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2006年12月30日

ツマミと握りが驚くほど豊富、すし匠 斎藤

この7月にオープンしたばかりの赤坂の鮨屋。店名から四谷の「すし匠」系列であることがわかります。主人の斎藤氏は一時期NYの鮨屋でも働いていたとのこと。靴を脱いでの掘りごたつ式の白木のカウンターは余裕の配置の10席ですが、私は一々靴を脱ぐこのスタイルが好きではありません。面倒ですし、衛生的な面でも問題があるのではないか。
この店の特徴はなんと言ってもツマミの豊富さでしょう。兄弟弟子の西麻布の「まさ」と同じく、ツマミの合間に握りを出してくるスタイルで、酢飯は赤酢と米酢の2種を用意し、〆ものには赤酢の酢飯、その他は米酢の酢飯で握ってきます。乳児連れの若い夫婦にも門戸を開放する懐の深さもあります。
まずはカスゴの赤酢の酢飯握りでスタート。初っ端が握りという客の意表をついた仕掛けに驚きました。最終的にはツマミが20種に握りが10貫ほどでしょうか。記憶をたどっていくと、よくまあこれほどタネを揃えていると感心しました。ツマミで記憶に残っているのは鮭児。その希少なタネに鮨屋では初めて遭遇しました。昆布出汁に漬けた海水ウニ、カワハギ肝醤油、粒牡蠣、毛蟹など業界人、芸能人が喜ぶタネもあり、藁で燻した松輪の鯖、佐島の蛸、大間の鮪(たった1切れ)などブランド産地のタネもミーハー客対応で揃えています。浅草や銀座の老舗の江戸前仕事とは違う創作ツマミが主体ですが悪くはありません。アサリの小丼も最近は珍しくありませんが女性客には受けるでしょう。楽しくお酒がすすみます。
握りはやや小ぶり。ツマミが豊富ですから総量を考慮しているのでしょう。
如何にして多くのタネに最大公約数的に合う1種の酢飯を造り上げるかが職人の腕の見せどころであり、タネに合わせて一々酢飯を変えるのであればその苦労はいりません。私的には2種の酢飯を使い分けるパフォーマンスの必要性を感じませんが、一般には結構評判のようです。
接待よし、業界人よし、中年カップルよし、子連れよし、酒飲みよし、とあらゆる客層に対応しているタネ数豊富な鮨屋。赤坂という立地の割に、お酒をかなり飲んでも2万数千円という支払いもあり難い。最上級のタネ質ではないですが、一度は試されることをおススメします。

オー グー ドの賄い料理か、minobi

私は「オー グー ド ジュール」系の店に関して肯定的に書いてきました。本店、日本橋店のフレンチ2店は微妙にテイストを変えた戦術が成功し今でも評判は良いはず。しかし、「東京カレンダー」で新たに3店目が芝にでると知り目が点になったのです。オーグードとしては3軒目となるこの店は、フレンチのテイストを持たせた「和食屋」とのこと。しかもカウンター主体の構成だというのです。なぜ目先を変えて和食を出すのか。なぜ直ぐ新店をだしたのか。調子に乗った、舞い上がった、更なる利益追求に乗り出した、出資者である投資組合の利益配分要求が強まった、などの理由が考えられます。しかし廉価な居酒屋やジンギスカンが凌ぎを削る和食の激戦区である芝の地で、埋没しないものなのか、訪問しての私の結論は「こりゃ駄目だ」となりました。
造り置きの小鉢料理が600円ほど、前菜が1000〜2000円、肉などのおかず系が2千円以上とこの辺りではかなり強気の値付け。しかも、一皿のポーションが大きくないので、単品だと3皿は必要で軽く5千円超えてしまいます。酒類も高い。生ビールが800円、ワインはACボルドーが5千円でしたが、その他は1万円以上が主体と高いものしかありません。
肝心の料理ですが、和食の経験があるシェフが造ったフレンチテイストの居酒屋料理はただの「味濃すぎ」。お浸し、筍のフリットの衣、炊き合わせは表面的な強い味つけというか大味。スペシャリテの「いっちゃんハンバーグ」はチーズを乗せてトマトソースがかかっているだけの物。〆の鴨丼(2千円)はタレ濃すぎて正にマスヒロさん好み。あまりにくどい。一皿の量が少ないのを自覚しているようで、ご飯物以外に3皿すすめる方針ですが、土鍋ご飯(1.5合)が900円と二人分はありますから、一人客には向いていません。最終的な支払いは、値付けが高いワインを飲んで2万円近くになりました。ネットのレビューはサクラたちの高評価が目立ちますが、この下町的味付けというか、マスヒロさん好みのシツコイ味と量の少ない料理に値付けの高いワインでは、まともな舌の客のリピートは難しい。オーグードは何を勘違いしたのか、このコンセプトでの出店はあきらかに間違いです。

友里もビックリの他店メッタ斬り、鮨処 すゞ木

TVなどマスコミで持ち上げられている元鮨職人・新津武昭氏。名店と言われた「きよ田」の雇われ主人として有名でした。マスコミからカリスマに祭り上げられた新津氏ですが、彼の弟子だったことをウリにする若手鮨職人も多い。「あら輝」の荒木水都弘氏が特に有名です。そのカリスマ職人の師匠が伝説の鮨職人と言われ「きよ田」初代雇われ主人の故藤本繁蔵氏であります。読者から藤本氏の一番弟子だというこの店の情報を入手し私はすぐ訪問しました。
要町駅から徒歩15分以上、カウンター7席の主人と女将だけの街場店ですが、着席した瞬間から独特の「鈴木劇場」が始まります。鮨タネとは違うツマミを数多く出すお任せがスタートすると、女将はツマミへの拘りや主人の腕自慢をしゃべりまくります。カラスミ、塩辛、鯛酒蒸などが如何に他店と違うのかを力説する余り、主人も加って強烈な他店批判へと発展します。藤本繁蔵氏は60歳で包丁を置いたそうで、新津氏はその時まだ小僧。藤本氏から江戸前仕事は伝授されておらず、鮪の見立てくらいしか能がない、マスコミが勝手に持ち上げている「過大評価職人」だと言うのです。よってその弟子の「あら輝」もケチョンケチョンです。「次郎」もツマミに力を入れないのは回転上げて儲けたいだけ、「弁天山」の主人は築地に月一回しか行っていないなど場外乱闘にも突入しました。「次郎」から独立する弟子やマキシムのシェフがツマミの造り方を習いに来たという自慢話が毎回出るのはご愛嬌か。確かにツマミは独特の味加減。〆物、酢飯もかなり塩を利かせております。酒で儲けるつもりはないと日本酒はタダで持込可ですが、ワインはご法度。鮨にはまったく合わないとワインに執着する「寿司幸」も批判していました。予算はツマミや握りを含んだお任せで最高1万円ですから、タネ質に最上を求めるのは無理というもの。主人たちの口上以外のウリは、サヨリやコハダの細工握りと巻き簾を使わず綺麗に巻き上げる巻物で、その技量だけは必見です。ビールにぬる燗をかなり飲んで1万3千円前後。腕自慢に他店批判の独演会はかなり疲れますが、77歳になる主人は鮨業界の生き字引。ツマミや握り以外にも他店の裏話を楽しめる「鈴木劇場」、好きな人は病みつきになるかもしれません。

2006年12月23日

あまりに高すぎる創作家庭料理店、割烹 室井

「ダンチュー11月号」を読まなければ、私は無駄な出費をすることはなかったでしょう。「おいしい秋がてんこ盛り」と題する特集の中、天然キノコを出す有名割烹との触れ込みを信じて思わず飛び込んだ友里が甘かった。
10席ほどのカウンターに個室が数部屋。着席して期待は一気に萎んでしまいました。各席には大きい灰皿が常備。カウンター客はオミズを連れた見え見えの同伴カップルやマイナーな業界人の男グループばかり。当然タバコプカプカで、紫煙は店内に充満しています。大笊に盛られたキノコ達もさぞやタバコの煙で燻し続けられ苦しい思いをしていることでしょう。繊細なキノコをウリにする店が、喫煙を許していいものなのか、キノコ料理屋失格であります。
客層が客層ですから、料理はコースオンリー。1万5千円からありますが、一見強面の主人は「お任せコース」(2万5千円)を強く勧めてきます。キノコのお任せは18皿と多皿でしたが、まったく印象に残りません。花びら茸の土瓶蒸、湯葉のキノコ餡かけ、クリタケ甘焚き、紫シメジの白和えのほか、キノコの酢の物、醤油つけ、ソテーなどいずれも家庭料理の範疇に近い。ほうれん草のお浸し、オカラまで出てきますから、割烹というより街場の小料理屋か居酒屋か。お椀といえるものもなく、造りもフグぶつ切りやカワハギ、揚げ物は牡蠣の天麩羅と牛カツで、キノコのソテーのソースをご飯にかけ、〆はキノコのリゾットやパスタですから、まったく和食の真髄に触れることなく終わってしまいます。まったく印象に残らない創作家庭料理。これでビールに日本酒を数合飲んで一人3万5千円近くになるのですから驚きです。何かの間違いかと後日キノコを使わないお任せコースに再度チャレンジしましたが、やはり高級割烹とは程遠く、船場の丁稚の賄い料理だった「船場汁」、白菜のクリーム煮、キンピラに〆はカレーまで登場してしまいました。小鍋料理がまずまずでしたが、その他はタラ白子の天麩羅、生牡蠣、鮑のバター焼きと業界人好みの居酒屋料理。会計はやはり3万数千円と一著前に高額割烹並みの請求に変わりはありませんでした。同伴カップル、業界人と領収書を受け取る経費族専門の高いだけの創作家庭料理店、こんな客層の店へわざわざ行く必要はありません。

シチリア料理専門店だが客層が軽すぎる、ドン チッチョ

連日盛況だった神宮前のシチリア料理店「トラットリア ダ トンマズィーノ」。大家と更新で揉めて今春店を畳んだと漏れ聞きましたが、半年のブランクを経て、10月末に青山学院裏に新規の店をオープンしてきました。店名は「ドン チッチョ」。最寄の渋谷駅や表参道駅から徒歩で15分くらいと立地はよくありません。しかし、前店からの常連の後押しよろしく瞬く間に予約困難な人気店の仲間入りをしてきました。
カウンター8席を含めてキャパは40名くらいでしょうか。大きくなっていますがスタッフ数は増えていないので、満席の店に詰め込まれる客は対応の遅さにいくらかストレスを感じるようです。コースではなくアラカルト対応。一部のヨイショ系副業ライターに評判だが食べきれない量の料理を出しても客が少ない神泉のシチリア料理店「アルキメーデ」とは陽陰分かれたようです。
前菜は約10種で1500円前後、パスタも10種ほどで1700円前後、メインは魚類に白金豚、仔羊、雉などが2500円前後と料理の選択肢はあり3皿フルに頼んでも6千円かかりません。1コースしかない「アルキメーデ」を絶賛している人にぜひ食してもらいたいのがこの店の料理であります。前菜はウイキョウ、松の実、干しブドウなどシチリア定番食材を使った料理が目に付きます。スタッフが各自に取り分けてくれるのでシェアもし易い。品数だけ多くて各料理が一口分しかなく味わいがわかりにくい「アルキメーデ」と違って充分楽しめます。パスタはやはりショート物がいいでしょうか。鮪のほほ肉煮込みや鰯とウイキョウなどなかなか美味しいものに巡り合えました。肉類だけではなく魚の調理法もバリエーションがあり楽しめます。
ワインはシチリア産に限定して3800円から8400円くらいまでと頼みやすい選定と値付け。白、赤とも20種はありますから種類も充分と言えるでしょう。前菜、パスタ、メインの3皿で充分お腹が膨れ、ワインを一人当たり1本飲んで1万数千円。ホールを見回すとワインをそれほど飲んでいない女性客がほとんどで、地方専門料理ではない軽い雰囲気が気になりますが、仕方ないか。
自分で好きな料理が頼める選択肢ある料理を提供する「ドン チッチョ」、予約困難なのは当然であります。

量、食材を考えるとこの支払いは驚異的、一即夛

4年前にオープンした西麻布1丁目の雑居ビル2階、主人と奥さんが切り盛りする10数席のカウンターだけの小さな和食屋です。ネットのブログでCPの良さを知り訪問した友里ですが、支払いでこれほど驚いた店は初めてでした。食べた食材、料理や品数を考えるとかなりに安いのです。「完全禁煙」に徹している点も評価できます。「業界人」が出没する地域でありますが、紫煙を周囲にばら撒く彼らの迷惑行為にあわない店でもあるのです。
カウンタートップには、筑前煮など造り置きの大皿料理が並び、端には干し魚が吊るしてある小料理屋的な店内ですがメニューはありません。着席するとまずはツマミ的な小皿がいくつか出てきます。牛タタキ、枝豆、鯨ベーコン、とうもろこしなど。その日によってアイテムは変わりますが、ビールのお伴にはドンぴしゃり。その後造りが供されます。カツオ、鯛、カワハギ、鮪など種類も多く、質は上とは言えませんがそこらの高額居酒屋と遜色ない、いやそれ以上かも。勿論、本山葵が添えられております。ここまでは定番と言うかお任せ。そして焼き物、煮物、蒸し物、揚げ物などを客が選んで〆のご飯物へと流れます。ノドグロ(赤ムツ)、黒ムツ、柳カレイ、キンキ、アマダイなど魚の種類は豊富。特に東京では見かけないグジ(甘鯛)の塩焼きは美味しかった。同じくノドクロなどムツ類の干し物はやや塩が緩いと感じましたがまずまず。キンキの煮つけ、柳カレイもボリューム満点でした。まだお腹に余裕のある方は、牡蠣フライ、海老フライなどの揚げ物を、それでも未だ食べられる方には牛ステーキが待機しております。和牛か国産牛か輸入牛かを確認するのは野暮というもの。量も充分でそれなりに美味しい肉でありました。そして〆にはイクラ丼も控えております。数種の小料理、造り、焼き物、揚げ物、150グラムのステーキ、丼物をフルに食べ、ビール2杯に日本酒4合で支払いは何と9千円前後。倍の請求を覚悟していた私は腰を抜かしそうになりました。何かの間違いかと再度訪問しましたが、支払額は似たようなもの。「田中屋」、「シンスケ」、「玉久」などの高額居酒屋と同じ支払いで、より高級食材を味良くお腹一杯楽しめる「一即夛」。家庭料理の延長線上の料理ではありますが、おススメです。

2006年12月17日

立地の妙だけの店ではないが・・・、よねやま

正式店名は「津之守坂 よねやま」というコース主体の小さな割烹風料理屋です。曙橋駅から徒歩で10分。こんな所に和食屋があるのかといった立地の意外性は、早稲田の過大評価店「松下」と同じく下駄履き評価されているだろうと私は予想していました。「霞町 すゑとみ」と共に和食の人気店としてマスコミの露出も多い。特に犬養裕美子氏、浅妻千映子氏などヨイショ一辺倒で料理人とお友達になりたがるライター達が絶賛しているのもネガティヴなイメージを与えてくれます。
店内はカウンター5席にテーブル1卓と個室の小さなキャパ。遅い時刻では単品料理も出しますが主体は1万円のコース料理。しかし最近は1万5千円コースにも手を出して来ました。「すゑとみ」もそうですが、1万円前後でCP良いコース料理を提供していると、必ずより高いコースを再設定してくるものです。これは常連を気取る客達が、もっと良い食材を使った高いコースを食べたい、それでも客は来るよ、と耳元でささやく結果であります。かくしてその悪魔の囁きに従った店は、他店とのCP差や特徴がなくなり加熱人気が収まることになりがちです。都心に1万5千円コースを出す和食屋は珍しくありません。京都ではもっと安い優良店も多いはず。傑出した才能がない限り、身の丈にあった地道な運営が長く生き延びる道なのですが、客やマスコミのヨイショに我を忘れてしまうようです。
1万円コースは小さな3皿の突き出し、お椀、造りからはじまり、焼き物、空豆、ブリ大根と言った地味な小料理が続いて必ずでるという小鍋料理の後、手打ち蕎麦で〆られます。この日の刺身はイカ、ウニ、鯛、椀ダネはハマグリ、焼き物は鰆の西京焼き、小鍋は鯛でした。1万円としては、出汁、食材の質共まずまずで量もありCP悪くありません。しかし5千円アップしたコースを頼んだとしたらどうなるか。当然期待値は上がるわけでして、単に食材を上げ質を上げるだけでよいものなのか。出汁を含む調理の腕も上のレベルを求められるということを料理人たちに認識してほしいものです。立地の妙だけではなく、1万円なら価格に見合ったCP良い料理を出していますが、間違っても常連の甘い囁きに乗って、銀座など都心へ打って出ることも考えてはいけません。

各地の郷土料理が味わえる、カシーナ カナミッラ

白金通りに1年前オープンしたイタリアン、「リストランテ カシーナ カナミッラ」。この店はイタリアへ料理研修やソムリエ研修を斡旋しているict食文化企画という有限会社が経営しております。料理人の1年研修の費用は140万円、ソムリエは半年で110万円だとか。昔は伝を頼って着の身着のままで渡航したと聞きましたが、最近はシステム化してお金さえ払えば受け入れ先を用意してくれるのですから随分楽になったものです。イタリアン業界で食べている会社が満を持して投入してきたシェフは、この研修制度の第一期生です。4年間イタリアで修業したシェフは、最近のトレンドとは違ったメニュー造りをしています。シチリアだ、リグーリアだ、ピエモンテだと地方の専門料理店が人気の中で、この店は北から南まで各地の郷土料理を満遍なく揃えています。総合商社、総合電気メーカー、百貨店など全網羅的な会社が伸び悩み、専門部門に特化した会社が勢いを増しているのは飲食店業界でも見られる傾向です。全体を網羅しようとすると万人受け狙いで軽い調理になりがちです。しかし、このシェフは、それなりに各地の郷土色を盛り込んだ料理を提供しているので客側からみれば1軒で各地の料理を食べられる使い勝手の良い店となっています。前菜、パスタは2千円前後、メインは3千円弱で魚のほか豚、兎、仔羊、馬、鹿と食材も揃い、調理も煮込みありグリルありと選択肢は多い。ウリの手打ちパスタに絡めた馬のラグーはしっかりツメてありなかなか。週刊誌で紹介されていたオリーヴやアーティチョーク入りの兎の白ワイン煮もディープな郷土色がでています。もも、ロース、レバー、ヒレ、腎臓と部位も豊富で一度は味わっていただきたい。その他馬や兎のグリルやローストにも満足しました。ワインリストは2種類。比較的廉価なワインリスト(といっても5千円から2万円くらいまで)は小売価格の2倍程度の値付けですが、レアワインリストは3万円を超えるものがほとんどと絶対価格は高いですが、市場価格とそれほど乖離しておらずワイン好きには見逃せません。専門料理店と同レベルの地方色を出した各地の料理が並び、ワイン好きにも対応できるワインストック。料理だけではなくワインに拘る方にもおススメです。

いつの間にか宮廷料理に変身した、銀座 南漢亭

相変わらず集客に苦しむ交詢ビルのレストランフロア。荻窪の韓国料理屋の支店の位置づけであるこの店も、「こんなはずではなかった」と頭を抱えているでしょう。交詢ビルオープン当時、マスコミの宣伝記事で私は「南漢亭」が「韓国宮廷料理」に「変身」している事を知り驚きました。荻窪の本店で食べたのは15年前くらいでしょうか。評価基準が明確でないシーラカンス評価本「東京いい店うまい店」で高評価されているのを見て食べに行ったのです。記憶はかなり薄くなりましたが、食べたのは焼肉主体。本でも焼肉が旨いとされていたはず。ユッケ、タン塩、カルビといわゆる「焼肉料理」を食べまくったのです。焼き肉以外の料理があっただろうか。ネットにあった11年前の「辛ミシュラン」取材関連の書き込みでは、荻窪の店は「韓国家庭料理」として紹介されていました。それがヤフーグルメなどでは「韓国宮廷料理の草分け的な店」として紹介されているのです。おいおい、15年前は焼肉主体だった店が韓国家庭料理を経てなんで宮廷料理の草分けになれるんだ?銀座出店でどさくさにまぎれて変身しただけではないか。
ダイニング系と間違う内装はまったく韓国料理とミスマッチ。昼はいくらか客がいるようですが、我々が行った平日の夜は他に2組しかおらず悲惨そのものでした。1万円の「宮廷料理コース」は春雨、人参などの和え物の雑菜、松の実粥、ナムル数種、九つの小皿に盛られた具をクレープみたいな皮に包んで食べる九節板(クジョルパン)、肉、魚、野菜を煎(ジョン)にして牛スープで煮る神仙炉、チジミ、プルコギ、参鶏湯にデザートで成り立っています。各皿の量は少ないですが、後半のスープ仕立てが効いてきて最後にはお腹一杯になります。しかし、このラインナップが「宮廷料理」と言えるのでしょうか。確かに神仙炉をはじめ味は悪くありません。しかし、人気TV番組「大長今」に出てくるような料理をイメージしていた人にはまったく期待はずれ。この程度の料理ならば、他の韓国料理屋でも出会えるものです。珍しくもなんともない。交詢ビルの集客力のなさに加えて、この1万円という韓国料理にしては高い値付けも後押しし、オープン以来閑古鳥が鳴き続けているのも仕方ありません。

2006年12月09日

馬肉だけが先走りしていないか、フレーゴリ

ジャンルはイタリアンだと思うのですが、今では馬肉専門店かと思うくらい馬に拘っている、恵比寿の小さな店であります。カウンターを入れて18席ほどのキャパをシェフ一人、サービス1人でカバーしていますが、銀座の「オオサコ」と違って調理の手際が良いのでしょう、客はほとんどストレスを感じず次々出てくる料理を食することが出来ます。
黒板メニューには、前菜、メイン共に「馬肉」の部位がかなり目立ちます。各種野菜、豚、鴨などの食材をあるのですが、ここまで「馬肉」が一人歩きしてしまいますと、この店で馬肉以外の食材を頼む気がしなくなります。
しゃぶしゃぶ屋で刺身だけ食べて帰る客や寿司屋で牛肉だけ食べて帰る客が居ないように、馬肉料理が売れて回転しているということは、換言すれば他の食材はあまり売れていない、つまり回転していないということです。
売れない料理より売れているものを食べたいのが人情。よって、この店では馬肉を主体に注文するしかありません。前菜には魚のマリネや野菜料理などが1500円前後でありますが、まずは馬肉のカルパッチョでしょう。2500円ほどしますが、馬のハツ、たてがみ、バラ、タン、ヒレが同時に楽しめます。和食系の馬肉専門店よりレベルが落ちるとJCオカザワは文句を言っていますが、イタリアンテイストにしてしまえば私にはこの質で充分。馬肉タルタルステーキは黒板にありませんが注文可、悪くはありません。白いんげんとトリッパの煮込み、馬のハラミの炭火焼、馬ほほ肉の赤ワイン煮などディープな料理は、全体的に塩がきつめです。ワインを飲まない方、弱い方には厳しいかもしれません。おっと、一応イタリアンですからパスタの事も書いておかねばなりません。黒板にはいくつかあり食べましたが、馬肉に隠れてまったく印象に残っていないのが残念です。3〜4人の訪問で、馬肉を片っ端からシェアしまくってワインを結構飲んで一人1万数千円。ワインはリストがなく「オオサコ」と同じく半押し付け営業、頼む食材に限りがあるなどこの雰囲気のイタリアンとしては高めでありますが、抑えたキャパ、食材の特化をウリにする、ディープな味付け、と現在の繁盛店の見本となる営業。独立を考えている若き料理人にも参考になるでしょう。

傑出していないが銀座ではお値打ち、ほかけ

本業は映画監督と自称していますが、「東京最高のレストラン」を主舞台に、鮨屋だけしか店評価出来ない早川光氏。「きららの仕事」という鮨漫画の原作者でもあるそうです。思い込みの激しいその論調からかなりの高齢者かと思ったのですが、雑誌の写真をみてびっくり。服装のセンスは悪いですが結構若いというか中年の人なんですね。その彼が、実名取材すると(つまり『特別待遇』です)最高の鮨を提供すると10店満点をつけているのが銀座の「ほかけ」です。三越裏の古びた一軒屋。夜営業に絞った若い主人の鮨屋が増えている中、年季の入った主人は昼夜鮨を握り続けております。
この店へ昼入る時の注意点。10席前後のカウンターは「お好み」を頼む客専用です。数千円の「お決まり」を食べる客はテーブルに座らされます。人のよると、この「お決まり」と「お好み」ではそのタネ質などに埋めようのない格差があるというのです。銀座の隠れた名店と言われるこの店では、昼も「お好み」を頼んでください。
さて、この主人、気が短いのでしょうか。客が食べるのを待っている間、指をバタバタさせてまな板などを叩いています。どうも忙しない。早く食べろと言う無言のプレッシャーになります。また、ツマミを投げ捨てるように雑に置くのもいかがなものか。江戸っ子は気が短いと言われても、あまり良い気はしません。
ツマミは厚めのものが3切れずつ出されます。鮨タネしかありませんが、結構食べ応えはあります。
この店の一番のウリがコハダだとか。頭の芯まで痺れてしまいそうに旨いと早川さんは言っています。ネットのレビューでは軽めの〆とありましたが私にはかなりしっかりした〆具合に感じます。確かに上レベルですが、この程度で一々痺れてしまっては、高額鮨屋巡りしたら簡単に脳卒中になってしまいますよ、早川さん。まったく大げさな人です。タネ質は最上ではなく特に鮪は赤身もトロも質が良いとは思えなかった。しかし、ツマミ5種に握りをかなり食べ、ぬる燗を3合に小瓶ビールで一人2万円前後。
昼もちょっとつまんで飲んで1万数千円。銀座の鮨屋でこの価格では多くを望むことは出来ません。タネ質、仕事、価格のバランスを見ると、銀座ではお値打ちな鮨屋でと言えます。来年半ば、三越増床で移転するそうです。

マダムの笑顔だけがウリではない、トルナヴェント

広尾と六本木の中間辺り、地番は西麻布3丁目のピエモンテ料理をウリにしているイタリアンが「トラットリア トルナヴェント」です。オープンしてもう直ぐ1年、ポツポツと雑誌に掲載されているようで、あの煽り専門の犬養裕美子さんも取り上げておりました。私が今春昼夜訪問しての結論は、愛想の良いマダムに一票投ずるものの、さほどピエモンテ色を感じない料理。量や味付けからいってもトラットリアではないと判断しました。
定番のメニューの他に本日のおススメとして黒板に書かれた料理数はかなりのもの。ランチはコースが3種ありますが、単品注文にも応じる柔軟性もあります。前菜ではバーニャカウダ、パスタではタヤリンがありましたが、メインにそれらしきピエモンテ料理が見当たりません。ワインリストもそれほどの拘りを感じさせるものがなく、ホールも決して盛況とは言えなかったので、マダムの接客だけでは苦しい、もっと地方色を出した方がよいと思ったのです。しかし、たまたま目にした雑誌でこの店のポルチーニ料理を見て、今秋久しぶりに再訪した私は、評価を見直したのです。
前菜、パスタに使用するポルチーニがかなり大きく質も良さそう。単品オーダーではかなりのボリュームでありました。黒板にある料理もピエモンテ色が出ており、食指を動かされるものが多い。メインも山鶉、猪などジビエも揃っていてディープ感が出てきました。バーニャカウダはかなり濃厚でグッド、野菜も豊富に添えられております。各種パスタも悪くありません。そしてメインの肉類もシェフの個性が出てきています。こんなによい料理だったのか、と久々の再訪で驚いたのです。拘りを感じないワインストックに不満の方には、1本2千円で持込も可。極めて良心的です。ぜひ、好きなピエモンテ州のワインを持ち込んで楽しんでください。
おススメの前菜、パスタ、メインを単品オーダーしワインを頼むと軽く1万円を突破してしまうのでトラットリアとはいいがたい点がちょっと問題か。店は盛況ですが、あまりピエモンテ料理に固執していないような若い女性客が多くホールはかなり喧騒です。マダムの笑顔だけではなく料理自身がウリになったトルナヴェント、まずは昼に単品を試してお気に召したら夜に再訪してください。

2006年12月02日

あの店は今・・・、メゾン ド ウメモト 上海

当初は雑誌に料理や内装の写真を出しても店データを非公開にしていましたが、最近は公開しているようです。非公開と言う奇策が集客に結びつかなかったのでしょう。未だ20台半ばの若い料理人ですが、ヨイショ系ライターを取り込み篭絡させる術は料理のレベルをはるかに超えるもの。特に、大食いしか取り柄のない、自称「美食の王様」、実態は「大食いのオコチャマ」来栖けい氏を味方につけての見苦しい宣伝には辟易です。経験のなさを曝け出しているのがわからないのか、相変わらず日本一の寿司屋と奥沢「入船」を絶賛している来栖氏。しかし、常連客でもこの店が数ある都心の名店を差し置いて日本一だとは思っていないでしょう。そんな来栖氏が近著のパン評価本でべた褒した店の社長などを呼んで開いた出版記念パーティの会場に選んだのがこの「ウメモト」でした。評価対象の店経営者との癒着を晒すことを気にしない常識はずれの似非ライターと昵懇のこの中国料理店が、一般客にCP良い料理を提供するはずがありません。
これほどヨイショされ雑誌に露出していても、久々に訪問したその日の客入りは7割程度。味に煩そうな客は皆無でした。
この店のウリはなんといっても一年中食べられる上海蟹味噌料理。チャーハンや坦々麺に使用していますが、なぜ旬以外にも蟹ミソを冷凍でだすのか。答えは簡単。高額請求できるこの食材を使って季節外でも客単価を上げたいからです。単品売りではこのチャーハンや坦々麺は5千円前後とかなりの高額。しかし、マイナス30度に冷凍するとはいえ、蟹ミソだけは冷凍物でも味が落ちないものなのか。食通が鮪の冷凍物を嫌うように、イクラも生の時期を好むように、冷凍物はどんなことをしても質は一段落ちるものです。そしてもっと重要なこと。未だあまり知られておりませんが、夏季には上海蟹よりもっと希少で珍味とされている「黄油蟹」という食材があるのです。香港や地元ではわざわざ暑くなる時期この黄油蟹を楽しむもの。日本でも有名高額店、例えば福臨門でも食べられます。冷凍上海蟹に固執しなくてもその時期美味しい食材はあるのです。客単価が3万円前後で旬の食材を重視せず季節はずれの冷凍物を出すウメモト、似非ライターを信奉する人以外行く必要はありません。

串揚げ系列の天然フグ屋、六本木 浜藤

ネットのグルメブログやレビューで人気がある旬の時期に半年しか営業しない店です。HPではフグ以外にも鰹節、昆布、玉子や野菜にも拘っていると力説していますが、このHPからダウンロードできる曲を聞くと、そんな拘りのある店だとは思えません。嘉門達夫が歌っている替え歌「浜藤てっちり行進曲」、「ゆけ!ゆけ!乾晴彦!!」(店主の応援歌)。おいおい、客単価3万円はする高額店でなぜこんな冗談みたいなことをするのか。ノーセンスでキワモノなだけではないか。そしてここからが問題。べた褒めしているブロガー達はこの店が串揚げの「法善寺串の坊」系列であることを知っているのでしょうか。宅配「ピザーラ」の親会社「フォーシーズ」経営の高級フレンチ「ジョエル・ロブション」を持ち出すまでもなく、廉価な店の経営会社が運営する高額店にCP良い店なし、は定説であります。半年しか営業しないのですから、年間の固定費を半年で回収しなければなりません。家賃は1年分支払わなければならないはずだし、休業中の従業員の手当てもどうするのか。「串の坊」で働かせると本体の人件費が嵩みます。半年だけの期間雇いの厨房スタッフでは腕のある人材を確保できないでしょう。この「半年閉店」は、残り半年で1年分の元を取るということですから、訪れた客が良いCP感も持つことは理論的にはあり得ません。
煮凝りと酒盗、湯引きが別皿で出た後の白子茶碗蒸しは、肝心の茶碗蒸しの出汁が弱い。刺身は玄海下関直送天然フグとありますが、冷えた皿にこびりついていましたから、かなり前に盛り付けたものでしょう。他の有名高額店と違い、薄い切り身であったのも質に自信がないからか。この薄さでは味がわからないと「ぶつ切り」を追加して天然とはいえ質の凡庸さを確認しました。白子焼きは大き目でしたが皮が厚く、から揚げもどうってことない。歌にまでなった「てっちり」、生米から造ったという〆のリゾットもフグ質の限界か滋味をまったく感じません。アイテムだけは盛り沢山のこの「特別コース」が2万1千円。最初から温いままでがっかりしたヒレ酒など酒類を頼んで3万円前後となりました。他の高額店より安い支払いでしたが、この食後感では価格に釣られて行くような天然フグ屋ではありません。

まったく評判倒れ、伊勢廣 京橋本店

友里征耶としてデビューしてから3年あまり、山本益博氏や犬養裕美子氏など飲食店に癒着して一般読者を裏切る「ヨイショライター」たちへの問題提起をコンセプトに私は店取材をしてきました。よって彼らが滅多に取り上げない焼鳥店はご無沙汰だったのですが、近著の「グルメバトル」で掲載することが決定した為、ブランクを取り戻そうと慌てて焼鳥行脚に入ったのです。比較のため掲載以外の店へもいくつか行った中、ネットの評判と私の印象があまりに食い違ったのがこの有名チェーン店「伊勢廣」の本店です。
別館もあるようですが、2階建て一軒屋はその日も超満員。1階のカウンターに首尾よく座れた私の結論は、価格の割にまったく旨くない焼鳥の一言でした。鶏1羽を丸ごと味わえると「ぐるなび」に載っていたフルコースが6300円。しかし、内臓系はレバーと砂肝だけで、今流行りの希少部位などはありません。本当に1羽を丸ごと仕入れて店で捌いているのでしょうか。ササミ、団子、ネギ巻き、皮、モモ、合鴨に手羽とスープでコース終了。追加は椎茸と軟骨しかありません。希少部位がなくタネ数が少なくても、肝心の焼鳥が満足するのなら文句はありません。しかし、この店のものはどれもまったく美味しくないのです。鶏自体の質が良くないようで鶏自体の旨みを感じません。そのかわり焼き上げた後にもタレに浸しますからベチャベチャで表面的には味濃すぎ。肉の旨みのなさをタレ味でごまかしているのでしょう。塩焼きもしかり。質が良くないのですべての焼鳥がタレ負け、塩負けしておりました。タレべったりの皿にそのまま塩焼きを置くのはいかがなものか。〆のご飯物はそぼろ丼がなく焼鳥丼や鳥茶漬けだけ。これ以上飽きる味の焼鳥丼を食べられるはずがなく、頼んだ茶漬けもこれまた美味しくありません。この濃いタレ味には日本酒が合わないと頼んだワインはロスバコスが3800円。焼鳥の値付けと違って安めの値付けには驚きましたが、それでも支払いは一人軽く1万円を超えてしまいました。同価格帯の麻布十番「世良田」とはまったく比べ物にならない悪い食後感。銀座の「鳥半」、新橋の「鳥小屋」などコースを3千円前後で提供する焼鳥屋の方が旨いのではないかと思うほどCP悪すぎです。