりました。しかも建屋の手前に「土産専門」の小屋があるのです。こんな観光スポットのような仕掛け、舌の肥えた上客を相手にしていないのが見え見えです。レベルの低いミシュラン調査員が引っかかりましたけど。
夜の8400円、10500円、12600円から、一番高いコースを選定。先付けの海老芋の蕪蒸し、出汁に自信がないのかトロロ昆布を入れています。海老芋自体も質が悪い。進肴の田楽がこの店のウリなのですが、中庭に「田楽処」と称する焼き小屋を建て、客間からその調理を見せるパフォーマンスをしています。そんなに離れたところで焼いていては、客前へ運ぶ前に冷めてしまうではないか。造りのマグロ、海老、鯛も質が悪い。しかも混ぜ山葵でありました。あまりに情けない。貝柱真丈のお椀も出汁がしょっぱいだけで深みなし。八寸にあった蕎麦豆腐(ウニ乗せ)にも混ぜ山葵を確認。蕎麦の風味もなく凡庸の一言です。もう一つのウリである「豆水とうふ」、大豆の絞り汁に魚貝の出汁を入れた味わいで、出汁醤油と松葉昆布をかけるよう勧めますが、MSGに頼っているのが見え見えです。留肴の和牛炭火焼きも皿が冷たく肉も冷たい。〆の蟹せいろについていた香の物にもMSGが立派に降りかかっておりました。
普請が安いとはいえ、巨大な敷地にこけおどしの箱物で固定費がとられますから、1万円前後の価格設定でCP良い料理が提供できるはずがありません。
和食と思わず、単なる「豆腐料理」と考えてもわざわざ行くような店ではないでしょう。

2008年09月27日

ウリの鯛茶漬けは好みが別れるがCPは悪くない、山路

黒胡麻の鯛茶漬けとスッポンの出汁で評判の「ぎんざ 山路」。昭和通り外側、小さなビルの地下、と立地は良くありません。マスコミ露出も少なく、ネットのレビューも少ないことから、常連主体の店であると考えます。しかし年末から一見客が増えるのではないでしょうか。複数の情報源から漏れ聞いたところ、来年度版ミシュランガイドへの掲載許可の問い合わせがあったとか。正確には料理や店内の「写真提供依頼」か、カメラマン派遣による「写真撮影依頼」を受けたということでしょう。調査期間が短く多くの店を評価できないので、1冊の本として体裁を整える為、写真を沢山掲載してページ稼ぎをしなければならないミシュラン。ほとんどの店にとってミシュランの接触は目出度い事ですから、つい他人に漏らしてしまい、事前に掲載が漏れ伝わる
結果となりました。友里の暴露でも掲載を見合わせない大人の対応をミシュランに期待します。
店内は8席のカウンターにテーブル1卓、そして掘りごたつ式の小上がりの小さな店。訪問するなら少人数でのカウンターをオススメします。小上がりは狭くてスタッフが上がれず、料理はバケツリレーのように客同士の手渡しとなるからです。
久々に訪問した初夏、お任せ1本のコースは以下の通りでありました。
まずは鱧そうめん。やや濃い目の味付けがこの店の特徴ですがまずまず。梅味の茶碗蒸しも悪くありません。タコの煮物は鮨屋の桜煮とは違いますが美味しい物でした。お椀はこの時期の定番の鱧とジュンサイ。出汁はバランスよく○。鯛茶がウリですが、造りの鯛には疑問を持ち、赤貝、鱧の落としは普通でありました。続く鮎の塩焼き、トラハゼ、鱧寿司にも傑出したものを感じませんでしたが、賀茂茄子の炊き合わせと鯛のアラの蒸し物は良かった。〆のご飯は鯛茶と丸雑炊が選択できましたが、個人的には丸雑炊がオススメです。お茶をかける黒胡麻の鯛茶、普通の鯛茶に慣れている私には物足りなく感じます。反面この店のスッポンの出汁は「重よし」よりかなり上。雑炊は誰でも満足されると考えます。出汁を使った料理をメインに楽しめる「ぎんざ 山路」、お酒を飲んで2万円台前半とCPも悪くはありません。小さな店ですから、ミシュランに掲載される前に一度は訪問しても良いでしょう。


2008年04月05日

江戸料理屋「なべ家」をストーキング ねぎま編

本日で友里征耶の「行っていい店わるい店」はお休みさせていただきます。半年にわたりお付き合いいただきまして有難うございました。さて最後の店はどこにしようかと考えた結果、来月の参考になればと4月限定の料理を出す店にしました。
どこが「江戸料理」なのかさっぱりわからない大塚の「なべ家」。客を呼び込むため季節毎に、手を変え品を変えた料理を出してきます。5月の「川鱒」や6月の「鮎」の時は店名と違って鍋を出しませんが、4月限定の料理は、大谷浩巳氏などヨイショ専門のフードライターたちが絶賛している「ねぎま鍋」であります。
昨年4月に訪問。突き出しは、うるめいわしと甘い玉子焼きは本当にワンパターン。これが「江戸料理」だと開き直られたらそれまでですが、どうってことないもの。しかもこの玉子焼き、口に含む瞬間、油の匂いをモロに感じます。毎回一品変わる突き出しの皿は、鮪のヌタ和えでした。まったく凡庸だったのは予想通りであります。
続いてお椀の代替なのでしょう、「豆腐粥」の登場です。出汁はカツオが強過ぎですし、安くて手間のかからない椀タネですから調理は楽なものです。
造りは鯛とさよりで、炒り酒が添えてあるだけの平凡な質でありました。
毎回こんなもの出さなくていいと思う「出汁入り蕎麦」も健在。蕎麦は他店から仕入れているとも聞きましたが、この出汁が甘すぎて話になりません。
そしてメインのねぎま鍋。ぶつ切りというか角切りが一人4片にセリ、若布、白葱、ウドなどが添えられています。身が厚いとはいえ、かなりお歳を召された女性スタッフは火入れに寛大なようで真っ白になった鮪を鍋から取り上げます。かなり大量に胡椒を掛けることを推奨されますが、脂がしつこい鮪(質が良くない)を使っているからと読みました。そして〆は白飯にこの出汁をかけた「汁かけご飯」であります。うーん、油臭い玉子焼き、カツオ強すぎの豆腐粥、平凡な質の造り、出汁に鮪と野菜入れただけの鍋、と高度な調理レベルをまったく感じないこの「江戸料理」。お酒を飲んで一人2満数千円でしたから、「ねぎまコース」は1万8千円ほどと読みますが、家庭料理の延長線上としか思えないだけに、4月限定という「釣り文句」に引っかかって訪問する必要はないでしょう。


2008年02月09日

高級食材オンパレードの創作京料理、久

先斗町入口から上がって市営駐輪場を抜けた左側に店を構える「くしかんざし 久」。変な店名は、昔串揚げ屋だったからだそうです。あの1つ星「幸村」の主人も、和久傳へ入る前ここで働いていたと主人から聞きました。
カウンター10席足らず、主人と女将の小さな店です。マスコミの取材拒否ですが、ネットに店情報が結構出ていますので取り上げます。
この店は純粋な「京料理」ではありません。天然鰻、天然岩牡蠣、鮑、ウニ、松葉蟹など高級食材を各皿に盛りこんだ「創作京料理」。文化人、業界人、放送作家など濃い目の味付けを好む人たち、高級食材の羅列に目がない人たちにウケる店だと思います。
一昨年に続き訪問した昨年末、まずはセイコ蟹からスタート。大きな雌蟹で内子も美味しいのですが、甘いポン酢が私には疑問。聖護院大根と鯛の子もやや甘めでありました。足摺岬の岩牡蠣、やはり天然だとこんなに小さいものなのか。ポン酢かけ過ぎですが珍しい一品です。自家製カラスミはネットりしていて甘い大原大根との相性は良かった。カワハギの肝和えも濃い味わい。タイラギ、貝柱、丹波猪の味噌和え、天然ナマコ、グジなどを使った蕪蒸し、鴨葱焼き、と高級食材オンパレードの濃厚な味付けの皿が続きます。京都でこの時期お約束の海老芋は酸っぱい味付けで面白かった。
そして〆のご飯ものは、この店のスペシャリテ、オムライスであります。
オムライスと言っても普通の洋食屋とはまったく別物。アワビ、鴨ロース、ウニ、フカヒレなどを使用したスッポン出汁の玉子餡かけ丼です。これまた濃厚味。これを出されたら、業界人はじめ山本益博氏、門上武司氏も完全ノックアウトか。相性関係なく高級食材をふんだんに使った料理に目がない文化人や放送作家が泣いて喜ぶ究極の〆ご飯であります。
支払額は2万円前後、主人の業界話も面白く、これだけ濃いとワインにも合うか、ワインの持ち込み可だと聞きました。
友里が頭に描いている「京料理」とは対極にある創作料理。東京からわざこの店だけを訪問するのはおススメできませんが、連泊で京料理に飽きた時に経験してみたい店ではないでしょうか。普通の京料理に慣れている京都や関西の方が時たま訪問するにはもってこいの店だと考えます。

2008年01月19日

奇を衒った滑りまくりの創作和食、山田チカラ

「旬香亭デ・メルカド」で模倣エル・ブジ料理を出していた料理人が独立して出した「山田チカラ」。何と茶の湯に目覚めたとかでスパニッシュから茶懐石への転向です。しかし、フレンチからスタートして最後は「エル・ブジ」で修業したと聞く山田力シェフ、和食をどこで勉強したのでしょうか。
麻布十番駅から徒歩10分以上、茶室と掘り炬燵式のカウンター8席の主人と女将の小さな店。料理は1万2000円1本で、日付と主人の署名入りのコース内容は、一ケ月前東京カレンダーに掲載された記事と6皿(全11皿中)も重なっておりました。
女将が最初に出してきたのは「おしのぎ」。折敷に飯、汁、向付が並べられています。飯と汁を飲まなければ酒類を出さないという懐石の作法を真似ています。その後女将が注いでくれたのが「バラのマティーニ」。これも立派な11皿の一つですが、匂いがバラと言うよりまるでトイレの芳香剤のようでした。スプーンに乗った一口料理の生ハムメロンは見た目の奇抜さだけのもの。造りはサイコロ状に切った鮪にウニ、鱒子、海老を醤油のヌーベで供されます。刺身を引く技術は和食の生命線ですが、サイコロ状にするとはその基本を踏み外す愚行。和食を知らない外人が考え出した醤油のヌーベもヒネた味わいで刺身に合いません。お椀の代替の粉末フォアグラに温かいコンソメをかけた「キノア」、液体窒素を使って粉末にしてしまったらフォアグラの味なんて感じません。しかもコンソメは業務用のように味が濃かった。二種選択のメインの一つ佐賀牛ステーキはまだ良いとして、もう一方のタンの煮込みは甘酸っぱすぎて半加工品のような食後感。冷蔵庫にはキューピーの冷凍卵白のパックがありましたから、業務用品を使用するのに抵抗感のないシェフであると考えます。
11皿中、早松と鱧のフリット、鱸のポワレ(火が入り過ぎてNG)、五島饂飩と3皿にトマトソースを使う偏りはいかがなものか。和洋折衷な和食もどき料理に値付けの安くないワインを頼んで一人2万数千円の支払いはCPあまりに悪い。妖艶な女優や編集者のヨイショでご満悦なデザートライターを見かけたことからも、味がわからない業界人専門のお店と判断。わざわざ訪問する店ではないでしょう。

2007年12月22日

名古屋のバブルを実感、吉兆 名古屋

今回の食材偽装問題で「吉兆」が5つの会社に分かれていると初めて知った方も多かったのではないか。湯木姓を名乗らない京都吉兆の三代目徳岡邦夫氏、TVなどマスコミ露出が激しく強気な店舗展開をしており、今年名古屋ミッドランドスクエアの41階に出したのがこの「吉兆 名古屋店」です。
船場のおかげでキャンセルが多いと嘆く徳岡氏を知り、名古屋に一泊した私は昼の訪問を思いついたのです。今なら飛び込みでも入店できる、京都グランヴィア店は結構空いていた、との思惑でしたが入店してビックリ。店内は個室もホールも喧噪で最後のテーブル席だったのです。
メニューを見て唖然。京都各店では6000円以下で提供される松花堂弁当がありません。最低値はミニ懐石の1万円。他は1万5000円、2万8000円と嵐山本店の次に高額な店でした。
仕方なく頼んだミニ懐石、食後感は最悪。八寸は柿なます、イクラ、黒豆、トンブリ、サーモンなど食材、調理とも期待外れ。和食の生命線のお椀のタネは蕪、シメジ、名古屋コーチンの鶏団子。団子はなんと山椒を利かせてありました。こんなタネでは繊細な出汁は合わないと考えたのか、カツオが強すぎるバランス悪い出汁。その割に余韻がありません。造りの鯛はクラッシュアイスに直に載せられています。創作和食で昔見た手法ですが、これでは溶けてベチャベチャになるではないか。シビ(鮪)の握りも酢飯が甘く醤油のジュレのようなものを乗せてあります。鰆をエリンギでまいた揚げ物もモロミ醤油を付け合わせ、〆の鯛飯も生姜が強すぎるなど、これが京都に本店を置く名門和食の支店なのか。味付けは素人受けを狙った濃い味や変化球の調味料を多用していてまるで創作和食です。京都吉兆への期待はもろくも崩れ去りました。
ビールもドライの中瓶が1000円と仕入れの3倍以上はやり過ぎです。
料理高い、ビール高い、調理は味濃くまるで創作和食、とこの店がなぜ満席なのか。名古屋がバブルであるとは聞いていましたが、新幹線で30分程度と簡単に京都へ行けます。名古屋の方にはこのCP良くない店へ行くより、足を運んで本物の京料理を堪能されることをおススメします。もっとCP良い和食店は京都に沢山あります。

2007年12月15日

確かにCP良いけど星1つは荷が重い、えさき

食後感は悪くない店だとは思っていましたが、まさか2つ星をとるとは想定外だった「青山 えさき」。CP悪過ぎの和食店「菱沼」よりましですがミシュラン調査員の舌は本当に当てになりません。
昨年春に地下鉄外苑前から徒歩10分以上とかなり足の便が悪い場所へ移転、コンクリート打ちっぱなしと一昔前流行ったようなビル地下にこの「えさき」はあります。
カウンター、テーブル、個室で20数名のキャパ。移転前と違って料理はコース1種(デザート入れて7皿)8400円だけ。ただ、2100円の追加でキンキの煮付けが1匹つけられます。(現在は炊き合わせだけを変えキンキを付けて1万500円コースとしている)西麻布の高額閑散定食店「田はら」(何かの間違いか1つ星を獲得したので予約殺到かも)では一本釣りだと称して1匹8千円ほどでしたから、これは安いとオーダー、計1万500円になりました。
巻き海老、ソラマメ、トマトのライスペーパー包み、京菜、百合根の先付けは、高額和食ではないので文句は言えないレベル、可もなく不可もなし。幸先不安のスタートでしたが、鯛の出汁をとって造ったと思われる「かき菜」のスープで持ち直しました。さあこれからだと思った矢先の鯛の造りは、やはりこの価格では上質なものは仕入れ不能かと判断できる代物でイマイチ。しかし次皿からはまともな料理が続きました。大蛤のお椀は出汁もまずまず、移転してからコンセプトを変え野菜に力を入れるようになったという有機野菜料理もグッド、そしてやや小ぶりでしたがキンキの煮付けも味付けのバランスよくこれが2千円ならお買い得と感じたのです。
以前のような創作料理を排し、有機野菜を多用したベーシックな割烹料理。〆のグリーンピースのご飯でお腹も一杯、小豆とカスタードの熱々グラタンなる創作デザートはご愛嬌か。
最後は有機栽培珈琲とやたらと「有機」という文字が目立つのが気になりますが、1万円以上のコースもあった複数コース制を8千円1本に絞って勝負してきた今回の移転。わざわざ行く価値があるかどうか、傑出した料理があったわけではないですが、同席した京都在住の知人が納得した事実と、キンキの煮付けが良かったことを材料に、星なし店としてならおススメできる和食店と考えます。

2007年10月07日

東京最高には程遠いが、CPは悪くない割烹、岸由

「東京最高の割烹になりつつある」、「天才料理人」とネットで絶賛され、あの居酒屋系がホームグランドであると思われる自称農産物流通業者の「やまけん」さんも絶賛しているのがこの小滝橋の「岸由」であります。
東京で最高の割烹と言うと、食通はまず「京味」、「と村」、「重よし」などを思い浮かべるはず。「幸村」、「小室」を推す人もいるでしょうが、この「岸由」の店名が出ることはまずない。私もノーマークだったので早速HPを見てみると、6000円コースがメインの地元密着型の廉価な和食店でありました。一般に言う高額割烹は最低でも2万円を超えますから使用食材や調味料(昆布や鰹節)の質もまったく異なるはずです。検証の為友里が訪問したのは言うまでもありません。
高田馬場駅からタクシーでワンメーター、カウンター4席に座敷が3つ、主人と女将だけの小さな店です。勿論高い8000円コースを頼みました。
先付けは蛍烏賊、こごみやタラの芽の天婦羅、海鼠腸など。想定通り価格に見合った食材でしたがまずまず。アイナメのお椀は出汁も悪くないのですが、最高質の調味料を使用していませんから限界があります。刺身も食材、質と普通。鱒の煮物、ヤリイカのゴマ味噌焼き、鯛の押し寿司に赤出汁と、真の「東京最高レベルの割烹店」では供されない食材と調理はある意味新鮮でしたが、高額居酒屋との違いが見出せません。
そして問題なのは日本酒。純米無濾過生原酒のような濃い味のラインナップばかりです。酒だけを飲む時に美味しく感じるインパクトある味濃い日本酒が、食中酒としてベストであるとは限りません。コースの総量も少なく、帰路、仲間と新大久保に降りてカムゲタンや石焼ビビンバで空腹を満たした次第です。
確かに料理は、同じ価格帯の「高額居酒屋」と比べると調理レベルも高く頭一つ抜けています。しかし「和食」と考えると、真の東京最高レベルの割烹店と比べるのが可哀そう。使用食材や調味料が根本的に違いますから、昔の木のラケットを持った杉山愛が最新のラケットのシャラポワと戦うようなものです。例え天才であっても(違うと思います)、この価格では比較自体が無駄というものです。居酒屋レベルに慣れ切った人たちの「褒め殺し」、岸由主人も迷惑なのではないでしょうか。

2007年05月26日

金を落としそうな客に媚売りすぎる拝金主義、井雪

誰もが認める東京の京料理店の雄「京味」。この店出身の人気店も多く、「あさみ」、「新ばし笹田」などオープン時から「京味」出身の店と言うキャッチでかなり得したのではないでしょうか。そして彼らのような下っ端ではなかった料理人が出した店が歌舞伎座近くの「井雪」であります。屋号は生家である知恩院近くの旅館名だとか。カウンター7席に小上がりだけの「お任せ割烹」ですが、昨年春のオープンから瞬く間に評判店となりました。紹介制の店とのことですが、「京味」に行った事があるといえば予約が入り、住所や電話番号を開示していませんが文藝春秋社の「東京いい店うまい店」では全データを掲載していましたので今回取り上げます。
エキサイト社長ブログをはじめネットで絶賛の料理は基本的にお任せ1コース。ここまでは「京味」と同じです。食材も津居山の松葉蟹など出身店と同じルートのようですが、味わい、食後感はかなり異なります。良く言えば誰にでもわかりやすい濃く甘めの味付け、はっきり言えば年配接待族や業界人向けの品ない味付けです。輪郭がしっかりしているといえば聞こえはいいですが、京料理の真髄とは程遠い調理の連続。主人も「親方と同じではやっていけません」と言っておりました。しかし味付けだけではなく接客も親方だった西氏のいい所を見習わないのはいかがなものか。常連客には名入りの小さな提灯を店内に飾るなど気を遣っていましたが、一見客にも丁寧に対応して接客差を見せなかった西さん。ところがこの若き主人と女将は、金払いの良さそうな客とそう見えない客に対する差別が激しすぎます。常連ではないですよ、わずか2回目の客でも金があって遊び歩いているように見える人には掌スリスリで媚売りっぱなし。自慢しない客、富裕に見えない客はほとんど無視状態でありました。常連なんでしょう、味がわかる食通には見えない年配客(当然経費族)が遅くに入ってくると、出汁巻き玉子や海老風味のカレーといったある意味特別料理を出していました。一人2万5000円はかかる高額割烹料理屋です。隣からカレー香が漂ってきてはまったくの興ざめ。料理イマイチで経費族多く接客も良くない。主人と女将には早く目を覚ましまともな店運営をやってもらいたいものです。

2007年04月29日

あの店は今、松下

拙著第一巻で「立地の妙に後押しされただけの『過大評価』な和食」と評してから、3年ぶりの訪問。相変わらず料理に傑出さを感じませんでしたが、以前には気づかなかった問題点を把握することができました。
カウンター主体でテーブルと小上がりがある店内。夜は8千円、1万円(以上「コース」と称しています)、1万3千円、1万5千円(以上「お任せ」と称しています)の4種の多皿コース。カウンターのある割烹では職人の仕事を見ながら食べたいものですが、「松下」ではカウンターに座れる客は「お任せ」、つまり1万3千円以上を頼む客に限定しています。常連と一見で席に差をつける店はありますが、支払額というのは儲け主義そのもの。
厨房は主人も含めて6名とこのキャパでは余裕の人員。暇だからか主人は客に「絶品です」、「鮮度が違います」、「後に引きますよ」と暗示を掛けるだけで調理はしていません。ホール側にも女性スタッフが二人いるのですが、この店ではカウンター客に料理の上げ下げをさせます。料理人は料理をカウンター上に置くだけ。客がそれを下へおろし食べ終わったら上へ再び置く。客単価数千円の居酒屋でみる対応を1万円以上の高額和食屋が客に要求するのです。他にもビールが温い、酒の価格を表記していない、造りは切り置いて皿に盛ったまま冷蔵庫で保管している、などが気になる点が多かった。
モンゴ烏賊のフライ、だるま烏賊の焼き物など1万5000円のコースに出す食材なのか。鮮度が自慢で生姜ではなく山葵を溶いたという鯵は、醤油の入れすぎで肝心の鮮度がわかりません。ショッパイ。天然鮎にかかっている蓼酢のようなものは変にトロミがあります。ネギを刻んでいるようですが、それこそ鮮度のいい蓼だけの酢にしてほしかった。オムライス、高額和食の〆に出す料理でしょうか。洋食屋に来たわけでなく、賄いや裏メニューでもあるまいし。
この店は料理学校の就職先として人気があるとネットにありましたが、私に言わせるとここで修業しても和食の王道を学べるとは思えません。単なる味濃い料理を少量多皿で出すだけの早稲田の割烹屋。この味付けは業界人や文化人には向いているかもしれませんが、本当の和食好きの方がわざわざ訪問する店ではないと考えます。

2007年04月14日

店名からは想像できない高級店、英ちゃん冨久鮓

関西在住の食通の方から、高質な天然フグを食することが出来ると教えられましたが、私はこの店名に思わずのけ反ってしまいました。なんだこりゃ、街場の寿司屋でもあり得ないネーミング、東京の高額店でこの店名ではまず客は入らないでしょう。「ぐるなび」にはビールのクーポンがついており、拘りがあるとは思えなかったのですが、HPやネットの掲示板では「天然」に拘った高級食材を出す店で、懐石や寿司のコースは1万円以上の高額店と知り、まずは特別仕入れのフグ料理会に参加しました。
大阪はミナミの居酒屋などが乱立する地域。渋い店構えの扉を開けたら、数十年前にタイムスリップしたかとおもうレトロな寿司屋のカウンターが目の前に広がります。2階の座敷では懐石など和食が食べられるようです。
大阪でトップレベルの食材を仕入れていると自負する主人が用意したその日のフグは7キロ以上。関西は大きいフグを珍重するようで、それほど熟成させていないと思われる厚めに引かれた刺身は食感、旨みも充分。2キロ近かったという白子焼きは塩と醤油の2種がでましたが、個人的には塩だけでいただきたかった。関西は焼きフグに力を入れているのでしょうか、遠江(とうとうみ)、中骨含め次から次へと出てくる炭火焼の量は半端ではありません。しかもここまで甲殻類の香りがするものを経験したのも初めてでした。鍋、雑炊にたどり着く前に天然フグを堪能しきった次第であります。予算は3万円前後。大阪ではかなり高額ですが、東京では高額フグ屋の平均ですから交通費を考えなければお得です。
特別コースだけでは店評価できないと今度は昼にお好みで1階の寿司にチャレンジしました。ツマミで頼んだ鯛はさすが関西、美味しい。天然のハマチも脂が上品、支払い覚悟で頼んだサエズリも良かった。では握りはというと、江戸前というより海鮮系の寿司。煮切りはなく、ガリも酢飯も甘めでありました。普段食べないものをと頼んだ牛トロは甘い酢飯にあって面白く、鯖棒鮨も良かったですが、ツメを引いていない照り焼きみたいな穴子、深みのない赤身、〆の緩い小鯛など東京の有名店並みのレベルを期待するのは酷というものでしょうか。ぬる燗含めて支払い1万6000円はこの食材では仕方ないと考えます。

2007年04月07日

残りシーズンに蟹を食べる気力がなくなった、川喜

東京で評判の京料理屋の主人からぜひ一回行ってみろと勧められた越前蟹料理で有名な三国港「川喜」。週刊誌で山本益博氏も絶賛していましたっけ。遠方なので行く機会がなかったのですが、金沢出張時ちょっと無理しての訪問です。JR芦原温泉駅からタクシーで3000円以上とかなり遠いが、運転手さんも三国港一番の越前蟹を仕入れていて福井で一番と言っていたので期待は更に膨らみました。この店では予約時に蟹の杯数を決定します。競値なので価格は固定されていませんが、2名の場合1杯で5万円、2杯だと8万円が目安だとか。1杯が3万円の計算ですから、勿論我々は1杯に即決しました。
店前に大きな駐車場スペースや看板もあり、観光地の料理屋の雰囲気。入り口横には鰈が干されており今日の仕入れか越前蟹がたらいの中に2杯入っておりました。
すべて個室の座敷対応で、料理はコース形式。蟹は茹でるのに30分はかかるというので、その前に酒に合わせて福井産のツマミがいくつか出てきます。前菜はメカブの炙り。お通しは鰈の肝煮、造りは甘エビ、煮物は地元料理という鰈の汐入、そしてハタハタの焼き物と肝心の蟹が出てくる前にお酒もすすんで結構お腹が張りました。メインの蟹はかなりの大きさで、身の汁を逃さないように、しゃぶりつきながら食べるように主人から教えられます。この店独特の言い回し「しがむ」という食べ方です。確かにジューシーで濃厚な味わいですが、食べ進んでいくと果たして「ずわい蟹」はこんなに大味というかしつこい味の食材だったのかとの疑問が沸いてくるのです。恐らく今までに茹でた蟹の出汁が出た汁で茹であげているからでしょう、この不自然すぎる濃厚な味わいは、その蟹自身だけからのものではないということです。〆の蟹雑炊はほとんどギヴアップ。蟹の顔も見たくなくなりました。適度なお酒を飲んで二人で6万円を超える支払い。翌朝は蟹の写真を見るだけでゲップがでそうになりました。「この店の蟹を食べたらもう他店の蟹が食べられなくなる」ほど美味しいのではなく、濃厚な味に飽きてしまい、残りのシーズンにもう「蟹」を食べる気がしなくなるほどしつこい味の「川喜」。この店訪問だけを目的に飛行機に乗ってはいけません。

2007年04月01日

値付けが良心的な居酒屋風の魚専門店、山形

読者の方が、「この店へ行けばスッポンの本当の値段がわかる」と教えてくれた代々木上原駅近くの店。普通の居酒屋の佇まいで、表の看板には「鮟鱇、ふぐ、活魚、鰻、スッポンの店」と書かれています。よく言えば選択肢のある魚専門店、悪く言えば拘りをまったく感じさせないナンデモ屋。すべて小上がりで靴を脱がなければなりませんので注意してください。
勧められたスッポン1匹料理は1万円でした。2〜3人前との注釈がありますから、一人当たり高くても5千円でフルコースが食べられる計算になります。高級スッポン専門店は一人分が2万円以上、普通でも1万円を軽く超えるのが一般的ですから値付けはかなり安い。高級料亭関係者からも、スッポンの仕入れは4000円前後との裏をとりましたから、元々それほどの高額食材ではないようです。
1匹その場で捌いていますから、色々な部位が食べられます。生き血は避けたいですが、刺身には心臓、肝臓に赤身。食べてみて生より鍋に入れた方が良いとは思いました。鍋は丸鍋というより寄せ鍋のようなもので、時間的にもそれほど煮込まれていなかったからか、肉やスープにそれほどの滋味を感じません。しかし、エンペラ含めたスッポンと各種野菜の豊富さには満足しました。雑炊もそれほどの深みを感じませんでしたが、この金額では仕方ないか。
この店で安いのはスッポンだけではありません。「お試し一口刺身」として、鮪、フグ、ヒラメ、オコゼなどが800円ほどで用意されています。試しにいくつか頼んでみたところ、刺身は一切れではなく5切れはあり、一口ではない予想外の量に驚きました。岩牡蠣も2ケ1000円。ネットの絶賛ほどの質の高さは感じませんでしたが、渋谷や湯島近くの有名高額居酒屋よりは上であります。刺身に添えられた山葵が本物でなかったのはご愛嬌でしょうか。
「山形」は質そこそこながら良心的な値付けの魚専門店。季節が合えばフグや鮟鱇も試してみたいですが、鰻はガス火焼きですから考え物です。
問題点は一つ。価格が価格なので接客に期待はしませんが料理が出てくるまでに時間がかかりすぎます。刺身、サラダが20分はかかりました。近くへ来る機会があり、時間に余裕があるなら立ち寄ってみてください。

2007年03月18日

皿数多く高級食材がてんこ盛り、まとの

友里はどちらかというと多皿コースに否定的であります。またアイテムだけで質を伴わない事が多い、「高級食材」の乱用にも問題提起してきました。多皿コースにすることによって一皿毎の印象を薄めレベルの低い調理をごまかす。鮑だ、伊勢海老だ、のどぐろだ、と質が伴わない食材を味がわからない業界人に出して評判をとる店が多いからです。しかし、私はこの京都の「建仁寺 割烹まとの」へ行き、価格の割にほとんどの皿のレベルが高く、食材の質も高いことに驚いたのです。
1階は6席のカウンターのみ、2階は座敷が3部屋。いずれも靴を脱がなければならないところは友里好みではありません。
〆のご飯まで12皿は出てきます。盛り付けにも気を使っているのか、見た目もよい各皿の量はしっかりあります。
例えばこの日のコース。
先付けは、鮑柔煮とフグ白子昆布焼きと初っ端から高級食材が2種。口取の寒鯖の棒寿司も合わせて質はいい。お椀のタネには伊勢海老が使われていました。出汁はしっかりした味わい。自分的には強めに感じましたが、椀タネには満足です。造りは天然ヒラメの薄造りとシビ鮪など。鮪は普通でしたがヒラメは量も多くまずまず。ポン酢でしたが、この質なら私は厚切りで山葵と醤油で食べたかった。焼八寸の穴子、のどぐろ、炊き合せには聖護院大根、堀川牛蒡、九条葱、油物には白魚や車えび頭、蒸し物には海老芋、車えび、からすみ、と京食材や高級食材がてんこ盛りです。そして質自体が悪く無い。〆に出た伊勢海老ご飯がダメ押しになりました。これで一人1万3000円ですからそのCPの良さに脱帽です。この価格では、量、質と文句をつけるところがありません。伊勢海老は主人の伝で有利に仕入れられるとの事で、この店のウリの一つと聞きました。
多皿や質の落ちる高級食材のオンパレードで肝心の調理から客の目を逸らす戦略の「人気店」が多い中、この店は奇を衒わず、手抜きのない料理をCP良く提供する数少ない店と言えます。東京でこれだけの食材を出すなら2万円でも無理でしょう。友里のイメージする「京料理」とはやや異なる傾向の調理でありますが、観光客が殺到している店で当たりが少ない京都和食では、訪問して損は無い、おススメできる店であります。

2007年03月10日

店前に放置された「ブツ」を見てビックリ、和楽惣

南麻布にある高額居酒屋ですが、開店前の店先に積み上げられた「ブツ」を見なかったら、友里は訪問しなかったでしょう。店が開く前に配送業者が置いたとみられる積み上げられた箱を見て私は驚きました。なんとヒガシマル醤油の「割烹関西白だしつゆ」の山。こんなモノを堂々と置いたら、「弊店は『業務用の出汁の素』を使っています」と公言しているようなものです。影響力のある有名ヨイショライター「さとなお」氏も褒めていた店だけに私は訪問を決意しました。まずは事前準備にネットからこの「割烹関西白だしつゆ」を1200円ほどで購入。ラベルには大きく赤字で「業務用」と書かれてあり、原材料には「アミノ酸系調味料」の他、蛋白加水分解物や各種エキスなど添加物が盛り沢山です。料理によって希釈倍率が違いますが、吸い物推奨の14倍で味見したところ、不自然に濃くて甘ったるいものでした。
店内はカウンター10席、テーブル10席に個室もありかなりの大箱です。
最初の訪問では豊富なアラカルトに挑戦しました。しかしメニューにご飯物しか金額が明記されていないのはいかがなものか。支払い時に各料理は1000円前後で、客単価は1万円前後とわかりました。刺身類はこの価格帯の店ならまずまずのレベル。しかし、大関納豆(刺身の魚が5種入った玉子で和えた納豆。横綱納豆は10種になる)はアイデア倒れ、ワインを隠し味にしたという黒豚スペアリブの肉じゃがは、ジャガイモと人参がたっぷりながらやはり味濃く甘すぎ。例の出汁を使用していると推測される水菜のお浸し、揚げ出し豆腐もやはり不自然に味濃すぎでありました。全般に甘ったるく味濃すぎで、正に「さとなお」さんや山本益博氏の好みの味付けと言えますが、この味に慣れたらまともな和食が物足りなくなってしまいます。
再訪で6500円のコースに挑戦。〆のカレーまで10皿以上のコースは、この店の味付けに抵抗の無い人以外、つまり本物の出汁を知っている人にはやはりおススメできません。ある日の17時頃、店先で今度は発泡スチール箱の山積みを目撃しました。共同配送で運ばれた魚類だと思うのですが、これを見て客がネガティヴに感じることがわからないのか、「出汁の素」放置といい、リスク管理に甘い店であります。

2007年01月20日

ただの居酒屋料理を絶賛するな、銀座 こびき

勘違いは料理人に限ったことではありません。たまにマスコミに露出する古川修氏もしかり。日本酒、蕎麦、和食を極め、そこらのプロより美味しい料理が造れると自慢する思い込みの激しい年配の「副業ヨイショライター」で、東大工学部を卒業し、ホンダに勤めて芝浦工業大学の教授に就任した自称食通であります。鱸や鯛、若布を扱う村公一氏を日本一の漁師と煽り、西崎ファームの鴨、秋鹿や宗玄といった日本酒の宣伝文句を何の検証もなく垂れ流しまくる「癒着ライター」でもあります。私も理工系を修了しメーカーに勤めていた経歴があるので断言できるのですが、理工系の先生や学生、そしてメーカーは上から下まで世に言うグルメ、食に拘る外食好きは皆無に近い。周りは素人同然ですから、誰でもちょっと外食巡りをして薀蓄を語れば「グルメ」と評判になるのです。いわゆる「井の中の蛙」状態なのですが、教授になって「先生」と祭り上げられた古川氏が、経験の浅さを自覚せずに普通レベルの店や食材を読者に薦めるからその罪は重いというもの。この「銀座 こびき」も不自然に絶賛していたのでその検証に訪問しました。
彼が食べたものと同じ料理に挑戦。天才漁師の鱸は熟成しすぎでパサパサ。旨みの抜けた〆物みたい。後を引く味わいという子持ち鮎の有馬煮は、甘露煮と粉山椒の濃い味付けに助けられただけ。マツタケフライも口中に溢れる香りなんかありません。恐らく丹波物などと比較したことがないのでしょう。すべてが居酒屋料理の範疇ですから傑出するものなし。〆に絶賛の握り寿司も食べましたが、生姜は甘すぎ、酢飯も駄目でバランス非常に悪し。魚の質が並で仕事の腕もありませんから、街場の寿司屋にも劣るものでした。この店には彼が宣伝しまくっている「宗玄」と言う日本酒があるのですが、この会社はタレントの「魚住りえ」とのコラボの日本酒を売り出しているのですから、その志は知れているというもの。こんな浮ついた醸造元が素晴らしい酒を提供できるのでしょうか。中庸なタネ質を中庸な調理レベルで提供する「こびき」。客の食べ具合に関係なく次々と料理を持ってくるのでテーブルは皿で溢れかえります。客の事を考えないこんな店、1万円前後払って、わざわざ行く必要はありません。

2006年12月30日

オー グー ドの賄い料理か、minobi

私は「オー グー ド ジュール」系の店に関して肯定的に書いてきました。本店、日本橋店のフレンチ2店は微妙にテイストを変えた戦術が成功し今でも評判は良いはず。しかし、「東京カレンダー」で新たに3店目が芝にでると知り目が点になったのです。オーグードとしては3軒目となるこの店は、フレンチのテイストを持たせた「和食屋」とのこと。しかもカウンター主体の構成だというのです。なぜ目先を変えて和食を出すのか。なぜ直ぐ新店をだしたのか。調子に乗った、舞い上がった、更なる利益追求に乗り出した、出資者である投資組合の利益配分要求が強まった、などの理由が考えられます。しかし廉価な居酒屋やジンギスカンが凌ぎを削る和食の激戦区である芝の地で、埋没しないものなのか、訪問しての私の結論は「こりゃ駄目だ」となりました。
造り置きの小鉢料理が600円ほど、前菜が1000〜2000円、肉などのおかず系が2千円以上とこの辺りではかなり強気の値付け。しかも、一皿のポーションが大きくないので、単品だと3皿は必要で軽く5千円超えてしまいます。酒類も高い。生ビールが800円、ワインはACボルドーが5千円でしたが、その他は1万円以上が主体と高いものしかありません。
肝心の料理ですが、和食の経験があるシェフが造ったフレンチテイストの居酒屋料理はただの「味濃すぎ」。お浸し、筍のフリットの衣、炊き合わせは表面的な強い味つけというか大味。スペシャリテの「いっちゃんハンバーグ」はチーズを乗せてトマトソースがかかっているだけの物。〆の鴨丼(2千円)はタレ濃すぎて正にマスヒロさん好み。あまりにくどい。一皿の量が少ないのを自覚しているようで、ご飯物以外に3皿すすめる方針ですが、土鍋ご飯(1.5合)が900円と二人分はありますから、一人客には向いていません。最終的な支払いは、値付けが高いワインを飲んで2万円近くになりました。ネットのレビューはサクラたちの高評価が目立ちますが、この下町的味付けというか、マスヒロさん好みのシツコイ味と量の少ない料理に値付けの高いワインでは、まともな舌の客のリピートは難しい。オーグードは何を勘違いしたのか、このコンセプトでの出店はあきらかに間違いです。

2006年12月23日

あまりに高すぎる創作家庭料理店、割烹 室井

「ダンチュー11月号」を読まなければ、私は無駄な出費をすることはなかったでしょう。「おいしい秋がてんこ盛り」と題する特集の中、天然キノコを出す有名割烹との触れ込みを信じて思わず飛び込んだ友里が甘かった。
10席ほどのカウンターに個室が数部屋。着席して期待は一気に萎んでしまいました。各席には大きい灰皿が常備。カウンター客はオミズを連れた見え見えの同伴カップルやマイナーな業界人の男グループばかり。当然タバコプカプカで、紫煙は店内に充満しています。大笊に盛られたキノコ達もさぞやタバコの煙で燻し続けられ苦しい思いをしていることでしょう。繊細なキノコをウリにする店が、喫煙を許していいものなのか、キノコ料理屋失格であります。
客層が客層ですから、料理はコースオンリー。1万5千円からありますが、一見強面の主人は「お任せコース」(2万5千円)を強く勧めてきます。キノコのお任せは18皿と多皿でしたが、まったく印象に残りません。花びら茸の土瓶蒸、湯葉のキノコ餡かけ、クリタケ甘焚き、紫シメジの白和えのほか、キノコの酢の物、醤油つけ、ソテーなどいずれも家庭料理の範疇に近い。ほうれん草のお浸し、オカラまで出てきますから、割烹というより街場の小料理屋か居酒屋か。お椀といえるものもなく、造りもフグぶつ切りやカワハギ、揚げ物は牡蠣の天麩羅と牛カツで、キノコのソテーのソースをご飯にかけ、〆はキノコのリゾットやパスタですから、まったく和食の真髄に触れることなく終わってしまいます。まったく印象に残らない創作家庭料理。これでビールに日本酒を数合飲んで一人3万5千円近くになるのですから驚きです。何かの間違いかと後日キノコを使わないお任せコースに再度チャレンジしましたが、やはり高級割烹とは程遠く、船場の丁稚の賄い料理だった「船場汁」、白菜のクリーム煮、キンピラに〆はカレーまで登場してしまいました。小鍋料理がまずまずでしたが、その他はタラ白子の天麩羅、生牡蠣、鮑のバター焼きと業界人好みの居酒屋料理。会計はやはり3万数千円と一著前に高額割烹並みの請求に変わりはありませんでした。同伴カップル、業界人と領収書を受け取る経費族専門の高いだけの創作家庭料理店、こんな客層の店へわざわざ行く必要はありません。

量、食材を考えるとこの支払いは驚異的、一即夛

4年前にオープンした西麻布1丁目の雑居ビル2階、主人と奥さんが切り盛りする10数席のカウンターだけの小さな和食屋です。ネットのブログでCPの良さを知り訪問した友里ですが、支払いでこれほど驚いた店は初めてでした。食べた食材、料理や品数を考えるとかなりに安いのです。「完全禁煙」に徹している点も評価できます。「業界人」が出没する地域でありますが、紫煙を周囲にばら撒く彼らの迷惑行為にあわない店でもあるのです。
カウンタートップには、筑前煮など造り置きの大皿料理が並び、端には干し魚が吊るしてある小料理屋的な店内ですがメニューはありません。着席するとまずはツマミ的な小皿がいくつか出てきます。牛タタキ、枝豆、鯨ベーコン、とうもろこしなど。その日によってアイテムは変わりますが、ビールのお伴にはドンぴしゃり。その後造りが供されます。カツオ、鯛、カワハギ、鮪など種類も多く、質は上とは言えませんがそこらの高額居酒屋と遜色ない、いやそれ以上かも。勿論、本山葵が添えられております。ここまでは定番と言うかお任せ。そして焼き物、煮物、蒸し物、揚げ物などを客が選んで〆のご飯物へと流れます。ノドグロ(赤ムツ)、黒ムツ、柳カレイ、キンキ、アマダイなど魚の種類は豊富。特に東京では見かけないグジ(甘鯛)の塩焼きは美味しかった。同じくノドクロなどムツ類の干し物はやや塩が緩いと感じましたがまずまず。キンキの煮つけ、柳カレイもボリューム満点でした。まだお腹に余裕のある方は、牡蠣フライ、海老フライなどの揚げ物を、それでも未だ食べられる方には牛ステーキが待機しております。和牛か国産牛か輸入牛かを確認するのは野暮というもの。量も充分でそれなりに美味しい肉でありました。そして〆にはイクラ丼も控えております。数種の小料理、造り、焼き物、揚げ物、150グラムのステーキ、丼物をフルに食べ、ビール2杯に日本酒4合で支払いは何と9千円前後。倍の請求を覚悟していた私は腰を抜かしそうになりました。何かの間違いかと再度訪問しましたが、支払額は似たようなもの。「田中屋」、「シンスケ」、「玉久」などの高額居酒屋と同じ支払いで、より高級食材を味良くお腹一杯楽しめる「一即夛」。家庭料理の延長線上の料理ではありますが、おススメです。

2006年12月17日

立地の妙だけの店ではないが・・・、よねやま

正式店名は「津之守坂 よねやま」というコース主体の小さな割烹風料理屋です。曙橋駅から徒歩で10分。こんな所に和食屋があるのかといった立地の意外性は、早稲田の過大評価店「松下」と同じく下駄履き評価されているだろうと私は予想していました。「霞町 すゑとみ」と共に和食の人気店としてマスコミの露出も多い。特に犬養裕美子氏、浅妻千映子氏などヨイショ一辺倒で料理人とお友達になりたがるライター達が絶賛しているのもネガティヴなイメージを与えてくれます。
店内はカウンター5席にテーブル1卓と個室の小さなキャパ。遅い時刻では単品料理も出しますが主体は1万円のコース料理。しかし最近は1万5千円コースにも手を出して来ました。「すゑとみ」もそうですが、1万円前後でCP良いコース料理を提供していると、必ずより高いコースを再設定してくるものです。これは常連を気取る客達が、もっと良い食材を使った高いコースを食べたい、それでも客は来るよ、と耳元でささやく結果であります。かくしてその悪魔の囁きに従った店は、他店とのCP差や特徴がなくなり加熱人気が収まることになりがちです。都心に1万5千円コースを出す和食屋は珍しくありません。京都ではもっと安い優良店も多いはず。傑出した才能がない限り、身の丈にあった地道な運営が長く生き延びる道なのですが、客やマスコミのヨイショに我を忘れてしまうようです。
1万円コースは小さな3皿の突き出し、お椀、造りからはじまり、焼き物、空豆、ブリ大根と言った地味な小料理が続いて必ずでるという小鍋料理の後、手打ち蕎麦で〆られます。この日の刺身はイカ、ウニ、鯛、椀ダネはハマグリ、焼き物は鰆の西京焼き、小鍋は鯛でした。1万円としては、出汁、食材の質共まずまずで量もありCP悪くありません。しかし5千円アップしたコースを頼んだとしたらどうなるか。当然期待値は上がるわけでして、単に食材を上げ質を上げるだけでよいものなのか。出汁を含む調理の腕も上のレベルを求められるということを料理人たちに認識してほしいものです。立地の妙だけではなく、1万円なら価格に見合ったCP良い料理を出していますが、間違っても常連の甘い囁きに乗って、銀座など都心へ打って出ることも考えてはいけません。

2006年11月13日

あの店は今・・・、Ryo-ri Genten

オープンして2年近く、しかし一向に浮上の気配が見えない「Genten」。山本益博氏がプロデュースした事で当初はかなりマスコミに取り上げられました。日本の「エル ブジ」と持て囃された小皿の創作和食。マスヒロさんは定期的に雑誌で煽り続けていますが、客がまったく押し寄せません。秋田は角館で小さいながら全国区的人気だった「一行樹」を引き払って銀座へ勝負に出た料理人と、マスヒロサンの紹介でスポンサーになったと思われる「genten」ブランドのバッグを作っている会社「クイーポ」は、「こんなはずではなかった」と頭を抱えているでしょう。人気店メーカーを気取ってのいい加減なプロデュースをしたマスヒロさんの罪は大きい。立地の妙で実力以上に評価されてその気になった純粋な料理人が、自分の名前にちなんだ店名を捨て、バッグの販促の為に奇天烈な店名を受け入れて退路を断ってのオープンでもなぜ客が入らないのか。それは、価格の割に美味しくなく量が少ない。これに尽きるのです。ホールスタッフの男性が歳取り過ぎ、外から丸見えで高級感ない、中からも紅虎餃子房の看板やスタバが見えて興ざめだからドレープでもかけろ、といった瑣末な提案はさておき、早急に料理の改善が必要です。久々に確認に訪れてその必要性を強く感じました。
1万3千円のコースはデザートを除くと小ポーションでわずか8皿。本家の「エル ブジ」は1万5千円超ですが、30皿は出ますからCP感は雲泥の差です。赤座海老の湯葉揚げは想定内の調理。醤油のムースやジュレに浸かったざる豆腐はあまりに少量。マツタケのポタージュ、新栗と秋野菜、黒ムツの照り焼きは悪くないですが量が足りない。鴨と短角牛も3切れです。未だ出しているイブリガッコのミルフィーユにスープに浸った秋田こまちのキリタンポで〆ても、まったくお腹が膨れません。エルブジと似ているのは少ないポーションだけ。皿数少なく、醤油のムースや粉末アイスはありますが、意外性ある創作料理も少なくなり面白みがなくなりました。シェフのモチベーションが落ちてしまったのか、可もなく不可もない想定内の料理。これで1万3千円では客が入るはずがありません。同じく集客に苦しむラ・ソース古賀でカレーを食べ直してやっと満腹になりました。

ここまで鮎尽くしに徹する必要があるのか、新ばし 鮎正

店名の通り島根の天然鮎が一番のウリですが、鮎の時期以外は天然スッポン、青首鴨、アンコウ、フグ、松葉蟹などの料理を出して通年営業しております。やはり初訪問は初夏から秋にかけての鮎料理が良いでしょう。カウンターと小上がり、そしてグループ対応の2階と、マスコミに露出していませんが賑わっております。特徴は男性客だけグループの多さ。接待で使いやすいのでしょう。
1万5千円のコースを食べましたが、すべての料理が「鮎絡み」であります。先付けの鮎寿司からお椀は鮎と冬瓜のすまし汁。小さい焼鮎は結構イケます。造りは鮎の洗い。そして鮎の塩焼き、うるか、うるか茄子の他、煮浸し、酢の物も鮎で最後は鮎ご飯で〆となります。正に「鮎尽くし」、ここまで鮎攻撃が続きますと有り難味が半減すると言うものです。すべての鮎が天然物ならこの価格設定はかなりお買い得。特にうるか料理とお椀の鮎を一度はお試しあれ。京料理ではメインを張る塩焼きは期待が大きかっただけに、ちょっと不満が残りました。鮎の大きさに比べて焼きが甘い。大きすぎると感じる先入観からか香りにも欠け、丸ごと食べられるとのことでしたが、頭部分が少し口に残りました。次に1時間かけて炙ると言う名物「炙り鮎」を試しました。頭を真下にして遠火の炭火で炙る料理は、大きな子持ち鮎を冷凍して10月末まで供するそうで、ほとんどの客が頼んでいます。子がびっしり詰まってかなり大きな鮎ですが、これも思ったより表面に火が入っているようには見えない。青柳系の鮎自身の脂で揚げられたようにしっかり焼き上げる鮎が好きな私には物足りなく感じました。紙越しに手掴みで頭から食べるこの鮎、身がややパサパサに感じたのは炙り方の問題か、冷凍だという先入観からか。話のタネに試してもいいですが、好き嫌いが別れるでしょう。
養殖物しかないと思っていたスッポン鍋。コースは1万7千円と「天然」の看板では安く感じます。湯引いた肝、心臓、ムネ肉の刺身は旨い。1時間半かけるという鍋は、濃縮感はないが肉自体にも自然な旨みを感じ、雑炊を食べてお腹一杯になりました。その他6300円コースであるアンコウや青首鴨もチャレンジしてみたいアイテム。傑出したものないですが、CPは悪くない店です。

京料理ではないただの宴会料理、木乃婦

創業70周年のこの老舗は、三代目若主人の戦略が当たったようでTVをはじめマスコミの露出で有名であります。京都を代表する若手料理人として、日本料理を勉強したいフランスの料理人を教えている番組がありました。しかし、この店を「京料理」の代表と海外に示してしまって良いものか。山本益博氏もべた褒めしている名物料理「フカヒレ鍋」を食しに訪れた友里の結論は、ただの「宴会料理屋」でした。
ビルですが一見料理旅館に見える外観。すべて個室対応で、2名から最大100名まで収容できます。この大宴会対応だけで店のレベルの店かわかると言うもの。大量生産の店にうまいものなし、これ定説。各種弁当、会席料理(自ら『懐石』ではなく宴会料理を意味する『会席』としている)の他、鍋コース、出前寿司、仕出し、出張料理までこなしてしまう懐の深さ。より利益を追求したいのか「披露宴」も手がけています。和食屋がケーキカットに対応するのはまだ許せるとして、「カラオケ無料」のサービスはいかがなものか。カラオケを準備している店が、まともな「京料理」を提供すると考える人は居ないでしょう。個室対応、下足番、凝ったHPと固定費をかけ、サービス料が15%ですから、CP良い料理を出せるはずがないのです。
昼にフカヒレ鍋の入ったコースは1万2千円。2階は宴会なのかドンチャン騒ぎで、個室といってもゆっくり食事を楽しむ雰囲気ではありません。
先付けにはウリの一つである「トロ握り」が2貫。脂だけの味わいない質良くない物。仕入れで不利な京都でなぜ鮪を扱うのか。なまこ、焼き魚、サーモンもそこらの旅館の宴会料理と大差はありませんでした。クラッシュアイスの乗せた鯛、甘エビ、紋甲イカの造り。1万円以上のコースで紋甲に甘エビはCP悪すぎです。スペシャリテのフカヒレ鍋ですが、マスコミに載る写真とはまったく別物。フカヒレがかなり小さく、替わりに胡麻豆腐がでかすぎ。利尻昆布、金華ハム、地鶏でとったと言うスープは不自然に甘すぎです。マスヒロさん、どこが「渾然一体」なのか。〆の鯛飯もまったく凡庸でした。若主人は東京・吉兆で修業したとのことですが、その面影はまったく見られませんでした。「大箱店」に旨いものなし。定説です。

2006年10月29日

若手料理人の中でも秀逸な京料理、祇園 花霞

京都ブームは相変わらず続いているようです。秋になると、「京都特集」をうつ雑誌が乱発され、数多くの京料理店が紹介されています。ミーハーな私も「花霞」をそのような雑誌で知りました。昼間から女性観光客で一杯の割に美味しくない自称京料理店が多い中、この店は当時客が入っていなかったのですが、昼に訪れてその良さを確認、日をおかず夜再訪したくらい印象的な店でありました。後に板長は「祇園 丸山」系列で修業したと判明。高いがしっかりした料理を出す店出身と知り納得したものです。
四条の「祇園ホテル」向かいの路地を上がった左側、CP悪い有名店「千ひろ」のチョイ手前にあるカウンター主体の店。料理人と女性の二人だけで切り盛りしております。
昼夜平日訪問しましたが、満席ではありません。しかし、電話問合せや飛び込み客を断っていましたから、前日までの予約が必要なようです。
昼は5千円から1万円までのコース。夜は1万円から2万円くらい。決して安い店ではありませんが、CPは抜群で支払い後満足して店を後にすることができるでしょう。
寒い時期はまず生姜湯で体を温めてから綺麗に盛り付けた先付けが登場。見た目だけでなく中身もうまい。そしてお椀。和食は出汁が命、よってお椀は華というのは誰でも認めることだと思っていたのですが、料理店評価業界の異端児、J.C.オカザワ氏は、和食は刺身だけと勘違いしてもっぱら鮨屋で和食を代用。出汁やお椀の重要性を認めない、いや理解できない可哀想な人なのですが、彼にもぜひ味わっていただきたいのがこの店のお椀です。椀タネに関係なく皆美味しいのは腕が良いから。そして、造りの鯛の質も悪くはない。出汁が良いから当然炊き合せも旨い。そしてその野菜も拘っているからか美味しいのです。夜の訪問では、ちょっと気張って2万円コースをオーダーしてしまいましたが、丹波だと記憶していますイノシシなど凝った食材で、支払いに充分見合うCPの良さを感じました。
水が違うから出汁がより美味しいのか、読者の皆さんには、ぜひ京都観光の折にはこの「花霞」で京料理の奥の深さを味わっていただきたい。最近はかなり混みあっていると聞きますので、早めの予約をおススメします。

2006年10月06日

大阪割烹の限界か、本店浜作

東京で最初のカウンター割烹、政治家や財界人御用達の店、と聞いて期待していたのですが、店内は居酒屋のような喧騒さです。テーブルでは雄たけびを上げる初老5人組。カウンターでは周囲の目や耳を気にせず妙齢のキャリア女性を口説き続ける年配常連客。JFKだ、ニュージャージーだと海外慣れを気取っているのですが、冷静な他人が聞くと滑稽なだけ。どうやらこの店で自腹の客を見つけるのは難しいようです。10月下旬に出版予定の共著で取り上げようと訪れたのは初夏の頃。良く言えば老舗、はっきり言えば賞味期限切れの「今浦島」的な店が大好きな共著相手のJ.C.オカザワ氏の推薦だったので、料理は元々期待していなかったのですが、客層や雰囲気がこれほどとは想定外でした。テーブルには最初から灰皿が用意されている、経費族御用達の居酒屋風割烹料理屋であります。
先付けの滝川豆腐。接客係りのお婆さんに「全部飲んで」と言われましたが出汁が濃すぎて無理。辛目の梅肉に合わせる鱧の落しは凡庸、鰈の刺身は熟成感が出すぎでした。大き過ぎる蛤の「はますい」は質がよくないからか出汁も大味で美味しくない。沢煮椀はこの店のウリモノらしくかなりのオーダーを受けていましたが、追廻が赤いキャップの瓶入りの粉を仕上げに振り掛けておりました。おいおい、もしかしてそれは「味塩こしょう」ではないのか。客前でアミノ酸系調味料に見られやすいものを堂々と使っている神経に驚きました。厨房内にはケチャップも置いてありましたが、あれは賄い食限定なのだろうかとの疑問も沸いてきます。オープンキッチンなのですから細心の注意を払っていただきたい。太田川の天然鮎の塩焼きは、業務用のガス焼物器の限界か焼き方の腕が悪いのか、蒸し焼きに近いものでした。せっかくの天然鮎が台無し。もう一つのウリである鰈の煮下ろし。から揚げした鰈に出汁とオロシ、そしてレモンをかけた一品です。造りよりも質を落としているのか身に旨みを感じず、出汁はレモン負けしているようで酸味が立ちすぎでした。以前は「浜作」を名乗る店が銀座に3店ありましたがいつの間にか淘汰されこの1店だけ。踏みとどまっているようですが、これが大阪割烹の限界なのではないでしょうか。一人当たり2万数千円の支払いを考えると、京料理と比べるのは酷かもしれませんが、同じスタイルの店、例えば「阪川」とは雲泥の差の食後感。高級和食を得意としないオカザワ氏も、私の評価を気にしたのか、新著で取り上げることを断念した次第です。
最後に。
日刊ゲンダイにこの記事を掲載後、本店浜作から以下のような連絡が入ったそうです。
「本店浜作では、化学調味料は一切使っておりません。赤いキャップの中のものは、「味塩こしょう」ではなく「胡椒」であります」
私は造っているところを見ただけで味わっていないので味塩が入っているかわからなかったのですが、店が違うと言うので間違いないでしょう。ただ、本文中にも書きましたが、ちゃんとした胡椒であるならば、誤解を受ける容器に入れることをしないほうがいいと思います。味塩を他の容器に詰め替えて使用を隠すならわかりますが、わざわざ誤解を受ける容器を使うのは意味がないからです。