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2007年04月29日

あの店は今、松下

拙著第一巻で「立地の妙に後押しされただけの『過大評価』な和食」と評してから、3年ぶりの訪問。相変わらず料理に傑出さを感じませんでしたが、以前には気づかなかった問題点を把握することができました。
カウンター主体でテーブルと小上がりがある店内。夜は8千円、1万円(以上「コース」と称しています)、1万3千円、1万5千円(以上「お任せ」と称しています)の4種の多皿コース。カウンターのある割烹では職人の仕事を見ながら食べたいものですが、「松下」ではカウンターに座れる客は「お任せ」、つまり1万3千円以上を頼む客に限定しています。常連と一見で席に差をつける店はありますが、支払額というのは儲け主義そのもの。
厨房は主人も含めて6名とこのキャパでは余裕の人員。暇だからか主人は客に「絶品です」、「鮮度が違います」、「後に引きますよ」と暗示を掛けるだけで調理はしていません。ホール側にも女性スタッフが二人いるのですが、この店ではカウンター客に料理の上げ下げをさせます。料理人は料理をカウンター上に置くだけ。客がそれを下へおろし食べ終わったら上へ再び置く。客単価数千円の居酒屋でみる対応を1万円以上の高額和食屋が客に要求するのです。他にもビールが温い、酒の価格を表記していない、造りは切り置いて皿に盛ったまま冷蔵庫で保管している、などが気になる点が多かった。
モンゴ烏賊のフライ、だるま烏賊の焼き物など1万5000円のコースに出す食材なのか。鮮度が自慢で生姜ではなく山葵を溶いたという鯵は、醤油の入れすぎで肝心の鮮度がわかりません。ショッパイ。天然鮎にかかっている蓼酢のようなものは変にトロミがあります。ネギを刻んでいるようですが、それこそ鮮度のいい蓼だけの酢にしてほしかった。オムライス、高額和食の〆に出す料理でしょうか。洋食屋に来たわけでなく、賄いや裏メニューでもあるまいし。
この店は料理学校の就職先として人気があるとネットにありましたが、私に言わせるとここで修業しても和食の王道を学べるとは思えません。単なる味濃い料理を少量多皿で出すだけの早稲田の割烹屋。この味付けは業界人や文化人には向いているかもしれませんが、本当の和食好きの方がわざわざ訪問する店ではないと考えます。

確かに海老は多いが穴子が出ない、七丁目京星

生き残っている店評価本としては最古かもしれない文藝春秋社の「東京いい店うまい店」。その中で昔から最高の評価を受けている天麩羅屋がこの銀座の「京星」です。審査員の平均年齢が高いのか、浦島太郎状態、時代の変化に取り残された店に甘い本ですが、この店も政治家はじめ常連客は年配の方が多く客の世代交代が進んでいないようです。この店から別れた主人の兄がやっている8丁目の「由松」との違いは何か、
価格はやはり高いのか、大きな関心をもって友里は訪問しました。古いビルの割にはこざっぱりした内装、カウンターは8席ほど、ワイン冷蔵庫やワイングラスも完備されています。
お任せで頼んだ最初のタネは海老のすり身入りの小さなパンの揚げ物。そして、噂どおりサイマキでも小さい部類の海老が数多く出てきます。しかも小さいのは海老だけではありません。蓮根、椎茸、玉葱、鶉卵などほとんどのタネがミニチュアでありました。キスもかなり小さめの物を2尾重ねてあります。よくまあ、こんなに小さなタネを揃えたものだと感心しました。揚げ方は「由松」のように素揚げに近くはなく、焦げ目もあります。自家製の塩とレモン汁だけで天麩羅を食べなければいけないところは同じ。味付きのオロシは舌休めです。追加で頼んだ牡蠣も小さく、天茶は嫌いなので変更した天丼の掻き揚げは揚げすぎでありました。昼のお任せでは魚は海老、イカ、キスだけだといわれ、夜のタネをいくつか追加してぬる燗数本の支払いが予想通り3万円を突破、いくら海老が10尾前後でるとしても、この小さなタネの連続ではあまりに高いというものです。しかも驚いたことに、この店には「穴子」が常備されていません。江戸前のタネを扱うが江戸前天麩羅ではなく、リクエストがある時だけ仕入れるそうです。常日頃仕入れていない店がスポットで質良い「穴子」を仕入れられるものなのか。海老以外旨みを感じない小さいタネとこの高額請求の天麩羅屋がどうして5つ星なのか。同価格なら「由松」の方がまだマシですが、「楽亭」ではこの2/3でもっと美味しい天麩羅が刺身と共に食べられます。CPを重んじる方にはまったくおススメできない天麩羅屋でした。ビル建て直しのため3月末で一時閉店、今秋に5丁目で再開予定です。

2007年04月22日

予想よりまともで面白い創作料理、タカザワ

一日2組総勢10名限定に絞った営業、ジャンル不詳の創作料理、雑誌で見る限りダイニングかサロンのような内装、と事前情報では友里的にまったく評価できなかったのが、赤坂の老舗フレンチ「ビストロ サンノー」後にオープンした「アロニア ド タカザワ」であります。
非常にわかりにくい入り口から階段を上がると、サロンのような内装で、照明がスナックみたいなのはご愛嬌か。シェフとマダムの2人だけで、下ごしらえは奥の厨房でやり、焼きや盛り付けなど最後の仕上げを客の目の前でやるシェフズテーブルを狙ったホールであります。
事前に決めなければならないお任せコースは1万6800円、2万1000円、2万5200円と、かなり強気の価格でワインも高い。シャンパーニュはノンヴィンが1万円、白・赤ワインは日本産で、8000円から2万6000円と驚きの高価格。しかもあまり流通されていないものに絞り、相場がわからなくしている高等戦術であります。
肝心の料理はどうかというと、無難に真ん中のコースを食べた結果は、何料理かわからず濃い味付けの創作料理なるも、まずまずおいしゅうございました。定番のモザイク仕立てのテリーヌ。最近は珍しくなく量が少ないけど美味しい。同じく定番のキャンドルホルダー、何かと思えば蓋側にフォアグラのブリュレを盛り、キャンドル側にはマンゴなどフルーツを細切れにしたものをつめています。いわゆるサプライズ料理なんですが、玉子とキャラメルで甘さを出したフォアグラが濃厚でパンが進みます。白子のココットはバルサミコ、ケイパー、塩でかなりしつこい味。ヒグマ肉のホットサンドやチョコにコライユを混ぜたと思われるソースの甘鯛などにもサプライズ。ただ、すべて誰にでもわかりやすくと濃い味にしており、ホロホロ鳥の白レバーテリーヌなど食材にレバーが重なるのはしつこすぎ。最後の料理、幻霜豚を炭で焼き始めたら、換気が悪くホールが煙くなりました。シェフズテーブルも楽ではありません。炭のフェイクも皿にのってくるなど、六本木の創作和食「龍吟」に通じるコンセプト。ワインが高くて一人3万8000円と驚きの支払いでしたが、わかりやすい濃厚味がお好きな方には、話のタネに一回は訪問されてもいいでしょう。

立地を考慮に入れてもCPが良い鮨屋、福元

下北沢で天然モノに拘っていると評判の「鮨 福元」。HPでは、その日のタネを産地と共に公開しています。かなり拘りのある店主だと以前から気になっておりまして、今年に入ってやっと訪問することが出来ました。
下北沢駅から徒歩10分以上、商店街を抜け住宅街のビル1階にあります。入り口がガラス戸なのが気になりますが、普請は別にして内装は清潔感よくまとまっています。8席のカウンターに小上がりが一つ、つけ場には主人の他、混めば2番手も立つようです。
HPでは、握り1人前3000円〜、オツマミ6〜7品と握り10〜11個のお任せが1万4000円〜、と価格を公開しています。普段着に近い客が多いことから近隣の常連が多いようで、ツマミからお任せの人、握りだけを頼む一人客と客ごとのオーダーに対応してくれるのは有難い。
主人は見た目と違ってかなり饒舌。閖上(ゆりあげ)の赤貝は駄目、白身は〆なければ駄目、熟成させすぎは駄目、と「次郎」など有名店の主人の主張を否定する大胆発言に驚きました。確かにツマミにでた白身は最近の熟成タネのようにパサパサしておらず食感もいい。定番の煮蛸、つくね芋とウニの和え物も悪くありません。そしてツマミには焼き物も1品つきます。
赤酢の酢飯を使った握りは、鮪、やや強めに〆たコハダ、〆た白身とまずまずバランスよくまとまっています。ヅケはその場でつけただけ、夏に小烏賊(スミイカの子)を使うが冬はヤリイカを使うなどクラシックな江戸前に拘っていない点は賛否が分かれるか。煮ハマや煮穴子に引かれたツメがやや緩く、反面干瓢がかなり味濃い点が気になりましたが、ツマミ、握り共、そこらの銀座の高級店と遜色ない出来栄えであります。最上のタネ質ではありませんが上の部類。仕事もまずまず。お任せではやや量が足りずいくつか追加してビールにぬる燗を3本ほどの支払いが1万8000円前後。城東地区にお住まいの方がわざわざ訪問する必要はないと思いますが、近隣や沿線にお住まいの方には、銀座や赤坂で2万円以上払うことなく同レベルの鮨が食べられるのでおススメです。ただし主人と2番手では握りに差がありますので、主人が一人で仕切る時、つまり月曜など空いている曜日に訪問したほうが無難でしょう。

2007年04月14日

店名からは想像できない高級店、英ちゃん冨久鮓

関西在住の食通の方から、高質な天然フグを食することが出来ると教えられましたが、私はこの店名に思わずのけ反ってしまいました。なんだこりゃ、街場の寿司屋でもあり得ないネーミング、東京の高額店でこの店名ではまず客は入らないでしょう。「ぐるなび」にはビールのクーポンがついており、拘りがあるとは思えなかったのですが、HPやネットの掲示板では「天然」に拘った高級食材を出す店で、懐石や寿司のコースは1万円以上の高額店と知り、まずは特別仕入れのフグ料理会に参加しました。
大阪はミナミの居酒屋などが乱立する地域。渋い店構えの扉を開けたら、数十年前にタイムスリップしたかとおもうレトロな寿司屋のカウンターが目の前に広がります。2階の座敷では懐石など和食が食べられるようです。
大阪でトップレベルの食材を仕入れていると自負する主人が用意したその日のフグは7キロ以上。関西は大きいフグを珍重するようで、それほど熟成させていないと思われる厚めに引かれた刺身は食感、旨みも充分。2キロ近かったという白子焼きは塩と醤油の2種がでましたが、個人的には塩だけでいただきたかった。関西は焼きフグに力を入れているのでしょうか、遠江(とうとうみ)、中骨含め次から次へと出てくる炭火焼の量は半端ではありません。しかもここまで甲殻類の香りがするものを経験したのも初めてでした。鍋、雑炊にたどり着く前に天然フグを堪能しきった次第であります。予算は3万円前後。大阪ではかなり高額ですが、東京では高額フグ屋の平均ですから交通費を考えなければお得です。
特別コースだけでは店評価できないと今度は昼にお好みで1階の寿司にチャレンジしました。ツマミで頼んだ鯛はさすが関西、美味しい。天然のハマチも脂が上品、支払い覚悟で頼んだサエズリも良かった。では握りはというと、江戸前というより海鮮系の寿司。煮切りはなく、ガリも酢飯も甘めでありました。普段食べないものをと頼んだ牛トロは甘い酢飯にあって面白く、鯖棒鮨も良かったですが、ツメを引いていない照り焼きみたいな穴子、深みのない赤身、〆の緩い小鯛など東京の有名店並みのレベルを期待するのは酷というものでしょうか。ぬる燗含めて支払い1万6000円はこの食材では仕方ないと考えます。

アクセスが不便なのが難点、恵比寿ダル・マット

深夜営業、お任せコース4500円、白・赤ハウスワイン1500円飲み放題という営業で注目された西麻布のイタリアン「ダル・マット」の2号店。正式名称は「恵比寿DAL-MATTO」です。昼営業をせず、その分深夜に営業時間を延長した戦略は、今では和食や鮨屋でも取り入れてきて珍しくなくなりました。その結果、定食屋以外の昼営業をする店が減ってしまい、ちょっと凝った料理は昼に食べられなくなってしまったのが残念であります。同じ営業時間ならば、客単価が低い昼時の時間を深夜に振り替えれば、確かにその分酒代の追加が見込め、自店を締めた後の同業者や深夜族の来店も見込めます。時間的に効率化するのですが、ランチの目的の一つである余った食材の有効利用をどう転嫁したか。答えは「お任せコース」にあります。深夜では単品も出しますが、基本的には店に完全お任せ。つまり、同じ日でもパスタなど料理内容に違いを出して食材を有効利用していると考えます。
地番は恵比寿といえども駅からはかなり遠い住宅街の、1階がラウンジ、地下にカウンター8席にテーブル席と個室があるキャパ20名ほどのお店。日曜の22時頃の訪問でしたがほぼ満席で、しかも若い飲食関係者らしき人も多かった。ドルチェやエスプレッソをつけてお任せコースは5000円前後になりましたが、例のハウスワイン「飲み放題」は1500円で健在でした。
先付けに刺身系を含めた前菜が数皿、軽めのパスタの後肉料理が出て最後は再びパスタで〆るという、かなりの大食漢でも満足できるコース設定です。仕入れ食材を有効利用するコース料理は、総じて無難でわかりやすい味付けです。魚は昆布〆、パスタにフルーツを使うなど創作イタリアンでありますが、ビール2杯に白・赤ワインをたらふく飲んでの支払いが8000円。この量、価格では、食材と調理に文句をいう人はいないでしょう。ワインも1500円を考えると文句は言えません。ただし、場所が不便なので往復にタクシーを使ってしまう、飲み放題以外のグラスワインや高額なレアワインを頼んでしまうと食後感は変わりますから気をつけてください。また、ワインをほとんど飲まないお客には、それほどの価値を見出せない店でもあると考えます。

2007年04月07日

残りシーズンに蟹を食べる気力がなくなった、川喜

東京で評判の京料理屋の主人からぜひ一回行ってみろと勧められた越前蟹料理で有名な三国港「川喜」。週刊誌で山本益博氏も絶賛していましたっけ。遠方なので行く機会がなかったのですが、金沢出張時ちょっと無理しての訪問です。JR芦原温泉駅からタクシーで3000円以上とかなり遠いが、運転手さんも三国港一番の越前蟹を仕入れていて福井で一番と言っていたので期待は更に膨らみました。この店では予約時に蟹の杯数を決定します。競値なので価格は固定されていませんが、2名の場合1杯で5万円、2杯だと8万円が目安だとか。1杯が3万円の計算ですから、勿論我々は1杯に即決しました。
店前に大きな駐車場スペースや看板もあり、観光地の料理屋の雰囲気。入り口横には鰈が干されており今日の仕入れか越前蟹がたらいの中に2杯入っておりました。
すべて個室の座敷対応で、料理はコース形式。蟹は茹でるのに30分はかかるというので、その前に酒に合わせて福井産のツマミがいくつか出てきます。前菜はメカブの炙り。お通しは鰈の肝煮、造りは甘エビ、煮物は地元料理という鰈の汐入、そしてハタハタの焼き物と肝心の蟹が出てくる前にお酒もすすんで結構お腹が張りました。メインの蟹はかなりの大きさで、身の汁を逃さないように、しゃぶりつきながら食べるように主人から教えられます。この店独特の言い回し「しがむ」という食べ方です。確かにジューシーで濃厚な味わいですが、食べ進んでいくと果たして「ずわい蟹」はこんなに大味というかしつこい味の食材だったのかとの疑問が沸いてくるのです。恐らく今までに茹でた蟹の出汁が出た汁で茹であげているからでしょう、この不自然すぎる濃厚な味わいは、その蟹自身だけからのものではないということです。〆の蟹雑炊はほとんどギヴアップ。蟹の顔も見たくなくなりました。適度なお酒を飲んで二人で6万円を超える支払い。翌朝は蟹の写真を見るだけでゲップがでそうになりました。「この店の蟹を食べたらもう他店の蟹が食べられなくなる」ほど美味しいのではなく、濃厚な味に飽きてしまい、残りのシーズンにもう「蟹」を食べる気がしなくなるほどしつこい味の「川喜」。この店訪問だけを目的に飛行機に乗ってはいけません。

銀座とはいえこのタネ質では高過ぎる、寿司仙

私は銀座の人気鮨屋「小笹寿し」を訪問する度に、その2軒先にあるこの鮨屋が気になっておりました。暗い短い路地に2軒の鮨屋が共存する不思議。店先にはお品書きがなく一見客も飛び込みにくい雰囲気に、もしかしたら隠れた名店かもと知人と予約を入れたのです。
まずは下見に一人で昼に訪問。カウンター12席、テーブル2卓と思ったより大箱でしたが、なかなか趣がある雰囲気です。客が居なかったのが気になりましたが、ツマミ少々と握りはお任せを頼みました。トリガイ、赤貝、ミルガイをつまみ、握りは2種のタネを一度に出してきます。ピッチが早く、12ケほどの握りをあっという間に食べ終わった請求は、ぬる燗2つで1万5000円超と驚きの高値。このタネ質と支払い額のギャップ、J.C.オカザワ風に表現すれば、「友里征耶、もんどりうって黒房下へ転げ落ちる」。タネはどれ一つ傑出というか上レベルではありません。鮪類はあまりに冷たすぎ。中トロ駄目、赤身も水っぽい。生の鮑、ウニ、干瓢、イクラ、甘すぎの玉子とどれも×。鯛やヒラメ、コハダ、煮ハマ、穴子も凡庸でありました。厚めに切ったタネをお結びのような丸っこい形に仕上げる握りは、地方の寿司屋で見かけるような無骨な形。酢飯も特徴がまったくなく、これで銀座の有名店と変わらない請求額なのですから噴飯ものであります。そして次週の夜に再訪し、更に追い討ちを食らう結果となりました。
夜なので多目にツマミを頼んだのが間違い。一つのタネで3〜4切れを分厚く出してくれるのですが、鯛、ヒラメ、鮪は最近の有名鮨屋と質にかなりの差があります。そしてクライマックスの請求額は何と一人2万7000円ではありませんか。銀座でも最高レベルの支払額です。主人も含めて接客は良いし、マスコミに露出していないので迷いましたが、はっきり書かせていただきます。このタネ質、仕事、握りでこの高額請求は、銀座とはいえ「勘違い」のし過ぎ、あまりに世間知らずというものです。どう見ても、1万数千円の価値しかありません。友里は2軒隣の「小笹寿し」へ食べに行くことを主人に提言したい。夜2回転する繁盛店との違いは何なのか、訪問時他に客は2名だけと集客に苦戦しているようですが、その原因がわかるでしょう。

2007年04月01日

値付けが良心的な居酒屋風の魚専門店、山形

読者の方が、「この店へ行けばスッポンの本当の値段がわかる」と教えてくれた代々木上原駅近くの店。普通の居酒屋の佇まいで、表の看板には「鮟鱇、ふぐ、活魚、鰻、スッポンの店」と書かれています。よく言えば選択肢のある魚専門店、悪く言えば拘りをまったく感じさせないナンデモ屋。すべて小上がりで靴を脱がなければなりませんので注意してください。
勧められたスッポン1匹料理は1万円でした。2〜3人前との注釈がありますから、一人当たり高くても5千円でフルコースが食べられる計算になります。高級スッポン専門店は一人分が2万円以上、普通でも1万円を軽く超えるのが一般的ですから値付けはかなり安い。高級料亭関係者からも、スッポンの仕入れは4000円前後との裏をとりましたから、元々それほどの高額食材ではないようです。
1匹その場で捌いていますから、色々な部位が食べられます。生き血は避けたいですが、刺身には心臓、肝臓に赤身。食べてみて生より鍋に入れた方が良いとは思いました。鍋は丸鍋というより寄せ鍋のようなもので、時間的にもそれほど煮込まれていなかったからか、肉やスープにそれほどの滋味を感じません。しかし、エンペラ含めたスッポンと各種野菜の豊富さには満足しました。雑炊もそれほどの深みを感じませんでしたが、この金額では仕方ないか。
この店で安いのはスッポンだけではありません。「お試し一口刺身」として、鮪、フグ、ヒラメ、オコゼなどが800円ほどで用意されています。試しにいくつか頼んでみたところ、刺身は一切れではなく5切れはあり、一口ではない予想外の量に驚きました。岩牡蠣も2ケ1000円。ネットの絶賛ほどの質の高さは感じませんでしたが、渋谷や湯島近くの有名高額居酒屋よりは上であります。刺身に添えられた山葵が本物でなかったのはご愛嬌でしょうか。
「山形」は質そこそこながら良心的な値付けの魚専門店。季節が合えばフグや鮟鱇も試してみたいですが、鰻はガス火焼きですから考え物です。
問題点は一つ。価格が価格なので接客に期待はしませんが料理が出てくるまでに時間がかかりすぎます。刺身、サラダが20分はかかりました。近くへ来る機会があり、時間に余裕があるなら立ち寄ってみてください。

お酒が飲めない客は歓迎されない、五十嵐

山本益博氏と門上武司氏。東西を代表する店癒着型の大御所ライターですが、彼らの共通点は「ヨイショ」だけではありません。お酒をほとんど口にしない食ライターであるということはあまり知られていません。オールアバウトの東西を担当する若きライター二人もお酒に弱い。お酒を飲まれる方に彼らの嗜好が合うはずがありません。そんな彼らが取材しにくい店がこの北千住の「五十嵐」。フレンチの有名シェフ、五十嵐安雄氏を兄に持つ義春氏一人が切り盛りするカウンター7席の小さな店。お酒を飲めない人だけでは入店禁止、必ず飲める人がいなければ入れない、最寄り駅から徒歩10分の住宅街にある安普請の隠れ家的な「洋食屋」です。
五反野でやっていた時と同じく、料理は完全お任せ1コースのみで原則予約制です。お酒を飲む客を対象にしている料理は、元フレンチ料理人とは想像できない居酒屋風洋食が皿数多く提供されます。蛍烏賊と菜の花、鮪のほほ肉揚げなどは想定内でしたが、生姜風味のハマ吸いに蕎麦まで出てくるのですから驚きました。蕎麦屋で修業したと聞きましたが、どういう発想なのか。シェフ本人も「何料理かわからない」と笑わせてくれました。オリーヴ、鶏レバー、トリッパなどお酒のすすむ食材や調理が小ポーションで出てくるのでお酒の飲み過ぎには注意してください。
ワインはノンヴィンシャンパーニュが8000円。白、赤ワインはブルゴーニュとボルドーが主体で4000円から1万数千円くらいまでと、安くも高くもないと値付けです。前店と違って、サービス向上なのかビールやワインの抜栓はシェフがやってくれるようになり客は楽になりました。
客の腹具合で皿数は変わるようですが、居酒屋風小皿コースはだいたい7000円前後。強面ですが饒舌で結構おもろいオヤジの五十嵐氏。チープ感漂う普請ですが、ワインも含めて1万数千円の「五十嵐劇場」、話のタネに一回はおススメであります。ただし、注意点が一つ。4名くらいですと貸切状態になることがあり、劇場が最高潮に達するとシェフもワインを飲み出し、かなりの本数を開けてしまうことになります。お酒が得意でない山本益博氏、来栖けい氏にはこの店の楽しさがわからないでしょう。