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2007年10月27日

あの店は今・・・、銀座 奈可久

J.C.オカザワが褒めている鮨屋の中で数少ない当りの店と確認し再訪もしていたのですが、この夏、鮨屋の激戦区として知られる金春通り8丁目のビルに移転してきました。近辺には実力はさておき日本一有名な「久兵衛」はじめ、「小笹寿し」、「くわ野」、「青空」と友里も薦める人気店がひしめいています。地代が上がり、果たして以前の食後感を得ることが出来るかどうか、この秋口に友里は訪問しました。
飲食専門ビルの6階、カウンターは8席程ながらテーブルに2つの小上がりと、かなり大箱になっています。2番手の他若い衆、そして女性とスタッフ陣容も倍増し、あの氷柱も立派になっておりました。かなり固定費がアップしたのは一目瞭然、CP悪化を心配しながらツマミからお任せが始まりました。
白魚、カワハギ、海老味噌、トリガイなど高額店で使われるツマミが出てきてビックリ。隣では生牡蠣まででていました。煮物や鮨タネを使っていた以前よりかなりグレードアップと言うか見栄を張ったツマミタネの品揃えであります。良く言えば高級鮨屋の仲間入りですが、ある意味特徴だった「地味さ」がなくなり「高額鮨屋」との差がなくなってしまって少し残念。蛸の桜煮など相変わらず美味しいので、見映えが良くなく仕込みの割に高額請求できないツマミにもっと力を入れていただきたいものです。
握りでは酢飯の酢が少し強くなったような気がしますが充分許容範囲。強めに〆たコハダや白身によくマッチしております。鯖、中トロも良く、この時期難しい赤身も悪くはなかった。気に入っているオミヤの太巻きは2番手が造っていましたが、穴子や玉子がドーンと入っており、やや味濃くなっていましたが相変わらず美味しかった。
気になる支払いは、結構飲んで一人2万数千円。この立地と陣容、そしてツマミの充実では数千円のアップは仕方がないかもしれません。最近の傾向なのか、25時過ぎまで営業しているようで、22時過ぎはフリの客を狙って回転させる方針だとか。相変わらず謙虚な主人の接客は一人客でもゆっくり楽しめることでしょう。このまま勘違いせず真っ当に営業していただくことを願いたい。近辺で「小笹寿し」、「青空」と並んで再訪したい鮨屋が増えて選択に困ることになりました。

居心地を犠牲にしてまで行くべき店か、四季ぼう坊

新橋赤レンガ通りで見つけたビジネス街の中国料理店、四季ぼう坊。店前には雑誌の掲載ページをこれでもかと張り出しています。こんな「客釣り」をしている店に旨いものなし、が友里の定説なのですが、中国料理に造詣が深いと言われる勝見洋一氏までが褒めている記事を見て、私は興味を持ちました。ネット検索すると称賛の書き込みの多いこと。「どっちの料理ショー」にも出演したようで、あの大味好きの「さとなお」氏まで褒めていたのが気になりましたが翌日ランチに飛び込んだのです。
うーん、なんと圧迫感ある店なのか。油がこびりついて滑る床、カウンターは清掃を考えて機能だけを重視したステンレストップ、と正にビジネス街の「チョイ食べ中華」の趣でありました。ランチは800円前後で、中国野菜炒めは850円を考えるとこんなものかと自分を納得させるしかない。夜の初訪問で衝撃を受けたという「さとなお」氏の評価に悪い予感を持ちつつ予約を入れたのは言うまでもありません。
夜の予約グループは2階の座敷テーブルへ詰め込まれます。狭さは覚悟していましたが予想以上に汚い。卓上の辛子は黒く変色していて使う気がしなかった。
メニューは全網羅的で豊富、フカヒレなど高級食材を除いて1000円前後と値付けはリーズナブルでした。我々は5000円コースに2000円の飲み放題を頼みました。前菜盛合わせのクラゲ、豚耳、蒸鶏などは量も多いが「味濃すぎ」で食べ切れません。「さとなお」氏が絶賛したのはこの味付けだからと納得。牛とブロッコリーの炒め物、揚げ物の餡かけもこの価格帯なら仕方ない調味料の添加で想定内のお味。麻婆豆腐は申し訳程度の花椒と味噌味だけで豆板醤の深みなく辣、麻が物足りない。土鍋はガス臭く、魚香茄子は甘いだけで酸味がなく、これでは学生街の中華と変わらないではないか。甕出し紹興酒もヘタっていて支払いは7000円強。これなら同じ街場の佇まいで同価格帯の「四川一貫」や「龍水楼」の方がはるかに良い食後感であります。各界有名人の絶賛に惑わされて夜に7000円以上も払いましたが、ランチがこの店の上手な使用法だと考えます。しかし、勝見さんや「さとなお」さんの舌、友里には理解不能であります。

2007年10月20日

店構えと価格がミスマッチ、東京バルバリ


ネットで評判の宝町駅近くの「東京バルバリ」。店構えや内装は居酒屋、支払額は高額ビストロ、そして肝心の料理は中途半端と食後感は良くありませんでした。ネットの書き込みから、自称農産物流通業者「やまけん」さんの絶賛ブログに釣られている人が多いことがわかります。かなりの宣伝効果があったようです。
1階はカウンター主体、2階はグループ対応のテーブル席で、どの卓にも灰皿が常備されているのを見て、食後感への期待は薄れました。
今回の訪問の主目的は、その店名にもなっている西崎ファームの「バルバリー鴨」。ネット販売もやっている生産量が多い鴨だと思うのですが、特定ブロガーたちの煽り宣伝がしつこいのでその検証です。しかし、初っ端から肩すかし、なんと、バルバリ鴨はツマミの串しかなく、「やまけん」さんが絶賛していたメインは品切れでした。前菜は1200円以下ながら、メインのアグー豚、子羊、短角牛、仔鳩は3000円前後と値付けはそこらのフレンチ顔負けの価格で、雰囲気とのあまりの乖離に驚きです。
前菜は食材の味を隠すほど加工し過ぎが目立ちました。オマールのサラダにカレー風味、水茄子には甘辛味、ウニと冬瓜に温玉と食材の質を問わない味付け調理でありました。所詮居酒屋と言ってしまえばそれまでですが、「ジャイアンシェフ」と称されている人の調理と考えるといかがなものか。
アグ―豚、短角牛などメインはそれなりでしたが、この価格の食材ならどこで調理しても大差がつかないレベル。ランチでも評判というシェフカレー、ドゥミグラスが入っているだけの黒カレーですが、甘みがあるだけでどうってことない。
居酒屋なのに日本酒が少ないのも疑問。わずか3種しかリストになく、そのうち1種が品切れでした。その反面、焼酎の品揃えが多いのは、日本酒より利益率を高く設定できるからなのでしょうか。
料理は和風テイストではなく欧風に仕上げておりますが、その完成度は価格を考えると低い。居酒屋がホームグランドの人と違って、ブラッスリーやビストロがメインの客には物足りない調理の店と言えるでしょう。日本酒が少ないので安めのワインを頼んで一人1万円超。予想通りCP悪く、品切れのバルバリ鴨を食べる為の再訪を諦めました。

バスク料理ではなくただの味濃いビストロ、ルル

ネットではかなり評判の広尾(地番は恵比寿)にある「ラ・ピッチョリー・ ドゥ・ルル」。19時から27時まで営業のピッチョリー(バスク地方の一杯飲み屋)で、フレンチ「シェ・トモ」の2号店であります。「ル・マエストロ ポール・ボキューズ東京」も任されていた市川知志シェフが関係するバスク料理店とネットで知り、期待して予約の電話を入れました。
クロスがなくテーブル含めて木がむき出しの内装にBGMはアコーディオンとかなりのディープ感。料理は2枚の黒板に定番とその日のお勧めが列記され、グラスワインは白赤とも10種ほど用意されており、ますます期待が膨らみます。前菜はブーダンノワールやラタトゥユ、豚足ゼリー寄せなどが1000円前後、メインはクネル(1350円)、シュークルート(1900円)、カスレ(2830円)と好きな料理が並んでいるのも嬉しい。と、ここで疑問が生じたのです。おいおい、俗にいうビストロ料理ばかりで厳密な「バスク料理」らしきものが見当たらないではないか。
調理スタッフが少ないのか皿出しは遅いですが、シェアを前提に、フォークとナイフが卓上に豊富にあり、取り皿が都度サービスされるのは評価できます。前菜が小ポーションなので支払を考えなければ多くの料理にチャレンジできるのも嬉しい。しかし肝心の料理の味は疑問な皿が続きました。ビストロ料理はワイルドというかしっかりした味付けが基本でしょうが、あまりにしつこい味の料理が多く、食べ続けていくとつらくなるのです。好きなリエットも進みません。ラタトゥユ、オムレツも後味がつらい。シュークルートもしかり。カスレはスープが多く味も濃すぎるので鴨コンフィの旨みを打ち消しています。ハモンイベリコも小さい欠片でしたから部位が悪かったのか。反面、ブーダンノワールやクネル、ポテトグラタンは特徴がなかった。
うーん、全体に必要以上に舌に残るというか、まるで業務用の出汁や調味料を使用しているかのような食後感でありました。店内は若い客ばかりでしたからこの味付けでいいのかもしれませんが、もう少し味に深みが欲しいものです。
6000円前後のフランス南西地方のワインを飲んで一人1万円突破。確認のため再訪しましたが、食後感は変わりません。

2007年10月13日

雰囲気だけで支払が高すぎる、天孝

天婦羅の名店と巷で評判なのがこの神楽坂の「天孝」。30年以上続いている老舗だそうで、本館以外に別館もあり繁盛しているようです。
本通りからちょっと脇に入った路地に面した民家風な佇まい。銀座や麻布と違ってタイムスリップしたかのような路地は非常に風情があります。格子戸を開け小さな庭を見ながら石畳を歩き玄関を入ると左手に6席ほどのカウンターの部屋が、2階には座敷もあるようで、民家を増改築したかのような店内は正にレトロ。「3丁目の夕日」といった感じでしょうか。
カウンターには灰皿が置いてあり喫煙の客の多さがうかがわれます。レモンの搾り汁、塩、天汁が既にセットされているのも意外。席間隔が狭いので圧迫感もあります。若主人だという揚げ手が登場して、1万7000円コースが始まりました。
まずは刺身としてサイマキが2尾。天婦羅と同じタネを刺身で食べるとは思いませんでした。高額店ですから違うタネを用意してもらいたかった。
天婦羅はサイマキが4尾と数はまずまず。綿実油と胡麻油のブレンドによる軽めの天婦羅と聞いていましたが、結構衣が厚い。揚げ物の途中で海老ミソ、ジャコなどのツマミがでて酒のみにはありがたいですが、揚げ物は烏賊、野菜類、キス、子柱海苔巻、穴子とタネ数は少ないのではないか。サイマキを入れて10種ほどで、あっさり天丼で〆となってしまいました。
天婦羅はいずれも可もなく不可もなし。タネ質、揚げと傑出さを見ることができず、変わりタネもなし。まったく印象に残らないままその日の宴は終わったのです。
サイマキが4尾(刺身を入れると6尾)ありましたが、ビール1に日本酒を数本飲んで2万円突破でこの食後感ではあまりに高すぎるというもの。もう少し魚を増やしていただきたいものです。
若主人は謙虚でしたが、部屋が狭いから声のデカイ他客がいると最悪でせっかくの風情も台無し。煙草や大声は居酒屋だけにしてもらいたい。
楽亭、深町など評判店にはタネ、揚げと及ばずながら請求額だけは負けない「天孝」。天婦羅はフレンチや和食に比べて仕込みに手間がかかりませんから、神楽坂でこの高額は「いい商売」していると言えるでしょう。雰囲気を取ったら、そこらのホテルの高級天婦羅と大差ない食後感と考えます。

2007年10月07日

東京最高には程遠いが、CPは悪くない割烹、岸由

「東京最高の割烹になりつつある」、「天才料理人」とネットで絶賛され、あの居酒屋系がホームグランドであると思われる自称農産物流通業者の「やまけん」さんも絶賛しているのがこの小滝橋の「岸由」であります。
東京で最高の割烹と言うと、食通はまず「京味」、「と村」、「重よし」などを思い浮かべるはず。「幸村」、「小室」を推す人もいるでしょうが、この「岸由」の店名が出ることはまずない。私もノーマークだったので早速HPを見てみると、6000円コースがメインの地元密着型の廉価な和食店でありました。一般に言う高額割烹は最低でも2万円を超えますから使用食材や調味料(昆布や鰹節)の質もまったく異なるはずです。検証の為友里が訪問したのは言うまでもありません。
高田馬場駅からタクシーでワンメーター、カウンター4席に座敷が3つ、主人と女将だけの小さな店です。勿論高い8000円コースを頼みました。
先付けは蛍烏賊、こごみやタラの芽の天婦羅、海鼠腸など。想定通り価格に見合った食材でしたがまずまず。アイナメのお椀は出汁も悪くないのですが、最高質の調味料を使用していませんから限界があります。刺身も食材、質と普通。鱒の煮物、ヤリイカのゴマ味噌焼き、鯛の押し寿司に赤出汁と、真の「東京最高レベルの割烹店」では供されない食材と調理はある意味新鮮でしたが、高額居酒屋との違いが見出せません。
そして問題なのは日本酒。純米無濾過生原酒のような濃い味のラインナップばかりです。酒だけを飲む時に美味しく感じるインパクトある味濃い日本酒が、食中酒としてベストであるとは限りません。コースの総量も少なく、帰路、仲間と新大久保に降りてカムゲタンや石焼ビビンバで空腹を満たした次第です。
確かに料理は、同じ価格帯の「高額居酒屋」と比べると調理レベルも高く頭一つ抜けています。しかし「和食」と考えると、真の東京最高レベルの割烹店と比べるのが可哀そう。使用食材や調味料が根本的に違いますから、昔の木のラケットを持った杉山愛が最新のラケットのシャラポワと戦うようなものです。例え天才であっても(違うと思います)、この価格では比較自体が無駄というものです。居酒屋レベルに慣れ切った人たちの「褒め殺し」、岸由主人も迷惑なのではないでしょうか。

確かに握りは沈んだけれど・・・、はしぐち

誰が言い出したか「沈む鮨」として鮨好きの間で評判の紀尾井町「鮨 はしぐち」。果たして握りが沈んで良いことがあるのか疑問の友里は、初めて今年訪問しました。
わずか6席のカウンター、主人と女将だけの小さな鮨屋。他の人気店と違い、ショーケースがあるのには驚きました。
まずはツマミからスタートです。生の真子鰈、まずまずの質ですが供された肝醤油で食べると白身の味がわからなくなります。ショーケースにあった殻付き生トリガイの軽い炙りや中トロ、トロの照り焼きもまずまず美味しい。ただ、〆た鰈はここまで昆布の旨みをつける必要があるのか疑問。玉子焼きも標準レベルでした。
そして楽しみだった握り、確かに主人が置いた握り鮨はちょっと沈むように見えます。沈むほど柔らかい握りだということでしょうか。米酢の酢飯はさほど特徴なく口中でほどける感じもしませんが、タネ質を邪魔することなくバランスは良い。ただ握りの手数がかなり多いのが気になりました。また主人の掌の大きいこと。未だかってこれほど大きな手の鮨職人をみたことがありません。カウンターに座り、主人の大きな掌でかなりの秒数握り続けられる握りを見るのはちょっと苦痛であります。握りの技術を語る際、柔らかさ、形状に加えて手数の少なさも大きな要素となります。形成しながらも如何に掌でいじくる時間を少なくするか、東京の名店と言われているのですから、「沈む」より手数の減少に力を入れていただきたいと考えます。
コハダ、カスゴなど塩が緩めで好みが分かれるところですが、この酢飯に相性は悪くはない。ウニ、貝類なども最高レベルとは言えないまでも総合的には標準以上。穴子のツメが甘すぎる、タネ質が少ない、と友里にはドンピシャリな鮨屋ではありませんでしたが、支払額を考えるとその食後感はかなり良かった。その日のタネ数などで支払額がぶれますが、ビールにかなりの日本酒を飲んで平均すると一人2万円数千円です。銀座でこれほど「鮪系」を多く食べると3万円は突破するでしょう。好みが割れる〆物に比べて貝類は誰もが認める美味しさ。寡黙な主人に気がきく女将のサービスと、接待ではなく個人利用には充分満足いく鮨屋であると考えます。キャパがないだけに、利用人数は2名が限界です。