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2006年11月26日

鮨屋か小料理屋か中途半端だけど・・・、おざき

和食で6年修業後、実家の寿司屋を手伝っていた若い主人が、ネガティヴな噂の多い「麻布十番 かどわき」跡に居抜きで今年オープンした「麻布十番 おざき」。13650円のコース1本ですが、ここはツマミを出す鮨屋というよりは握りを〆に出す小料理屋と考えてください。純粋な江戸前鮨屋と思って鮨通や鮨オタクが訪れるような店ではありません。カウンター6席、個室にテーブル1卓ですが、オープン当初に「東京カレンダー」で宣伝してもらったせいかいまのところ盛況です。
ツマミの合間に握りをちょっと出すというスタイルは「すし匠」系列の店ではよく見られます。しかしこの店は、鮪を2貫挟みますが7品ほど小料理が続いて、お決まりのような握りが8貫で〆となります。
訪問当時のメニューですが、ジュンサイと桃のジュレは桃が甘すぎ。定番というアン肝豆腐は、普通のアン肝の方が私は好み。濃厚な旨みが足りなく感じます。その次に天然マグロの握り2貫をはさみ、同じく定番の蟹ミソ入り毛蟹の甲羅蒸し焼き、秋田のフグとミンク鯨の刺身などが続きます。そしてゴマフグの白子焼き、鮑とフカひれの小鍋仕立て、ウニゼリー寄せ、最後の〆に握りが8貫。この価格から考えると料理は盛り沢山。毛蟹が小さい、白子はゴマフグか、握りに甘エビを出すのはいかがなものか、玉は出汁巻きではないか、といった文句をつけるつもりはありません。この価格でこれだけのアイテムの料理が楽しめるなら、目を瞑る範囲と考えます。出汁、煮切り、生姜と全体に甘めの味付けは好みの分かれるところ。私の好みではありませんが、最近の若手主人の鮨屋の傾向と言えるでしょう。玉も含めて握り鮨そのものは江戸前の拘りを感じませんが、7種ほどの小料理を含めてコース全体でこの設定価格を考えると、CPは悪いとは感じません。小瓶のビール、グラスワインにぬる燗を数本頼んで一人2万円弱。想定した予算をオーバーしたのは酒類が高いのでしょうか。主人は今のところ謙虚で店は満席。場所によっては2回転しておりました。早めに入ろうが遅めに入ろうが、1回転目は終わりが21時頃になるのが不満でありますが、江戸前に拘らずお酒と共に小料理と寿司を両方楽しみたい方にはおススメしていいお店です。

ただの海鮮系寿司屋だった、神田 すし昌

大手ファミレスの創業家に生まれながら自称食評論家として活動している横川潤氏。自分のバックと直接利害関係にある他店を論評することは、ダイハツの息子がトヨタや日産の車評論をするようなもので、公平性に欠けると思われがちですが、この人、原則的に「ヨイショ系」ですから心配は無用です。トラウマなのか生家と対極にあるグランメゾンに異常に甘いのも特徴。その彼が、「東京最高のレストラン」で高評価していたのがこの店です。寿司編のベストランキングをつくる上で外すわけにはいかないとのコメントに、知られざる名店かと飛びついた友里が甘かった。
まずは昼時に下見に訪れて店を間違えたかと思いました。昼は千円の寿司定食専門で、入りきれない客が店先に並んでいます。千円ランチの店がベストランキングに入るのか。入店を断念して帰宅後ネットで調べたところ、「ぐるなび」にクーポン券付で載っているではありませんか。上質のタネを使う高級鮨屋がクーポンを発行するはずがなく、結果は見えておりましたが、予約をして夜に再度訪問したのです。
1階がカウンターで2階が座敷になっている結構大箱な寿司屋。「大将」、「主任」と書かれたネームプレートつけている職人たちは体育会系のノリ。居酒屋風寿司屋のイメージです。煮込んだアン肝、蒸気で蒸したトロ、オリーブオイルのかかった茶碗蒸しなど目が点になるツマミが連続します。目先を変えた創作ツマミを出す店で「握り」に期待できるはずがありません。酢飯は一目で赤酢を使っているとわかる濃い色。しかし、肝心の味は塩も緩く特徴がありません。〆すぎたコハダは酢飯とバランス悪く、カスゴに乗せた甘すぎる昆布は余計。玉子は勿論この手の店ではお約束の「出汁巻き」でしかも梅味。干瓢も梅紫蘇を入れて巻くことを前提にしているようで、味が薄い。蒸鮑に柚子胡椒をつけるのもいかがなものか。ビールにお酒を4本、オミヤに太巻きをもらって一人1万円7千円の結論は、ただの街場の海鮮系寿司屋。決して鮨オタクや鮨通が好む店ではありません。天下がひっくり返っても東京の鮨屋10選に絶対入る店ではない。JCオカザワに続いて、寿司屋の評価がまったくあてにならないライターとして横川潤氏がわかっただけが収穫でした。

自己都合で客を侮っている、オオサコ

西麻布「ダックイ」の大迫シェフが銀座進出、とオープン当初はかなりのマスコミ露出で、移転は今のところ成功している「ドナ ステラ クッチーナ オオサコ」。でも、このシェフ、そんなに名前が売れていたでしょうか。銀座へ出れば誰でも即座に有名シェフになれるようです。
深夜までの営業をウリにしていますが、この店には大きな問題点があります。20名近いキャパに対するスタッフは、シェフ一人にホール一人だけ。カウンターなしのテーブル席だけですから、かなりの制約を客が受けることになります。シェフの調理の手際が悪いんでしょう、アラカルト対応にしては前菜、パスタ、メインと種類を絞っても、料理の出は異常に遅い。これでは深夜営業にしなければ客は食べ終わらない訳です。少しでも早くこなそうと考えたのが「パスタ1種をシェア」の半強制です。スタッフは「うちはポーションが大きいのでメインまで食べるならパスタは1種をシェアして充分」と強引に説得してきます。しかし隣の席のパスタは、ほとんど普通ポーション。前菜やメインの量も普通です。要は、客が各自パスタを頼んで段取りの悪いシェフがパンクするのを防ぎたいだけ。だいたいこの陣容で20名にアラカルト対応するのが無謀。BGMが煩いからか声の大きいスタッフは、「我々は食べきれるから2種お願いする」と言っても顔色変えて抵抗してきました。ポーションではなくスタッフの態度が大きいだけでした。
ワインサービスもひどいものです。ワインリストはなく客の嗜好を聞くふりをしますが、持ってくるのは味の傾向が違うワインが白、赤共2本だけ。種類を限定し在庫本数を抑え、小ロットで回転させたい思惑が見え見えです。スタッフ2名にワインが2種のイタリアン。人件費をケチって客を待たせる、パスタのオーダーを制約する、そしてワインも自己都合で客に選ぶ楽しみを与えない。こんな一般客の事を考えないシェフが造る料理に旨いものがあるわけがなく、人気の割に創作系なだけの普通レベルでありました。おしゃべり好きな女性客が主体なので、料理が遅かろうがワインが少なかろうが関係ないのかもしれませんが、まともなイタリアンとワインを望む方は、ストレスが溜まるだけなので、行く必要はありません。

2006年11月19日

とても食べきれる量ではない、アルキメーデ

神泉駅近くのこの店は、半地下の小さな店です。シチリア料理ですがプリフィクスのコース(6000円)1種しかありません。小学生以下の子供の入店は不可。アラカルトがないからでしょうが、この手の料理で入場制限をするのは残念であります。
最初に出る鹿熊豚のリエットとレバーペーストは他店でも出会えるレベル。しかし、その後続く料理に驚きです。突き出しの人参ズッパのあと、シチリア風の前菜が小皿で8皿以上出てきます。カツオ、トリッパ、カポナータ、トマトモッツァレラ、ナスのフライ、鰯などなど。どれもシチリアテイストであることは間違いなし。その後が本日のパスタと5種ほどから選んだパスタの2種が一皿に盛られて出てきます。ペスカトーレは傑出さを感じないまでもまずまずで、早、ここでかなり満腹になります。メインにウリの鹿熊豚のロースやハラミなど各部位のローストを頼んだのですが、これが半端な量ではありません。肉は旨みもあり悪くはないが大食いだと自負しているこの私が食べきれませんでした。全体に塩をきつめに効かした味付けも悪くはない。しかしシェフは大きな勘違いをしていると思います。少ないよりはいいですが、多すぎるのも考え物。味付けと量のバランス、つまりコース構成を考えていません。全体に濃い目の味付けの料理ですから、そうは食べられるものではないのです。特にメインの豚は、ジュに醤油かモロミのようなものを加えているように感じるほど味濃いものでした。これだけ濃いとかなり胃に負担がかかります。ほとんどの客が食べきれないと承知でなぜこれほどの量のコースを設定するのか。我々以外のグループはすべてドッギーバッグを頼んでいました。量を減らして価格を下げろといった野暮は言いません。量が多いことをウリにしたいのでしょうが、残してしまっては本末転倒。家に持って帰って食べてもおいしいはずがありません。シチリア料理はメニューから好きなものを選んで仲間とシェアして食べたいものです。メインに肉料理が多いですが、シチリア料理では魚介を中心にしていただきたい。多皿前菜とビッグポーションのメイン料理でそれほど盛況でない様子を見ると、今のところシェフの戦略は裏目に出ていると考えます。

ビストロにしては高すぎだ、コジト

西麻布や広尾にある「アルモニ」、「マルシェ オー ヴァン ヤマダ」グループの新しい店。雑誌ではビストロと紹介され、看板の山田シェフはホールで常連などの客対応に徹しています。シェフが厨房にいないのでは、スタッフが一人余計に必要になりますから、CPは悪化するでしょう。
料理は4800円から1万円までの4コース。アラカルト風のメニューの中から好きなものを選ぶもので、料理は前菜6種、魚4種、肉6種ほど。子羊ロースト、ほほ肉赤ワイン煮、トリッパなどがありますが、ビストロ定番の鴨コンフィ、牛ロース、豚足、クスクス、シュークルートやリエットが見当たりません。コースといってもチーズやデザートは含んでおらず、各料理のポーションも小さい。私は前菜2、メイン1つの6500円コースを頼みましたが足りずに1品メインを追加しました。ビストロという割にあまりに量が少なすぎ。「ジャボン パセリの煮凝り」はラヴィゴットソースが薄味すぎる。「アスパラとホタテ」も凡庸で、スペシャリテと薦められた「牛ほほ肉の赤ワイン煮 ブルゴーニュ風」は肉がトロトロでしたがソースはツメが緩いもの。追加で頼んだ「鴨 フォアグラミンチ パイ包み」(3800円)はあのボリーさんのスペシャリテに似ていますが、マディラベースのソースが物足りません。ビストロ料理とはいえ、ボリューム少なく味付けは物足りず、価格も決して安くはない。酒類もグラスワインが高過ぎ。バタールモンラッシェが3千円を超えていましたが、ビストロで特級畑のグラスワインが必要なのか。安いものでも2千円前後ですから呆れてしまいます。ワインリストはブルゴーニュだけのものも別に用意され、1級や特級が1万5千円から4万円。そして圧巻はグループ全体で所蔵しているワインリストです。50年以上前から近年までの有名造り手が並んでいましたが、いずれも価格が表示されていません。市場価格に連動させて相対で値段を変える戦略なのでしょう。料理もそうですが、ワインもまったくビストロとはかけ離れた設定の店といえます。安いグラスとボトルワイン、6500円コースに一品メインを追加してサービス料10%で2万6千円。一人の値段ですからビストロとしてはあまりにCP悪過ぎです。

ギャグではないが一回行けば充分、さんだ

牛の内臓は、炭火焼きステーキや焼肉などの店で食べた経験がありますが、専門店があるとは知りませんでした。「東京カレンダー」という飲食店宣伝専門雑誌にも掲載されていた、「和牛懐石さんだ」。当初は興味がなかったのですが、焼き鳥「バードランド」の和田氏、すき焼き「今半」の高岡氏、山本益博氏に近い兼業ライターのマッキー牧元氏の4人で訪れベタ褒めしている副業ライター古川修氏のコラムを見て友里は興味を持ちました。ヨイショしか能のない古川氏や牧元氏の評価がアテにならないのは周知の事実ですが、過大評価されているとはいえ焼き鳥店や知名度高い牛肉料理のプロが褒める内臓料理とはどんなものなのか。しかし、季節毎にまったく変化しない料理内容で、一回だけの訪問で充分との結論となりました。
予約の際、電話応対がよくないと感じたのですが、カウンター内の料理人も客を値踏みするような態度で感じは悪い。まずはポン酢のアキレス腱、中華風味の大動脈、ハチノスの胡麻和えの小皿。どこの部位だか聞いたら食べ終わってから教えると言うスタッフの言葉に私は憤慨しました。闇鍋ではないのですから、内臓部位に詳しくない客には、最初に説明するべきではないか。強気の対応で、純粋な客をひれ伏せる戦略なのでしょうが、一家言ある客には反発をくらうだけです。いずれも濃い味付けで、食感を楽しむだけのものでした。軟骨の入った団子のスープには上品な旨みがありません。肺、子宮、雌の生殖器は造り置いているらしくやや乾燥気味。タルタルの山葵はチューブでしたから、J.C.オカザワも認めないか。レバ刺しは2センチ四方角の小さいもので、味わいを楽しめません。はじめから温かったスジ煮込み、ツメの緩いシチューに続き、すい臓やほほ肉の焼き物がでてタンやシビレといった部位のシャブシャブ、そしてその出汁のラーメンで〆となります。
珍しい食感でしたが、季節感をまったく感じないメニュー構成。6500円均一のコース1種は、ヨイショライターの宿命とはいえ、不自然なほどの美辞麗句の飾り言葉で賛美するほどのものではありません。それにしても、あのラーメン。出汁の旨さが特筆ものだとありましたが、いつまでも続く変な後味は「化学的」ではないでしょうか。

2006年11月13日

あの店は今・・・、Ryo-ri Genten

オープンして2年近く、しかし一向に浮上の気配が見えない「Genten」。山本益博氏がプロデュースした事で当初はかなりマスコミに取り上げられました。日本の「エル ブジ」と持て囃された小皿の創作和食。マスヒロさんは定期的に雑誌で煽り続けていますが、客がまったく押し寄せません。秋田は角館で小さいながら全国区的人気だった「一行樹」を引き払って銀座へ勝負に出た料理人と、マスヒロサンの紹介でスポンサーになったと思われる「genten」ブランドのバッグを作っている会社「クイーポ」は、「こんなはずではなかった」と頭を抱えているでしょう。人気店メーカーを気取ってのいい加減なプロデュースをしたマスヒロさんの罪は大きい。立地の妙で実力以上に評価されてその気になった純粋な料理人が、自分の名前にちなんだ店名を捨て、バッグの販促の為に奇天烈な店名を受け入れて退路を断ってのオープンでもなぜ客が入らないのか。それは、価格の割に美味しくなく量が少ない。これに尽きるのです。ホールスタッフの男性が歳取り過ぎ、外から丸見えで高級感ない、中からも紅虎餃子房の看板やスタバが見えて興ざめだからドレープでもかけろ、といった瑣末な提案はさておき、早急に料理の改善が必要です。久々に確認に訪れてその必要性を強く感じました。
1万3千円のコースはデザートを除くと小ポーションでわずか8皿。本家の「エル ブジ」は1万5千円超ですが、30皿は出ますからCP感は雲泥の差です。赤座海老の湯葉揚げは想定内の調理。醤油のムースやジュレに浸かったざる豆腐はあまりに少量。マツタケのポタージュ、新栗と秋野菜、黒ムツの照り焼きは悪くないですが量が足りない。鴨と短角牛も3切れです。未だ出しているイブリガッコのミルフィーユにスープに浸った秋田こまちのキリタンポで〆ても、まったくお腹が膨れません。エルブジと似ているのは少ないポーションだけ。皿数少なく、醤油のムースや粉末アイスはありますが、意外性ある創作料理も少なくなり面白みがなくなりました。シェフのモチベーションが落ちてしまったのか、可もなく不可もない想定内の料理。これで1万3千円では客が入るはずがありません。同じく集客に苦しむラ・ソース古賀でカレーを食べ直してやっと満腹になりました。

ここまで鮎尽くしに徹する必要があるのか、新ばし 鮎正

店名の通り島根の天然鮎が一番のウリですが、鮎の時期以外は天然スッポン、青首鴨、アンコウ、フグ、松葉蟹などの料理を出して通年営業しております。やはり初訪問は初夏から秋にかけての鮎料理が良いでしょう。カウンターと小上がり、そしてグループ対応の2階と、マスコミに露出していませんが賑わっております。特徴は男性客だけグループの多さ。接待で使いやすいのでしょう。
1万5千円のコースを食べましたが、すべての料理が「鮎絡み」であります。先付けの鮎寿司からお椀は鮎と冬瓜のすまし汁。小さい焼鮎は結構イケます。造りは鮎の洗い。そして鮎の塩焼き、うるか、うるか茄子の他、煮浸し、酢の物も鮎で最後は鮎ご飯で〆となります。正に「鮎尽くし」、ここまで鮎攻撃が続きますと有り難味が半減すると言うものです。すべての鮎が天然物ならこの価格設定はかなりお買い得。特にうるか料理とお椀の鮎を一度はお試しあれ。京料理ではメインを張る塩焼きは期待が大きかっただけに、ちょっと不満が残りました。鮎の大きさに比べて焼きが甘い。大きすぎると感じる先入観からか香りにも欠け、丸ごと食べられるとのことでしたが、頭部分が少し口に残りました。次に1時間かけて炙ると言う名物「炙り鮎」を試しました。頭を真下にして遠火の炭火で炙る料理は、大きな子持ち鮎を冷凍して10月末まで供するそうで、ほとんどの客が頼んでいます。子がびっしり詰まってかなり大きな鮎ですが、これも思ったより表面に火が入っているようには見えない。青柳系の鮎自身の脂で揚げられたようにしっかり焼き上げる鮎が好きな私には物足りなく感じました。紙越しに手掴みで頭から食べるこの鮎、身がややパサパサに感じたのは炙り方の問題か、冷凍だという先入観からか。話のタネに試してもいいですが、好き嫌いが別れるでしょう。
養殖物しかないと思っていたスッポン鍋。コースは1万7千円と「天然」の看板では安く感じます。湯引いた肝、心臓、ムネ肉の刺身は旨い。1時間半かけるという鍋は、濃縮感はないが肉自体にも自然な旨みを感じ、雑炊を食べてお腹一杯になりました。その他6300円コースであるアンコウや青首鴨もチャレンジしてみたいアイテム。傑出したものないですが、CPは悪くない店です。

京料理ではないただの宴会料理、木乃婦

創業70周年のこの老舗は、三代目若主人の戦略が当たったようでTVをはじめマスコミの露出で有名であります。京都を代表する若手料理人として、日本料理を勉強したいフランスの料理人を教えている番組がありました。しかし、この店を「京料理」の代表と海外に示してしまって良いものか。山本益博氏もべた褒めしている名物料理「フカヒレ鍋」を食しに訪れた友里の結論は、ただの「宴会料理屋」でした。
ビルですが一見料理旅館に見える外観。すべて個室対応で、2名から最大100名まで収容できます。この大宴会対応だけで店のレベルの店かわかると言うもの。大量生産の店にうまいものなし、これ定説。各種弁当、会席料理(自ら『懐石』ではなく宴会料理を意味する『会席』としている)の他、鍋コース、出前寿司、仕出し、出張料理までこなしてしまう懐の深さ。より利益を追求したいのか「披露宴」も手がけています。和食屋がケーキカットに対応するのはまだ許せるとして、「カラオケ無料」のサービスはいかがなものか。カラオケを準備している店が、まともな「京料理」を提供すると考える人は居ないでしょう。個室対応、下足番、凝ったHPと固定費をかけ、サービス料が15%ですから、CP良い料理を出せるはずがないのです。
昼にフカヒレ鍋の入ったコースは1万2千円。2階は宴会なのかドンチャン騒ぎで、個室といってもゆっくり食事を楽しむ雰囲気ではありません。
先付けにはウリの一つである「トロ握り」が2貫。脂だけの味わいない質良くない物。仕入れで不利な京都でなぜ鮪を扱うのか。なまこ、焼き魚、サーモンもそこらの旅館の宴会料理と大差はありませんでした。クラッシュアイスの乗せた鯛、甘エビ、紋甲イカの造り。1万円以上のコースで紋甲に甘エビはCP悪すぎです。スペシャリテのフカヒレ鍋ですが、マスコミに載る写真とはまったく別物。フカヒレがかなり小さく、替わりに胡麻豆腐がでかすぎ。利尻昆布、金華ハム、地鶏でとったと言うスープは不自然に甘すぎです。マスヒロさん、どこが「渾然一体」なのか。〆の鯛飯もまったく凡庸でした。若主人は東京・吉兆で修業したとのことですが、その面影はまったく見られませんでした。「大箱店」に旨いものなし。定説です。

2006年11月03日

ブラッスリーというより立派なビストロ料理、クワン

いつから人気スポットになったのか世田谷区の三宿。新しい飲食店が次々出来ているようですが、私はこの「ブラッスリー・ドゥ・クワン」訪問で初めてこの地を訪れました。池尻大橋から徒歩10分ほど。近辺にはやたらとラーメン屋が目立ちます。交差点近くの小さなビルの4階、カウンターとテーブル席で総数20席弱、厨房二人、ホール一人の小さな店。ブラッスリーというと、簡単な食事とワインの店のように感じますが、この店は立派なビストロ、値付けの安い料理が40種以上用意されています。サラダ、フォアグラ、リエットなどツマミになる小皿前菜が500円前後で20種近く。まずはビールが進みます。和牛のタルタルやシーザーサラダなどの前菜はハーフポーションも用意されていて千円前後とこれまた気軽な値付けで10種近く。肉は鴨、豚、鶏、和牛と2千円前後で4種の他、前菜も含めて本日のおススメが黒板で別に用意されています。ワインも3千円から1万円までの範囲ですが主体は5千円前後。値ごろ感ある安いワインを揃えています。安くて豊富なメニューを見るとつい多めに頼んでしまいがちな友里。パテ、リエット、ラタトゥユなどビストロ定番はまずまず。オニグラや仔羊のリードヴォーも結構イケました。自家製のブリオッシュは目の前で焼いていて250円。余りパン系に興味がない友里ですが、これは旨かった。グリーンサラダにプラス400円でトッピングできる生ハムは、質は普通ですが量もたっぷりで○。鴨コンフィ、地鶏とフォアグラの重ね焼き赤ワインソースといったスペシャリテもしっかりした味付けで満足しました。オープンキッチンには2人だけしかいませんが、手際よいシェフとスタッフはストレスなく次々料理を供してくれます。かなり食べて飲んで9千円くらい。もう少し安いワインでしたら7千円で終わるでしょうか。同じビストロ料理でも浅草の「モンペリエ」とは種類、CP、完成度が違います。問題点は一つ。カウンター付近は厨房の換気装置の能力が不足しているのかオイルミストが蔓延しています。ぜひ換気装置を改善していただきたいものです。気軽な服装(油をかぶります)、気軽な予算で数多い美味しいビストロ料理を楽しんでください。

ゆったり出来て主人も威圧感ないのだがちょっと高め、すし処 宮葉

昔からある知る人ぞ知る浜松町の江戸前鮨屋。私は週刊誌でこの店独特の相汁(ともつゆ)という煮ハマグリの漬け込みを知って訪問しました。
つけ場には主人と年配の2番手二人。ショーケースがありますから、最近の店ではないことがすぐわかります。しかしこのショーケース、高めに位置し出し入れの扉がスリガラスですので、ブラインドとなり職人の手元がまったく見えません。タネのどの部位をどう捌いているか、まったく確認できないのが残念です。
お決まりや吹き寄せチラシもありますが、この店ではお好みやお任せを頼むべきでしょう。
酢飯はショッパすぎず甘すぎず、しっかり主張していて万人向きです。握りは適度な大きさで主人の手数は少なく、すばやく成型します。江戸前鮨は如何に手数少なくしっかり握るかが勝負の分かれ目。掌や指の接触時間が少ないとタネが温まらないからですが、最近の職人は技術がないからかやたらと弄繰り回し、最後の成型をまな板に置いて両手でしているのをみることがあります。ぜひ、この主人の握りの手際よさを確認してください。
ツマミの種類は多くないが産地直送で時期的に珍しいものが揃っているのも魅力的。春先でしたが、なぜか眼高鮑、天然の稚鮎などレアタネもありました。江戸前鮨としての仕事振りも悪くありません。タネ質は鮪を含めて上の部類か。ヒラメ、サヨリ、カスゴなどの〆ものもしっかりしています。そして一番のお目当てだった煮ハマ。この店ではハマグリの漬け込みと呼ぶそうですが、相汁に握りごとつけて食べます。当然酢飯はほどけるので、最後は汁ごと飲み干します。この相汁、ゆずの香りが強く結構甘い。私は普通にツメをつけた握りの方が好みですが、話のタネに試してみてもいいでしょう。貝類や穴子など煮物もまずまずと、傑出したものはないまでもタネの平均レベルは高い。ビールにぬる燗を飲み、ツマミ少々に握りで2万円弱。再訪時は、調子に乗って稚鮎や鮑をかなりつまんでしまい2万5千円を突破してしまいました。立地条件を考えると安い店ではないですが、ゆっくりお酒も楽しめ、主人の手際よい握りも楽しめます。知られていない店ですが、友里おススメの鮨屋の一つです。

あの店は今・・・、ラ・ソース・古賀

久々にランチ時に訪れたのは今年の5月下旬。客が少ないのは相変わらずでしたが、店内の雰囲気が変わっておりました。そしてカレーのトッピングも仔羊がなくなり3種だけに。メニュー削減は、不振による閉店間際の足掻きかと思ったのですが、実はオープンして1年経たずに大きな賭けにでたようです。まずスタッフとして古賀シェフの妹さんを投入、店内が明るくなりました。彼女によると、5月半ばにカウンターを短くしテーブル席を2列に増卓。銀座の夜にカレーだけでは無理なことにようやく気づいたのか、ビストロ料理中心の店にリニューアルしました。飲食店がコンセプトを変えるのは大変勇気がいることです。当初の失敗を認めることになるからですが、ビストロ料理が書かれた黒板を見て友里は夜に初めて訪問したのです。
いくらか客は増えたようで、かなり席が埋まっております。カレーの厨房設備からの転換には限界があるのか、サラダの盛り付け、ポトフの最終仕上げ、生ハムのカットと盛り付けはカウンターのサービス責任者が自らやっておりました。よってツマミも含めて皿出しはかなり遅い。ビストロで簡単な料理がすぐ出てこないのはストレスが溜まります。また、「イベリコ ベジョータ」が千円からとその安さに驚きましたが、よく見ると置いてある生ハムはどう見ても「前足」。「ハモン イベリコ」は「後ろ足」限定ですからこれは「ハモン」ではありません。安いはずです。シーザーサラダ(600円)は値段なりに小ポーションで小売用のパルミジャーノを目の前で振りかけていました。興ざめ。小鯵のエスカベッシュ(揚げ浸し750円)、ブイヨンで煮込んだトロトロほほ肉(1800円)はまずまずながら、ラッキョウ付の酵素豚リエットはツメが甘く鴨コンフィ(1600円)もボロボロ過ぎてポーション小さいと、代表的なビストロ料理が弱く量が少ないのにはがっかり。仔羊のグリエ香草ソース(1700円)も変なソースよりジュで仕上げるべき。クスクス、ブーダン、シュークルート、パテ、牛ロースなどの代表的なビストロ料理もなく、メインも仔羊、ほほ肉、鴨だけでは寂しい。カレーやブイヤベースを残すより、メニューを増やすべきでしょう。これでは、2回目のコンセプト変更も近いかもしれません。