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2007年09月29日

ピエモンテ専門店としては物足りない、グラディスカ

日本人としてイタリアで初めてミシュランの星をとった堀江純一郎氏が「ラ・グラディスカ」をオープンしてきました。ピエモンテのリストランテ「ピステルナ」を1年半足らずで1つ星にしたシェフが西麻布に店を出したと知った友里は直ちに予約を入れたのです。
場所は真面目に一店舗主義を通すフレンチ「ブルギニオン」の隣のビル地下。チャチな門扉をくぐり、狭い階段を降りると入口はなんとガラス戸。テーブル、クロス、カトラリーもまったく高級感なく救いは天井の高さだけ。期待は一瞬落胆に変わったのです。
6800円、8200円のコースは、前菜、パスタがアラカルトから選択できるもののその選択肢は2種のみ。メインも6800円が牛すね肉の煮込みか豚ロースト、8200円が魚か羊と選び甲斐がありません。よって必然的にアラカルトに追い込まれます。
前菜は2000円前後、パスタは2200円以上とやや高めながら、メインが3000円台とトータルでは8000円前後でおさまる価格設定。ただし、ピエモンテ専門店としては前菜にバーニャカウダがなく(アンチョビ・ニンニクソースの温野菜はあった)、パスタでもそれらしき料理は「タヤリン」、「アニョロッティ ダル プリン」(水餃子のようなもの)、「ニョッキ」と3種だけ。メインも牛のバルベーラ煮込みくらいしか見当たりません。
温野菜は想定内ながらまずまず、ホエー馬ラグーのタヤリンはかなりイケます。近辺のピエモンテ料理店の脅威となるでしょう。アニョロッティ ダル プリンも2600円と高いですが悪くはなかった。メインはポーションもあり、特にバルベーラの煮込みは濃厚でその酸味は印象的でした。
しかし問題点はピエモンテの地方色少ないメニューだけではありません。ワインの品ぞろえがプアで値付けも安くありません。オープン直後でオペレーションが不安定なのは仕方ないが、初夏なのにエアコンが緩いのはいかがなものか。ピエモンテの星付きシェフの凱旋店を期待する客には料理やワインの品揃えに不満が残ることでしょう。
イタリアンが増殖続ける東京で生き抜くには、他店との違いをより強調する、つまり地方色濃くしてワインも差別化する必要があると考えます。

2007年09月22日

修業元の次郎より使い勝手やCPが段違い、青空

昼は30分で3万円弱、夜も1時間粘れず4万円近く請求される銀座の「すきやばし 次郎」。主人の小野二郎さんとベッタリの山本益博氏以外、こんな法外な時間単価の鮨屋へリピートする客は経費族かマゾな人しかいないと思うのですが、その3番手が銀座8丁目に「銀座 青空(はるたか)」を出しました。
近辺は「久兵衛」、「小笹寿し」、「くわ野」、「奈可久」、「ほしな」など新旧の人気店がひしめく激戦地。
いずれの店もツマミを充実させているだけに、酒飲みを軽んじる店で修業した高橋青空氏がどのような営業をするか非常に興味がありました。結論から言わせていただくと、修業店の悪い所を修正し、数少ない良い所を維持した食後感の良い鮨屋。
カウンター8席と小上がり1つのキャパに女将、若い衆、そして女性とスタッフ数は充分。雑居ビルの3階ですが思ったより内装も豪華です。
緊張感ない中、ツマミとしてのヒラメ、タコ、〆鯖はまずまずの質。「次郎」ならこれで終わりですが、その後アン肝など酒肴がでてきたのには驚きました。修行店ではありえない。練馬の他店批判で有名な「鮨処 すゞ木」の主人が「次郎の弟子がツマミを習いに通ってきた」という自慢話をしていたのを思い出しました。
ビールとぬる燗でゆっくりツマミを楽しんだ後握りへ移行。ちょっと硬めの煮ハマの他は、赤身、中トロ、トロの3連発にコハダ、大きな茹でエビ、子柱軍艦巻きなど「次郎」とほとんど変わりません。特に仕事をしたタネは同じ。ついこの間まで「次郎」で仕込みをやっており、仕入れルートも同じだから当然か。
握りがやや硬めで好みがわかれるところですが、ツマミ、握り、お酒を楽しんだ2時間超で支払は2万数千円。「次郎」でこれだけ粘ったら軽く倍以上の請求ですから、銀座の他の高額店と比べても決して高くないこの値付けは評価に値します。
主人は傲慢さなく客への態度まずまず、せかさずゆっくり楽しませ支払額も妥当、と「次郎」の悪いところを修正し、タネ、仕事とほとんど違いのない鮨を提供する「青空」。23時半までの営業で何回転かさせていますが、「しみづ」や「あら輝」のような時間制限がないので友里としては銀座の中では再訪したい鮨屋の一つとなりました。今後も、清水氏や荒木氏のような「勘違い」をしないことを切に望みます。

2007年09月15日

安いコースならおススメの創作料理店、ハル ヤマシタ

オープン前、東京ミッドタウンの入店リストでこの店のキャッチを見て私は驚きました。「神戸の異端児シェフが六本木へ」とありましたが、この山下春幸氏、異端児と言われるほど有名なシェフなのか。東京の私の仲間だけでなく関西在住の知人もその存在を知りませんでしたので、早速ネットで調べたところ、ナダバングループとして創作和食のほか居酒屋なども展開している(有)ウォーターマークの代表取締役だったのです。
まずはランチでお試し入店。2500円から6500円までのコースは前菜、スープ、パン、〆のカレー(肉質がコースで異なる)は共通で、メインがオーシャントラウト、イベリコ豚、神戸牛などの違いによるもの。奮発して6500円(神戸牛)を頼みました。
淡路産の玉葱を使ったドレッシングのサラダ、玉葱の甘味がこれほど強いとは驚きです。小芋のスープもかなり濃厚。チリパウダーを入れたマヨネーズ風味のブレッドソースは食通には疑問でしょうが結構パンに塗るとイケます。温めた皿に供された炭火焼の神戸牛もまずまずで、〆のカレーは玉葱たっぷりで美味しい。関西の創作料理というと同じくカレーを出す交詢ビルの「ヨネムラ」を思い浮かべますが、食後感はこちらの完勝、早速その場で夜の予約を入れました。
当時あったオープン記念の5800円コースはお買い得そのもの。(現在は6800円)〆のカレーまで10皿でスープやサラダはランチとかぶりましたが、神戸牛ロール炭火焼、鶏レバー、ボタン海老、イワシ、水茄子、オーシャントラウトの低温ロースト、フォアグラ茶碗蒸し、定番カレーとこの価格なら文句をつけられません。現在は6800円から1万2000円迄の4コースになっていますが、ランチと同じくメインの肉の違いだけです。純血神戸牛、特選神戸牛、イベリコ豚、神戸牛と肉の違いでコース価格が変わりますが、ここでは最低値コースで充分。いや高額なコースにするとせっかくのCPが悪化すると考えます。
創作和食でなぜかオーストラリアワインしかないこと、5000円前後のワインもあり値付けは高くありませんが、グラス
にかなり割高感がある点が問題点であります。
まずは、ランチで安めのコースを試してみてください。

あの店は今・・・、アピシウス

少なくとも15年前までは東京一のフレンチ、いや日本でもトップのフレンチと誰もが認める店だった「アピシウス」。オーナー一族の内紛の影響もあると漏れ聞きますが、「ロオジエ」に大きく引き離されたこの元祖グランメゾンを立て直すため、昨年から大きなテコ入れが行われています。サービス陣の再生として、メートルドテルとシェフソムリエを外部から招聘し、今春内装リニューアルもして巻き返しにでてきたのです。しかし久々に訪問した友里の結論は、「うーん、この程度の改善では『ロオジエ』には到底追いつけない」。
今では珍しいアールヌーボー調の内装は健在、個室へホールを経由しないで入れるようになり個室好きの人には使い勝手が良くなりました。でもこれは個室を有する店の必須条件でありますから遅きに逸したとも言えます。
この店で評価できることは、相変わらずワインの値付けが安いことです。80年代の有名なボルドーやローヌのワインが3万円前後であるのはここくらいではないか。勿論古酒も安く提供しています。ただ、「ロオジエ」で中本ソムリエが惜しげもなく稀少ワインをお任せで提供するスタイルに慣れた客には「アピシウス」の清野ソムリエは物足りないかもしれません。
料理もグランメゾンとしては安い。前菜は5000円前後、メインも5〜6000円でハーフポーション(3500円前後)も用意されています。前菜、メインで1万円前後ですからこの雰囲気ではかなりお得な値付けでありますが、肝心の料理は首をかしげるものが続きました。
前菜はマリネ系が多く偏りを感じます。ギリシャ風野菜がありましたが、これが5000円超はちょっと高すぎでしたが、桜鱒はまずまずのポーション。仔羊は火が入り過ぎ、若鶏は素材の良さが感じないと個々の問題は別にして、全体として料理の創造性を感じず発想が古くなっているのではないか。7割がた埋まったホール客のうち3席が男性客だけの接待客だったことからも、最近のグルメといわれる客層には巻返し策も不発のまま。オープン時スーだった料理人が今のシェフだそうですが、ソムリエやドテルを変える前に、料理人の環境を変えるという選択肢はなかったのか。グランメゾンはシェフの使い捨てが繁栄維持の条件だと友里は考えます。

2007年09月08日

再開発ビルはやっぱりCPが悪かった、カランドリーノ

史上最年少の28歳でミシュラン3つ星シェフになったマッシミリアーノ・アライモ。日本で知名度があるとは思えないのですが、その北イタリアの3つ星「レ カランドレ」の提携店「イル カランドリーノ 東京」が新丸ビルにオープンしてきました。勿論イタリア3つ星店の直営ではなく、イタリア食材などの輸入商社・(株)アークの関連会社が運営しています。
4月のオープン当時は開店と同時に行列が出来ていましたが、数か月で今や空席も目立つようになりました。なぜ勢いが長続きしなかったのか、答えは簡単、「CPが悪すぎる」に尽きるからであります。
昼のランチは1800円から4500円まで。価格帯は普通ですが、内容がプア。1800円はパスタ(これが少量)と食後の飲み物だけ。ドルチェはプラス500円です。3000円でようやくチケッティ(一口タイプの前菜が3種)とドルチェが加わります。予約するには4500円のコース頼まなければならないのですが、チケッティに名物パスタ「カルボナーラ」、そして魚か鶏肉のチョイスとなります。このカルボナーラ、温玉とオイルを使いアニスの香りをつけているだけで量少なくまったく傑出しておりません。若鶏もまったく凡庸。グラスワインなどを飲んで一人1万円近くになりました。
夜はもっとひどい。本店と同じレシピという1万5千円コース。スペシャリテばかりとのことですが、量少ないスカンピのフリットをカバーしているスパゲッティの揚げ物に疑問。蕎麦屋の揚げそばを真似してどうするのか。甲烏賊とジャガイモのピュレはしょっぱ過ぎ、トマトペーストのラビオリはわずか3ケ、サフランリゾットも少量で、メインのイベリコ豚の24Hr低温ローストは、肉の繊維質を消滅させるほど食感を無くしてしまい、旨みも出切って何の食材か判断できなくなっていました。ドルチェに変えて頼んだチーズ4種がその夜で一番満足だったのですから呆れます。スプマンテが1万円などワインの値付けも高く、皿出し速すぎてわずか2時間のディナーが一人2万5千円以上と最悪のCP感でありました。3つ星提携店として話の種に行くのなら、夜は最安値の4500円コースで充分。3つ星というだけで安易に釣られてはいけません。

あの店は今・・・、あら輝

一説には「日本一予約の取りにくい鮨屋」だとか。「東京一の鮨屋」といった絶賛も耳に入ってきます。確かに2回転時間制限入れ替え制営業の夜は、数か月先しか予約が入らないので「日本一行きにくい鮨屋」であることは間違いないでしょうが、肝心の鮨はどうなのか。数年ぶりに訪問した友里の結論は、やっぱりただの立地の妙に後押しされただけの「過大評価鮨屋」でありました。
主人の荒木水都弘氏、鮨好きの新聞人・早瀬圭一氏の著書によると「水都弘」は本名ではなく当て字だとか。タレントでもない鮨職人が当て字を使うというその発想、いやその「勘違い」に驚きです。
カウンターに横一列に並んだ客が供される同じツマミや握りを同時に食べ続ける様は、養鶏場の鶏と大差ないではないか。傍で見ると滑稽なだけです。
完全お任せのコースですが、星鰈、蒸し鮑、馬糞ウニとアイテム立派ながら質はどうってことない。自慢の赤身、中トロ、トロ、蛇腹のマグロ4連発も時期的な問題もありましたが質イマイチ。名物の「チョモランマ」、中トロ部分を3巻分使った大きな手巻きなのですが、そう有難がるものでもありません。中トロさえあれば家でも出来るレベルです。煮ハマ、シンコ、蒸し鮑、ヅケなど江戸前仕事がイマイチなのは師匠と言っている新津氏の負の面を受け継いでいるからか。玉子焼きどころか、白身の〆物や青魚もなく、これで江戸前鮨なのかと大いに疑問。酢飯も米が違うからか、握りの手数が多すぎるからか変にネバネバしていて駄目出しです。
店内は常連客主体で妙にサロン化して絶賛の言葉が飛び交っています。酔いが回ったからか「こんな美味しい鮨は初めてだ」と突っ伏して涙ぐんでいる客もいましたから、一種の洗脳・新興宗教状態に陥っていると考えます。こんなへりくだった客だけを相手にする職人に進歩なし。江戸前仕事が少ない訳です。上野毛という立地の妙による過大評価職人、銀座など激戦地への移店の噂を聞かないのは、このままではまったく通用しないと本人もわかっているからだと思います。最寄駅からタクシー使って一人2万円前後の江戸前仕事の少ないこの自称江戸前鮨。数か月前に予約して遠方から訪れる鮨屋ではないと考えます。