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2007年03月26日

県外の客が通うとは信じられない、鮨 渥美

神奈川県には県外にも多くの信者(リピーター)を持つ鮨屋がいくつかあると言われています。新子安の「八左エ門」、長谷の「以づ美」とこの「鮨 渥美」などですが、本当に遠方よりわざわざ行く価値があるのか。銀座の「奈可田」出身、タネは築地ではなくすべて横浜中央市場から仕入れていると知り、私は訪問を決意しました。
しかしそれにしても遠い。港南台駅からタクシーで2メーター、隠れ家的な店を予想していたのですが、バス道路に直接面しておりました。店前に「品書き」はありませんが、掲載されたページを開いた雑誌が飾ってあったのには驚きました。安っぽい印象を与えてしまいます。「信者」で満席を予想していたのに、その日は我々しか客が居なかったのも意外でした。
ツマミから「お任せ」ではじまりましたが、出すペースが早過ぎです。客2名だけなので早く店仕舞いしたいのか。定番の水蛸の煮物はまずまず。ヒラメは縁側がよくなかった。コハダ、スミイカ、アジ、ゲソ、トリガイヒモ焼き、ミルガイ炙りに玉子と、数は多いのですが、矢継ぎ早に出されるのでゆっくり飲んでいられません。握りも赤身、中トロ、ヅケ、車えび、さより、煮ハマ、赤貝、馬糞ウニ、穴子、タイラガイ、干瓢とタネ数もそこそこでレベルは低くないのですがどれも印象に残るものがない。干瓢がかなり甘かったのが記憶にあるくらいでした。主人は「魚屋に僕の気合が伝わるから市場で一番よいネタが仕入れられる」と豪語していますが、神奈川県一番のタネ質とはこの程度のものなのか。出身が「奈可田」ですから、江戸前仕事が強いはずもなく、はっきり言って特徴のない無難な鮨であると判断しました。支払額2万円前後、往復の約3時間(品川からとして)、傑出しないタネ質や仕事、を考えると県外というより近辺以外からわざわざ通うほどの価値は見出し難いというものです。ツマミ、握りとあっという間に終わったので、遠方ながら帰宅時刻が遅くならなかったのが唯一の救いでありました。

2007年03月18日

2週間前から予約してまで行く店なのか、バルカ

「アロマフレスカ」で働いていたシェフが、その修業店発祥の地にオープンしたイタリアン「リストランティーノ バルカ」。瞬く間に予約困難の人気店になりました。修業店発祥の地でのオープンは縁起がいいのか、西麻布の「すゑとみ」も評判ですから、独立を考える料理人は検討する価値があるでしょう。
2週間前の14時からの電話受付で予約を入れて3名での訪問。店内はカウンター10席と4人掛けテーブル1卓に5名の個室、キャパ20名弱の小さな店です。
前菜は小皿タイプで約20種。追加料金の皿もありますが基本は900円なので、ツマミ感覚で2皿は頼めます。パスタは1800円が基本でシンプルパスタと称するものは何とマイナス300円でした。こんな値付設定は初めて見ました。メインはボリュームがありシェアを前提にしているのか、仔羊ロースト(3200円)、仔牛の炭火焼(500g4800円〜)など結構高めです。
前菜は手間をかけたものが少なく可もなく不可もなし。ネットで評判のカエルのフリットやミスジ肉のタルタルも印象薄く、濃い味付けだけのバーニャカウダといい、万人ウケを狙っただけのもの。逆にメインはしつこすぎです。仔羊は脂がくどすぎて食べ切れません。仔牛はあまりに量が多いのでこれまた食べるのに苦労しましたが、明細を見て憤慨。8500円の請求ですから900gの計算になります。骨があるとはいえ3人でメインの2皿目ですよ。このポーションしかなかったのかもしれませんが、調理する前に客に確認するべきでしょう。この金額、この量では頼まないという選択肢があるからです。〆にまわしたパスタもワインの飲みすぎもあってかまったく記憶に残らないものでした。
この店の大きな問題点は皿出しの遅さです。3人で頼んだ7種の前菜が中々出てきません。前菜だけでワインが2本目へ突入、結果3本頼むことになりました。入店してからドルチェを頼まずチェックまでの3時間半超はあまりに遅い。単なる人手不足なのか、ワインを多く飲ませる牛歩戦術なのか。どちらにしても、万人ウケを狙った無難な調理で特徴のない料理の店、一人軽く2万円を突破したことも考慮すると、わざわざ2週間前に予約を入れて行く必要のない、過大評価の店と考えます。

皿数多く高級食材がてんこ盛り、まとの

友里はどちらかというと多皿コースに否定的であります。またアイテムだけで質を伴わない事が多い、「高級食材」の乱用にも問題提起してきました。多皿コースにすることによって一皿毎の印象を薄めレベルの低い調理をごまかす。鮑だ、伊勢海老だ、のどぐろだ、と質が伴わない食材を味がわからない業界人に出して評判をとる店が多いからです。しかし、私はこの京都の「建仁寺 割烹まとの」へ行き、価格の割にほとんどの皿のレベルが高く、食材の質も高いことに驚いたのです。
1階は6席のカウンターのみ、2階は座敷が3部屋。いずれも靴を脱がなければならないところは友里好みではありません。
〆のご飯まで12皿は出てきます。盛り付けにも気を使っているのか、見た目もよい各皿の量はしっかりあります。
例えばこの日のコース。
先付けは、鮑柔煮とフグ白子昆布焼きと初っ端から高級食材が2種。口取の寒鯖の棒寿司も合わせて質はいい。お椀のタネには伊勢海老が使われていました。出汁はしっかりした味わい。自分的には強めに感じましたが、椀タネには満足です。造りは天然ヒラメの薄造りとシビ鮪など。鮪は普通でしたがヒラメは量も多くまずまず。ポン酢でしたが、この質なら私は厚切りで山葵と醤油で食べたかった。焼八寸の穴子、のどぐろ、炊き合せには聖護院大根、堀川牛蒡、九条葱、油物には白魚や車えび頭、蒸し物には海老芋、車えび、からすみ、と京食材や高級食材がてんこ盛りです。そして質自体が悪く無い。〆に出た伊勢海老ご飯がダメ押しになりました。これで一人1万3000円ですからそのCPの良さに脱帽です。この価格では、量、質と文句をつけるところがありません。伊勢海老は主人の伝で有利に仕入れられるとの事で、この店のウリの一つと聞きました。
多皿や質の落ちる高級食材のオンパレードで肝心の調理から客の目を逸らす戦略の「人気店」が多い中、この店は奇を衒わず、手抜きのない料理をCP良く提供する数少ない店と言えます。東京でこれだけの食材を出すなら2万円でも無理でしょう。友里のイメージする「京料理」とはやや異なる傾向の調理でありますが、観光客が殺到している店で当たりが少ない京都和食では、訪問して損は無い、おススメできる店であります。

2007年03月10日

店前に放置された「ブツ」を見てビックリ、和楽惣

南麻布にある高額居酒屋ですが、開店前の店先に積み上げられた「ブツ」を見なかったら、友里は訪問しなかったでしょう。店が開く前に配送業者が置いたとみられる積み上げられた箱を見て私は驚きました。なんとヒガシマル醤油の「割烹関西白だしつゆ」の山。こんなモノを堂々と置いたら、「弊店は『業務用の出汁の素』を使っています」と公言しているようなものです。影響力のある有名ヨイショライター「さとなお」氏も褒めていた店だけに私は訪問を決意しました。まずは事前準備にネットからこの「割烹関西白だしつゆ」を1200円ほどで購入。ラベルには大きく赤字で「業務用」と書かれてあり、原材料には「アミノ酸系調味料」の他、蛋白加水分解物や各種エキスなど添加物が盛り沢山です。料理によって希釈倍率が違いますが、吸い物推奨の14倍で味見したところ、不自然に濃くて甘ったるいものでした。
店内はカウンター10席、テーブル10席に個室もありかなりの大箱です。
最初の訪問では豊富なアラカルトに挑戦しました。しかしメニューにご飯物しか金額が明記されていないのはいかがなものか。支払い時に各料理は1000円前後で、客単価は1万円前後とわかりました。刺身類はこの価格帯の店ならまずまずのレベル。しかし、大関納豆(刺身の魚が5種入った玉子で和えた納豆。横綱納豆は10種になる)はアイデア倒れ、ワインを隠し味にしたという黒豚スペアリブの肉じゃがは、ジャガイモと人参がたっぷりながらやはり味濃く甘すぎ。例の出汁を使用していると推測される水菜のお浸し、揚げ出し豆腐もやはり不自然に味濃すぎでありました。全般に甘ったるく味濃すぎで、正に「さとなお」さんや山本益博氏の好みの味付けと言えますが、この味に慣れたらまともな和食が物足りなくなってしまいます。
再訪で6500円のコースに挑戦。〆のカレーまで10皿以上のコースは、この店の味付けに抵抗の無い人以外、つまり本物の出汁を知っている人にはやはりおススメできません。ある日の17時頃、店先で今度は発泡スチール箱の山積みを目撃しました。共同配送で運ばれた魚類だと思うのですが、これを見て客がネガティヴに感じることがわからないのか、「出汁の素」放置といい、リスク管理に甘い店であります。

東京の天然フグ屋にとってこれは脅威だ、臼杵 山田屋

昨年暮れ、西麻布のスタイリッシュなマンション地下に出来た隠れ家的な天然フグ屋です。本店は大分の臼杵で創業100年の料亭。東京の天然フグ屋といいますと、「味満ん」を筆頭に街場の居酒屋かせいぜい小料理屋の店構えが普通ですが、この店は銀座の「やま祢」ほどではありませんが、かなり豪華な内装です。カウンターが5席、個室はテーブルと掘り炬燵の2タイプが2部屋づつとカップル、接待、家族連れなど選択肢は多い。イケメンの支配人や女性スタッフの所作も丁寧です。コースは3種、基本は2万円で小鉢、刺身、から揚げ、ちり鍋、雑炊、果物の構成。2万5000円はこれに前菜盛合せと白子茶碗蒸しが加わり、3万円は更に白子焼きがつきます。内装や人員に固定費をかけている割に、天然物でこの価格設定は安い。肝心のフグ質に期待できないかと思ったのですが、その心配は杞憂に終わりました。
まずは先付けの煮凝りを食べて安心。淡い色づけで上品な味から化学調味料を感じません。美味しい。そして刺身は薄めで1枚引きでしたが、旨みを充分に感じます。これまた旨い。薬味にアン肝と鴨頭ネギが添えられていますが、その助けを借りなくても充分です。上品な味のポン酢も結構。から揚げも衣に妙な味付けをしておらず、中骨部分もありまずまず。ちり鍋は量が少なめだが悪くない。鍋を一度厨房に引き上げたので化学調味料の添加を疑った雑炊も、上品な味わいでありました。このフグ質でコース2万円は、東京ではかなりお得であります。臼杵の本店ではコースが9000円からあるので、本来天然フグは高くないということでしょうか。3コースを取った結論は、2万円コースで充分。白子焼きが食べたいならば単品(5000円)を追加すればいいでしょう。立地、雰囲気、フグ質を考えたら、近辺の天然をウリにしているフグ屋には大変な脅威になる店。この店を知ると、価格は安いがフグ質がかなり落ちる麻布十番の「小やなぎ」、やはりフグ質が落ちる同価格帯の「六本木 浜藤」へ行く客は居なくなると考えます。
ただし酒類、特にワインが高いのが難点。シャンパーニュが小売の倍、日本酒は1000円以下でしたが正1合ないでしょう。ワインを頼まず日本酒でCP良い天然フグを味わってください。

2007年03月03日

覚悟はしていたがあまりに狭い、ビストロ ミカミ

ビストロというと何を思い浮かべますか。客の密度が高い圧迫感、ざわざわとした喧騒感、ボリュームのある料理、個性的な味付け、安いワイン、などなど。しかし、シェフ、マダムに助っ人3人のこの小さな店は、負の印象となる「圧迫感」と「喧騒」だけが目立っておりました。
カウンター9席は、隣客と肘が干渉するほど狭い。テーブル席が2卓ありますが、これも小さすぎ。小さな手荷物は足元に掛けられますが、後は入り口付近のワイン冷蔵庫の上に置かなければならないほど、店内に余裕はありません。
シェフは「足し算ではなく引き算の料理」と訳のわからない事を言っていますが、その「引き算料理」の数が半端ではありません。定番メニューの他、黒板にびっしり書かれた前菜が30種以上。800円から2000円の範囲です。メインは鴨、プラチナポーク、牛、仔羊のほか牛タンやほほ肉の煮込みが3000円以内。よくまあ、こんな小さな字で書き込めたものだと感心しながら黒板から3人で選んだ前菜は8皿。実はビストロと自称していますが、一皿の量が少ないのです。一人2皿は前菜を頼まなければ足りませんが、テーブルやカウンターが狭いので置くのも大変です。鹿のタルタルが冷凍の戻しでイマイチでしたが、鴨コンフィ、白レバームース、トリッパは無難なお味。なぜか数種あるパスタやリゾットから選んだウニのスパゲッティは頼むべきではありませんでした。大半は可もなく不可もなしの無難な調理、はっきり言うとまったく印象に残りません。メインに頼んだ仔羊の香草焼き、豚すね肉の煮込みプラム風味、牛フィレ肉のマディラソースもまったく記憶に残りませんでした。ビストロの定番のクスクス、ポテト、リエットが見当たらなかったのも不満。ブーダンノワールやシュークルートもありませんでした。
ワインは白が6000円、赤が8000円くらいからと店構えや料理から見てかなり高い設定です。ノンヴィンのシャンパーニュも8400円と安くはなかった。
イタリアンだが店構えや料理の傾向が似ている六本木「オステリア ナカムラ」よりかなりCP感が悪い。狭いのに喫煙可という方針にも疑問です。近所の喫煙者が一人で立ち寄るといった利用が一番合っているでしょう。

この近辺では勝ち組の一店、鳥よし 西麻布店

一時は盛り返したかに見えましたが、確実に客足が遠のいている西麻布界隈。特に4丁目は苦戦している飲食店が多く、山本益博氏が絶賛した「シェ フィガロ」や「キッチン ヌノ」も閉店。数年間で中華、ダイニング、パン屋、スープ屋とテナントが入れ替わった小さなビルは、現在博多チムそばの店になっていますが、今回も客がほとんど入っていません。そんな中で寿司屋「和心」と共に「鳥よし 西麻布店」は連日満席の繁盛店であります。「麻布食堂」などが入る雑居ビルの地下、しかしアプローチは高級和食の雰囲気で「焼鳥屋」に見えません。店内もやや薄暗く、いかにも隠れ家的なところが業界人や芸能人にも受けているのだと考えます。
この店のウリは、フランスで焼鳥をやっていた主人が帰国して選んだ「伊達鶏」のあらゆる部位を堪能できること。中目黒店の繁盛からこの西麻布店を出し、ついに銀座まで進出しています。
焼鳥屋で一番重要なのは鳥のバラシと串打ちだと業界関係者から聞きました。大手やフランチャイズ店はこの重要な作業を工場で処理、ひどいところは中国でやって冷凍輸入しているとか。いわゆるセントラルキッチン方式ですが、このグループは各店舗でその処理をしているそうです。同じく希少部位を出す人気店の「酉玉白金」では、内臓は別仕入れですから、比較するのも良いでしょう。
単品として普通部位が200円、ちょうちん(卵巣)やせせりといった希少部位は300円からありますが、お任せもあり、希少部位を中心にしたコースも組んでくれます。火入れはそれほど強くなくタレも濃くないので割りと食が進むのですが、部位が大きめなのでお任せでは最後までたどり着かないかもしれません。奥久慈だ、比内地鶏だ、と地鶏、銘柄鶏が珍しくない現在、他店との差別化は希少部位の豊富さです。近くに来たら話のタネに寄ってみるのがいいでしょう。いつも満席に近いので、早めの時刻か入店制限の23時近辺が狙い目。麻布十番の「世良田」には敵いませんが同価格帯の「伊勢廣」や「酉玉」より質、焼き技術とも上。客単価は6000円超ですが、希少部位を食べ続け、6000円のワインを飲んでそぼろ丼で〆たら1万5000円近くになりました。安く上げるなら日本酒に限定してください。