メイン | 2006年11月 »

2006年10月29日

昔の面影はないくらいさびしい、はやし

高額天麩羅のハシリの店でした。既にその役割を終えたというか、完全な賞味期限切れになった文藝春秋社の「東京いい店うまい店」では発刊当初から現在まで最高評価の5つ星にランクされています。一昨年、執筆人はじめ店選定を一新してテコ入れをしてきましたが、参考にしている人が少ないのか最高評価しても影響力がないようで、集客に苦労しているのではないか。私の訪問時は我々以外、外人を含め一人客が2人居ただけでした。
引き戸を開けるとカウンターは8席ほど。「みかわ」が3回転、「近藤」も2回転するほど盛況なのに比べて、キャパの小さなこの店で、カウンターが半分も埋まっていないのには驚きました。なんとも寂しい限り。
お任せコースが始まる前の主人のパフォーマンスはいらないのではないか。
客に生きた海老を3尾わざわざ見せるのですが、こんな安っぽいサービス、食べ慣れた客にはまったく不必要。ミーハー向けのこのサービスは食通や食べ慣れた客には逆効果というものです。
その海老3尾は、最初は半生、次が強めの揚げ、最後は客のお好みの揚げ方で供されます。客の好みに合わせる融通の利く店と感じるか、海老はこの揚げ方が一番といった職人の拘りがないと感じるか。私はなぜこんなつまらないサービスをするのか、店の格を落とすだけで何のメリットもないと考えます。肝心の海老ですが、タネ質は上レベルで旨みを感じましたが、私はより旨みを引き出す揚げ方で3尾続けて食べたかった。タネが大振りだとの評判ですが、その割に種類は少ない。大きな椎茸はよかったですが、スミイカではなく肉厚もあるモンゴイカはイマイチ。しし唐、ふきのとう、銀杏、キスなどの後、生っぽい穴子には驚きました。低温で揚げることを一つのウリにしているようですが、穴子は高温でカリッと揚げたほうが美味しいはず。埋没気味で、低温揚げを全面に出したいのでしょうが、タネに合わせた柔軟な揚げ方が必要と考えます。
刺身もなく、〆に掻き揚げもでません。豆腐ベースのフリカケでご飯を2膳食べてようやくお腹一杯になりました。お酒を飲んで一人1万8千円前後は、タネ数少なく、刺身なく、掻き揚げもない「3ない状態」で、余りにCP悪過ぎです。客が少ないのは当然です。

若手料理人の中でも秀逸な京料理、祇園 花霞

京都ブームは相変わらず続いているようです。秋になると、「京都特集」をうつ雑誌が乱発され、数多くの京料理店が紹介されています。ミーハーな私も「花霞」をそのような雑誌で知りました。昼間から女性観光客で一杯の割に美味しくない自称京料理店が多い中、この店は当時客が入っていなかったのですが、昼に訪れてその良さを確認、日をおかず夜再訪したくらい印象的な店でありました。後に板長は「祇園 丸山」系列で修業したと判明。高いがしっかりした料理を出す店出身と知り納得したものです。
四条の「祇園ホテル」向かいの路地を上がった左側、CP悪い有名店「千ひろ」のチョイ手前にあるカウンター主体の店。料理人と女性の二人だけで切り盛りしております。
昼夜平日訪問しましたが、満席ではありません。しかし、電話問合せや飛び込み客を断っていましたから、前日までの予約が必要なようです。
昼は5千円から1万円までのコース。夜は1万円から2万円くらい。決して安い店ではありませんが、CPは抜群で支払い後満足して店を後にすることができるでしょう。
寒い時期はまず生姜湯で体を温めてから綺麗に盛り付けた先付けが登場。見た目だけでなく中身もうまい。そしてお椀。和食は出汁が命、よってお椀は華というのは誰でも認めることだと思っていたのですが、料理店評価業界の異端児、J.C.オカザワ氏は、和食は刺身だけと勘違いしてもっぱら鮨屋で和食を代用。出汁やお椀の重要性を認めない、いや理解できない可哀想な人なのですが、彼にもぜひ味わっていただきたいのがこの店のお椀です。椀タネに関係なく皆美味しいのは腕が良いから。そして、造りの鯛の質も悪くはない。出汁が良いから当然炊き合せも旨い。そしてその野菜も拘っているからか美味しいのです。夜の訪問では、ちょっと気張って2万円コースをオーダーしてしまいましたが、丹波だと記憶していますイノシシなど凝った食材で、支払いに充分見合うCPの良さを感じました。
水が違うから出汁がより美味しいのか、読者の皆さんには、ぜひ京都観光の折にはこの「花霞」で京料理の奥の深さを味わっていただきたい。最近はかなり混みあっていると聞きますので、早めの予約をおススメします。

酢飯は緩いがツマミが充実している、すし 椿

ここ数年、銀座や六本木、西麻布で鮨屋の出店ラッシュが続いていますが、この店も昨年オープンしたばかり。鮨オタクは見かけませんが、接待系や同伴系の客で盛況です。
出資者は別なのに、店名に自分の苗字をつける自称オーナー職人が多い中、この「椿」の若い板長は雇われであります。いくつかの店で修業したといった経歴も、最近の若手職人のお約束。一つの店に縛られることなく、何軒もの修業先から職人仕事を良い所取りで身に着けられるわけです。和食ほど覚える技術が多くないのは当の鮨職人が自覚している事実。鮨屋での修業経歴ゼロをウリにしていた「鮨 なかむら」が順調に運営されているくらいでから。仕入れるタネ質に拘り、手間を惜しまない江戸前仕事に専念すれば、マスコミが煽って作り出した鮨ブームの現在、集客は計算できるのです。
店内は余裕の配置で、板長が仕切る大きな檜のカウンターの他、別室にもカウンターがあるなど豪華。2人の女性スタッフに、和装のオーナーマダムも待機していますから、固定費はかなりのものと推測。よって高めの客単価を目指す為に、ツマミに力を入れた方針をとっております。乾された多数の自家製カラスミがあるつけ場。普通の鮨屋には見られない光景であります。
お任せでツマミから入るとかなりの酒肴が供されます。ヒラメや鮪、〆さばといった鮨タネだけでなく、この店独特のツマミも面白い。山葵につけた明太子、蒸たてのアン肝、スルメイカのワタの味噌漬けなどはお酒が進みます。炙り鯖、鰤のヅケ、玉子焼きも江戸前以外に出汁巻きもあるなど、ツマミの種類は10を軽く超えます。初回の訪問ではそのツマミの充実がすごく印象的な割に、握りの記憶がありませんでした。ツマミにくらべて握りに主張を感じなかったのです。酢飯がかなり緩い。酢や塩を控え砂糖を少し入れた酢飯は、何貫でも食べ疲れしないと味のわからないフードライターが雑誌に書いていましたが、緩い酢飯は食べ疲れる前に食べ飽きてしまうのではないか。オミヤとして太巻き(これが結構美味しい)を用意するなど接待客に絞った運営が功を奏して今のところ順調なようですが、客単価は2万5千円前後。競争厳しい銀座では、握りの充実をはるべきではないかと考えます。

2006年10月23日

観光地の飲食店のようにクオリティが低い、カステッロ

地元だけではなく、神奈川や東京からの客で盛況だと紹介され、山本益博氏も絶賛している佐倉のイタリアン「リストランテ カステッロ」。所要で近くへ行くことになり、当日何とかランチの2回転目の予約がとれました。家人とナビを頼りにたどり着いた先は、まったく想定外の佇まい。住宅街というより山地の高台にそのカステッロ(城)はありました。まずは、郊外ファミレスも真っ青な大駐車スペースに驚きです。しかも満車。第二駐車場を教えられ高台を降りて道向こうに作られたスペースに駐車し、トボトボとまた高台へ戻るのは辛かった。しかし、停めてある車のナンバーは、千葉、習志野が主体で東京や神奈川が見当たりません。そして店内へ入って再びビックリ。無茶苦茶大箱な店なんです。ホールも3つくらいに分かれていて、総席数は70を超えているのではないか。行く度に席が増えているといったネットのレビューもありました。先に入店した家人の座るテーブルを探し出すのが一苦労。そして客層も凄い。ベビーカーを席に横着けした乳児連れのママさんグループに、ジョギングの途中なのかジャージや短パン姿の夫婦。ドレスコードがありません。グループ客もやたらと多く、ほとんどが店前で記念写真を撮っていました。テーブルチェックができるのですが、大半の客が入り口のキャッシャーでチェックしていたのも印象的。テーブルには紙のクロスと紙ナプキン、とこのリストランテは、駐車場に観光バスはないですが、観光地の店と同じような雰囲気をかもし出しているのです。まったくリストランテの拘りを持たない店。スタッフは各人がオーダーした料理を覚えておらず、料理を運んで来る度に必ず誰が食べるか確認します。こんな大箱でサービスもお座なりな郊外ファミレスと間違う「自称リストランテ」の料理が絶賛に値するはずがありません。シェフお任せ(5800円)を食べましたが、自家菜園をウリにしている割に野菜は添え物を含めて無いに等しい。8皿と数は多いですが、どれも印象に残る食材、質、調理ではない創作イタリアンです。良く言っても万人にわかりやすい味。濱崎、ギオットーネのダウングレード版というところでしょうか。しかし、最寄り駅から徒歩20分はかかるこの立地は車なしでは訪問が難しい。よってワインなど酒類の販売に期待できず、粗利を確保するため大箱とクオリティ低下に奔っているのでしょう。ご近所ならいざ知らず、県外からわざわざ出かけていくのは、費用と時間の浪費であります。

訛った突っ込み連発のお笑い劇場、やまいち

銀座4丁目、並木通りのカウンター8席のこの鮨屋は、主人と女将と弟子一人で客単価2万円以上を狙った高額店であります。私は「トーキョー スタイル」という雑誌の2ページ使った紹介記事を見て昼夜訪問しました。注目したのが、「寸止めの江戸前仕事」と「〆ものは客が来てからはじめる」というキャッチ。よくフードライターがお椀の出汁の褒め言葉で使うこの「寸止め」。出汁の味わいがどう寸止めなのか恐らくライター本人も説明できないと考えますが、主人からも明確な説明はありませんでした。コハダなど〆物は確かに客に出す前に酢で洗っていましたが、塩振りや酢の本〆は既に処されておりました。雑誌の煽りキャッチを真に受けた友里が甘かったということです。
茨城県ひたちなか市の「照寿司」を閉めて数年の充電期間をおいて銀座へ進出してきた主人に女将。その地で客単価1万円を超えていたと言いますから、客がそう入っていたとは思えません。噂では円満閉店ではなかったとも聞きますが、銀座のこの店は観音開きの氷冷蔵庫に流しっぱなしの小さなシンクと最近の流行を取り入れた割と豪華な内装。良いスポンサーがついたのでしょうか。
前日までに予約すれば昼も営業しますが、今のところ昼夜とも客少ない店内では、茨城訛りの主人の声が響き渡ります。女将との掛け合いのほか、客への突っ込みも頻繁で、緊張感など無縁の鮨屋、というよりお笑い芸人のトークを聞きに来ているようなものでした。昼は1万5千円超、夜はトーク代も入っているのか2万5千円を軽く突破と支払額はかなりの高額。ツマミが何点かついているとはいえ、「茨城弁劇場」を考えてもやや高めなので、最初は昼の訪問をオススメします。
肝心の鮨の事を書き忘れるところでした。この店の特徴は酢。赤酢と黒酢に砂糖が少し入っていると思われる酢飯は、しっかりした味わいで「水谷」とは違った主張をしております。結構友里の好み。生姜も甘からず辛からず、鮪を含めてタネ質も上レベルに入るでしょう。握りには、やや甘めに感じる煮切りとツメの他、炒り酒もタネによって使用するなど面白みもあります。しかしツマミは、焼き物が若い衆の技量の限界なのかベチャベチャ、焚き合せも凡庸と期待はずれだったのが残念です。最近は「椿」など創意工夫したツマミを充実させる鮨屋が増えているだけに、この夜の請求額ではCPが悪く感じてしまいます。主人のトークは別にして、ツマミの質を上げれば、このタネ質、酢飯、仕事振りと悪くないだけに客が増えると考えます。

鰻屋にしては料理が多すぎる、いちのや 西麻布店

流行っていなかった和食屋跡に出来た一軒屋の鰻屋、いちのや。私は「やらせ」のTVを見るまで、この鰻屋の存在をまったく知りませんでした。2年前の年末だったと記憶しております、ホテル西洋銀座で行われた一人100万円のディナー(宿泊費別)の放映。世界的に有名なワイン評論家、ロバート・パーカー氏の出版記念として、彼が選んだ究極のボルドーワイン12本と、有名シェフ、ロブションが食材に糸目をつけず調理する料理が出ると言っても、100万円は余りに高いのではないか。同時期、同価格で恵比寿の「ジョエル・ロブション」でも企画されましたが諸般の事情で中止になったくらいですから、参加者を集めるのは大変だったようです。この「究極の晩餐会」、番組の後半は参加者をレポートするもので、その一人が「いちのや」の若き主人だったと言うわけです。取材に応じる条件だったのか、参加者が集まらず頼み込んだからか、しっかりこの鰻屋を番組で紹介していましたから、仮に主人が100万円払ったとしても充分元が取れたと考えます。
川越や神泉にもあるという「いちのや」、レトロな内装で外観は悪くないのですが、テーブルに常備されている灰皿、席で携帯使い放題の客、と環境は良くありません。鰻重が2800円以上と他の有名処より強気の価格設定で、鰻が入る会席コースが7500円から1万5千円まで用意されているなど、ただの鰻専門店とは違います。しかし、居酒屋メニューのもずくや秋刀魚から、高額和食の鱧、石鯛まで扱う間口の広さに私は疑問であります。和食屋が鰻を出すならともかく、鰻屋が出す高額食材を鰻屋の調理技術で食べて満足できるでしょうか。単品専門店と和食では技術のベースが違うのですから、ここでは鰻だけを味わった方が無難であります。さて肝心の鰻重。オーダーしてから50分近く待たされます。会席コースでも、料理の順番に関係なく鰻が焼けたら直ぐ出すそうですから、マイペースな経営です。待ち時間に食したうざく(900円)、この鰻だけどうして早く焼けるのか疑問でしたが、まったく凡庸。肝焼きも普通レベルで、待ちわびた鰻重は蒸し過ぎなのかただ柔らかく、タレも甘すぎ。秘伝のタレといってもベースは醤油と味醂の調合だけですから、このうたい文句に乗せられてはいけません。野田岩よりも柔らかいかもしれない食感のない蒲焼、もとい、「蒲蒸し」に値付けの高い日本酒と二三のツマミを頼んで軽く5千円突破。高額店の養殖鰻に差があるわけではないだけに、わざわざ行く必用はないと考えます。

注)
掲載後、「いちのや」の主人からクレームがあったそうです。公平を保つため、先方の言い分も載せさせていただきます。
「鰻屋が出す高額食材を鰻屋の調理技術で食べて満足できるでしょうか」に対して、「ウチは4人の和食専門の調理人を雇っている」
また柔らかすぎる鰻重について、「これは当店独特の技術だ」
そして、100万円ディナーTV出演の件では、「あれはテレビ局に頼まれ、引き受けただけ。自分から売り込んだわけではない」

鰻がウリの店で、和食専門の料理人を常時雇っていては、固定費がさぞかしかかることでしょう。CPは当然落下すると誰でも感じてしまいます。
柔らかいのは「蒸し」を強くしただけだと思うのですが、これを独特の技術というのでしょうか。
確かTVでは、100万円ディナーの参加者を、帰り際任意に声をかけて取材すると言うスタイルでした。
自宅拝見の後、本業を聞いて店の紹介をしていましたが、「頼まれて(出演を)引き受けた」となると、あのTV番組は完全な「やらせ」だと認めることになります。TV局としてはこうはっきり宣言されたら困るんではないでしょうか。

2006年10月14日

週刊現代掲載記事 ワースト10店

行ってはいけない過大評価の人気店 ベスト10

評価本や雑誌で絶賛の店へ行ってはその不味さ、CPの悪さに唖然の繰り返し。その憤りの集積が3年前の友里征耶デビューのきっかけであります。絶賛記事と食後感のギャップは何故あるのか。自称料理評論家の山本益博氏、ジャーリズムの欠片も持ち合わせない自称レストランジャーナリストの犬養裕美子氏を双璧とするヨイショ系ライターや有名グルメブロガーが、味やCPに関係なく書いた煽り記事を信じたことが間違い。料理人や経営者への接近、いや癒着が元凶なのですが、元々味がわからない人達だと言った方が的を射ているかもしれません。今回は「食材の秋」を意識しての「過大評価」な人気店を斬りつけます。

「六本木 浜藤」フグ料理
HPでは天然フグ以外にも使用食材に拘っていると力説していますが、「浜藤てっちり行進曲」や店主の応援歌を聞くとまともな店には思えません。べた褒めしているブロガーはこの店が串揚げの「法善寺串の坊」系列であることを知っているのか。「ピザーラ」経営の「ジョエル・ロブション」を持ち出すまでもなく、廉価店経営会社が運営する高額店にCP良い店なし、は定説であります。半年クローズしているので理論的に固定費のってCP悪くなるのは当然。皿にこびりついた薄い刺身はかなり前に盛り付けたもの。ぶつ切りを追加して天然とはいえ質の凡庸さが確認出来ました。白子焼きは皮が厚く、から揚げも期待はずれ。歌にまでなったてっちり、生米から造った〆のリゾットもフグが並なので滋味を感じません。最初からヌルいヒレ酒を頼んでフルコースで3万円前後。この食後感ではCP悪すぎです。この店のフグが最高と信じたら、今後のフグ人生を誤ります。

「ル・マンジュ・トゥー」フレンチ
マスコミの絶賛に勘違いした谷シェフ。リニューアルの工事現場で、コックコートを羽織って脚立に登り、図面を見ている写真が雑誌にありました。下手なポーズを作るよりCP良い旨い料理を造れ。彼の口癖は「僕は天才じゃない」だそうです。引退するまで精進して客が満足する料理を造りたい、と考える真面目な料理人が語る言葉ではありません。謙遜したつもりで内心は「天才に近い」と思っているのですからお笑いです。今春、リニューアルした店は値上げして小ポーション8皿のコース(1万円)だけ。スプーンに乗せた玉子はトリュフを節約してピュレをかけた一口料理。そして旨みを感じない馬肉とエスカルゴ。アスパラ料理は肝心の頭の部分がありません。ランド産鳩も血のソースが緩くて凡庸。パンはバケットのみ、メープルシロップと果糖をかけるフレッシュチーズの後、山盛りのデザートで腹具合を一杯にさせる方針はいかがなものか。皿数を増やして価格を上げ、食材を落としたこのリニューアル。谷シェフが「儲けの天才」なのは間違いないでしょう。

「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」フレンチ
スタッフが嫌な思いで勤務しているのですから、支払額に見合う上質なサービスに巡り合うことはありません。シェフとマダム、性格がかなりキツイそうで、労働条件が悪いだけでなく従業員に対してかなり高飛車だとか。オープンして3年足らずで、ロオジエに勤めていたマネージャーなどサービスのプロやソムリエが皆辞めてしまいました。HPではマネージャー、ソムリエ、キュイジニエ、パティシエ、サービス、レセプションとすべてのポジションを募集していますから、ベテランは残っていないのでしょう。小田原という立地の妙が後押しして、都心の客を中心に人気が出たのが勘違いの元。鼻っ柱の強いシェフとマダムが増長しての青山への移転。オープン時にあった1万円以下のコースをやめ、1万5千円、2万5千円とグランメゾン級の価格設定にしましたが、食後感が良かったと食通の方から聞いた験しがありません。山本益博氏とは疎遠ですが、もう一人の大御所、犬養裕美子氏の掟破りのバックアップが、実情を知らない方や業界人を呼び込んでいます。オープン前の段階で雑誌や自著に絶賛記事を書いた犬養さんの罪は重い。秋の白トリュフ料理は異常に高いので要注意。勘違いしたシェフとマダム、素人同然のサービススタッフ、これでも貴方はナリサワを訪問しますか。

「キャンティ 飯倉本店」イタリアン
マスコミに露出していませんが、日曜だというのに年配客を中心に満席な老舗店。メニューの料理は少なく高い値付け。前菜は生ハムとメロン、エスカルゴなど古臭いモノが2千円以上、パスタはバジリコ、トマト、ナポリ、とこれまた日本式ネーミングで2千円以上、メインは仔牛、若鶏、牛ヒレしかありません。価格は4千円以上。メニュー外の前菜ワゴンサービスは、適当に選ぶと一人4千円前後になってしまいます。バジルのパスタは、本場のジェノヴェーゼとは違う昔の日本風。トマトソースも同じ。おススメのフィオレンティーナは、仔牛にホウレンソウのグラタンが乗った変なもの。食後のチーズはラップでくるんだままでした。ここはイタリアンというより高いイタリア風「洋食屋」。当時本物を知らない人にはウケたでしょうが、日本でも地元専門料理店が注目を浴びる時代です。本物を知っている客がこの料理で満足できるはずがありません。安い1万円以下のワインを1本頼み4名で総計8万円ほど。この雰囲気、この食材、この調理では余りに高い店であります。

「ピアット スズキ」イタリアン
正に居酒屋といった人口密度が高い繁盛店。「ヴィーノ ヒラタ」出身のシェフ、深夜営業、の2つがウケているのでしょうが、私にはCP悪く量が少ない業界人向けの店としか思えません。ワインの値付けも高く、前菜、パスタが2千円前後、メインは肉系がカツレツ、仔牛のTボーンと種類が少なく力を入れているとは思えない。また秋だからと気安くメニュー外のフレッシュポルチーニを頼んではいけません。4人分のタリアテッレで一人当たり4千円弱の請求額に驚きました。料理はフルに食べるとワインを1万円以下に抑えても2万円を突破。深夜営業、パスタで終了可、傑出した料理ナシ、ハーフボトル多し、人口密度高し、と本格イタリアンではなく業界人好みのワインバー。この客層をターゲットにしている限り、料理やCPの改善は望めません。料理やワインをCP良く味わいたい方が訪問する店ではありません。

「桃花林」 中華料理
オークラの料理店の中では盛況で稼ぎ頭だとか。昔からの年配常連客に支えられているこの店は、ジレンマに陥っているそうです。中華料理の悪弊、「化学調味料の使い過ぎ」からの脱却を試みると、今迄の味に慣れた常連客から「味が落ちた」とクレームがつくとの嘆きを漏れ聞きました。最近は舌の肥えた客の要望で、高額店は使用しない傾向にある「魔法の粉」。店を育てる常連客が桃花林の「化調放棄」、すなわち近代化を妨げているのですから皮肉です。広東料理の店ですが、コース料理はボケ味の四川や上海料理が入っていてCPも悪い。では単品料理が良いかというと、鯛の広東風刺身は口中に残る後味が気になります。貧弱なフカヒレ姿煮は上湯ベースではなく醤油を多く使ってラクしています。空芯菜の炒め物は肝心の茎の歯ごたえを感じずベチャベチャ。海老の紹興酒風味石焼き蒸しも特製つけダレが最悪。〆の焼きソバも後味悪いと、あまりに化学調味料入れすぎです。この店の味に慣れてしまうと、貴方の「舌」はまともな中国料理だけでなく上質な和食、特に出汁の味わいがわからなくなる危険があります。

「築紫楼」中華
恵比寿のバス通りにあった小さな店が、多店舗展開すると誰が予想したでしょうか。確認しただけで恵比寿店の他、広尾店、丸の内店、日本橋三越店、八重洲店、名古屋店に加えて、ゴージャスな銀座店まで出していました。こんな短期間で料理人を養成できるのか、「フカヒレ」で有名だが本当は何料理なのか。各店舗のベースが違うのですから呆れます。恵比寿店は四川ベースでコースは3800円から。広尾店は活け魚と黒毛和牛をウリにコースは6千円から。三越店は北京ダックを自慢しコース価格も10500円とアップ、名古屋店は中部国際空港にあるのでスピードメニューや香港風焼き物がウリ。八重洲店は数百円の小皿料理も出す麺専門店です。勘違いの極地は銀座店。豪華な店内で、水槽の魚や10種のフカヒレをウリにしています。最高55000円のコース設定ですから身の程知らず。このチェーン店のウリであるフカヒレはすべて醤油煮がベースです。調理レベルがわかる上湯ベースでないところがミソ。他の料理も調理レベルは低く化学調味料など添加物に頼りすぎです。わざわざ出かける本格中国料理ではありません。

「喰切り 江ぐち」スッポン
神宮前で評判だった鼈をウリにした割烹が西麻布へ移転してきました。当初は住所や連絡先が未公開でしたが、最近の雑誌では「紹介者が必要」としながらも店データを開示しています。私は雑誌に載る前、西麻布付近を散策中、「会員制」と書かれた板の横に張られた電話番号を発見、即「紹介者無し」で予約を入れたのです。(笑)ワイン以外の酒類が飲み放題とはいえ、鼈鍋と雑炊の前は、時雨煮の先付け、トロ握りの他、小料理3皿だけで3万円。鍋にフカひれを加えると4万円です。滋味を感じない鍋の鼈は、肢肉がわずか1塊。丸ごと仕入れているとのことですが、エンペラや肝が見当たらず甚だ疑問。鍋は造り置したものを熱した小鍋に移し変えてくるだけですから有り難味もありません。料亭でも鼈の仕入れ値は4千円前後と聞きました。食後感を考えると余りに高い店であります。

「分とく山」 和食
長島茂雄氏の要請でアテネ五輪へ弟子連れ食材もって選手の食事を造りに行った野崎さん。長島氏も贔屓の店とは知りませんでしたが、このドキュメンタリーを放映しては更に客足が遠のくというものです。芸能人、業界人、プロスポーツ選手の溜まる店に旨いものなし、これも定説であります。今も盛況のようですが、食通の方は通っていない、少なくとも再訪はしていないはず。1万5千円のコース料理はCP悪く満足できないと言うことです。野崎氏は毎日店に出ているのですが、いかんせん出る料理がほとんど駄目。特にお椀の出汁が力不足で炊き合わせも期待できません。造りも質が悪く、名物の鮑の磯焼きは、よくこんなトコブシみたいな小さな鮑を見つけてきたと感心、岩海苔の強い味が見事に質の悪さをカバーしておりました。〆のご飯物まで10皿ほどの料理はどれも一流高級和食のレベルに到達するものはない。元弟子が近所に開いた「霞町すゑとみ」の方がレベルは高く価格も3千円安いという現実。利益を追求した店はCPが悪いという証左と言えます。分店の飯倉片町店、伊勢丹店も同様。この店の料理で満足していたら、京都の名店ではあまりの美味しさに腰を抜かすことでしょう。

「田吾作寿司」 すし
今年の訪問寿司屋ワースト1、いや友里寿司史に残る店となるでしょう。練馬駅から徒歩10分以上、主人と女将の小さな店ですが、知られざる名店と言われていますのでずばり書かせていただきます。この店の「創作寿司」が美味しいと感じる方、鮨巡りを一からやり直ししてください。ツマミの合間にも握りを出すお任せスタイル。お土産の太巻きをいれて一人1万5千円以内で終わるのですが、出てくるツマミや握りは基本が出来ていません。酢飯は家庭用の「スシの子」を使っているのかと思いました。不味い。当然コハダ、カスゴといった江戸前仕事も基本から駄目、タネ質も都心の有名店よりかなり落ちます。では得意の創作寿司はというと、「アン肝レタス巻き」はアン肝、奈良漬を酢飯と共にレタスで巻いたもの。鮨通にはキワモノと感じるタネの取り合わせで、濃い味のタネが口中でバラバラ。のんべえ巻きは海鼠腸、ホッキ、アオヤギを海苔で巻いたもの。癖の有るタネをどうして一緒に使うのでしょうか。腕の良い職人が質のよいタネを使ってCP良く提供すれば、黙っていても客が来るはず。腕が無いから話題造りで創作に走るのでしょうが、基本あってこその創作料理。まずは主人に酢飯の切り方から勉強し直していただきたい。

業界人が喜ぶ不自然に味濃いフグ、めうが

半年しか営業しないこの天然フグ屋は店名を「みょうが」と読むそうです。最近放送作家がグルメを気取って飲食店紹介に励む姿をよく見ます。しかし秋元康氏、小山薫堂氏などのおススメ店を見る限り、味がわからない似非グルメとしか思えません。ハングリーだった不遇時代の反動なのか、売れると頻繁な店訪問に奔るようですが、歳をとってからの短期間では舌を育てることは難しい。そして、この二人よりかなり格落ちながらグルメ番組に関わったことでグルメになったと勘違いし、飲食店紹介雑誌への登場に飽き足らず役に立たない「煽り本」を上梓してしまった「すずきB」氏が絶賛していたのがこの「めうが」です。
赤坂小学校裏のビル地下。客単価3万円以上の高額フグ屋とは思えない居酒屋然とした店構え。入り口にビールや酒の瓶を放置し、カウンターと小上がりの雑然とした店内。テーブルには紙おしぼりと灰皿がセットしているところを見て、期待は一気に萎みます。無口な主人と女将のこの店は、原則コースしかありません。トマトにマヨネーズをかけた突き出しを見て観念しました。マヨネーズを躊躇なく使う高額店の存在が信じられません。味濃すぎる煮凝りは上品さを感じず、評判の「分厚いフグ刺し」は確かに有名店と同じく厚い切り身ですが、昆布で〆ているのか、化学調味料を添加しているとしか思えないほど変な「旨み」が強すぎです。不自然な味に飽きてフグ刺しを残したのは生まれて初めてでした。小さな白子焼きはレモン以外にポン酢がついています。質が良くない。から揚げは驚いたことに揚げだし豆腐の出汁のようなものがつき、衣自体にも味をつけています。B氏絶賛の焼きフグは、赤い粉の入った味塩のようなものをつけて食べるもの。これまたフグ自体より添加物の味しかしません。フグチリは量が少なくフグの旨みも出ていない。そして雑炊は、予想通り厨房へ一旦戻してかなり味濃くなって帰ってきました。雑炊を客前で造らず厨房に戻すフグ屋は、化学調味料の添加を疑わなくてはいけません。香の物にもばっちり味の素がかかっていましたし、デザートの苺にはなんとコンデンスミルクがたっぷり。マヨネーズ、コンデンスミルク、化学調味料を何ら憚らず使用する高額フグ屋。業界人や作家など文化人の嗜好にあわせているといってしまえばそれまでですが、こんな偽装の味付けで、高額請求してよいものなのか。彼らが添加物好きで味がわからない人種であるという証左。有名無名に関係なく、放送作家、文化人の店ヨイショを信じてはいけません。

赤酢の酢飯だけがウリではない、すし処ととや

読者からのススメもあって今年初めて行った歌舞伎座近くの江戸前鮨屋。8席のカウンターと荷物置きにしか使われていない小上がりがある、主人と奥さんだけの小さな店であります。友里としては再訪を繰り返す数少ない鮨屋の一つ。「しみづ」とはまた違う雑然とした店内がやや気になりますが、供される握りがそれを充分カバーしております。
まず何と言ってもこの店の一番の特徴は酢飯です。かなり寝かした赤酢と塩で切るやや硬めの酢飯は、極端に酸っぱくも塩っぽくもないですがしっかりした味わいで印象的です。最近は酢飯に赤酢を使う店が増えてきていますが、ただ入れればよいってものではないことがこの店の酢飯を食してわかるというものです。
赤身、中トロなど生のタネもありますが、煮る、〆るといった一仕事した江戸前タネも質、調理とかなり高いレベルにあります。赤酢の酢飯だけではなく江戸前仕事のタネを使った握りとして東京では上位に位置する店と言えるでしょう。
スキンヘッドの主人は一見怖そうですが、奥さん共々気さくで変な緊張感もありません。小さな店内ですからグループや接待には向いておらず、一人、せいぜい2人で訪れてください。月曜が定休日で、火曜と週末は昼営業していないようですが、ねらい目は平日の昼間。夜と違って客が少ないのでゆっくり鮨を楽しむことできるでしょう。偶の訪問でも度々顔を合わせる何人かの一人客に遭遇しますので、かなりディープな常連客がついているようです。
赤酢の酢飯の他にもウリはあります。まずはヅケ。湯引いてから漬け込んだヅケは、見た目は真っ白に近いもの。煮切りの味わいではなく、薫香に似たその独特の香りを楽しんでください。蒸鮑は肝も含めて旨みを充分引き出しています。コハダは塩がしっかり振っているようですがそれほど酢で占めておらずそれが赤酢の酢飯にドンぴしゃり。赤身や中トロも質的には上の部類と言えるでしょう。玉子は握りではなくツマミとして供されますが、東京でも最高レベルのものでしょう。そしてお酒。拘った銘柄ではないと思うのですが、この店では不思議とぬる燗が美味しく感じ結構弾んでしまいます。ぜひ酢飯とぬる燗の相性を確認してください。
やや小ぶりの握りのお任せ主体で1万5千円前後。ツマミとお酒を入れると2万円を超えますが、はずれとは言え銀座の鮨屋としては内容を考えると高すぎる価格設定ではありません。季節ごとの訪問をおススメしたい友里数少ない鮨屋の1軒であります。

2006年10月06日

料理を造ることだけに専念するべきだ、フェア・ドマ

三越前駅近く、リグーリア料理(イタリアの地方料理)を得意とするこの店のオーナーシェフは簡素なHPにブログを書いています。店宣伝の為のHP運営、ブログ公開のはずですが、この店の場合は逆効果ではないか。松橋シェフのブログ内容は、当日のランチやディナーの予約状況がほとんど。満席だ、いや何席か余っている、と書き出し、ランチのメニューを飽きもせず毎日更新しております。ランチはともかく、ディナーは驚いたことにほとんど連日満席なんですね。三越新館の「ASO」が夜の集客に苦しんでいる中、羨ましいものだと訪問して驚きました。入り口には「本日満席」と掲示がでていたのですが、店内は我々を入れて4組しか客がいないんです。テーブルはその倍の収容が可能な数ありますから、店内は寂しい限り。連日満席の店とアピールすれば、そんなに人気がある店なのかと新しい客を引き付けることができます。半分の収容で予約一杯と言うのは「満席偽装」ではないか。姑息な手段を使うシェフだと思い、友里ブログでちょっと取り上げましたら、彼はすぐさま反応してきました。詭弁を弄したその言い訳は、シェフの体は一つなので料理やワインのサービスがてんてこ舞いになってお客に迷惑がかからないようにディナーは「1日4組」を上限にしている、とのこと。素直に受け取るならばその方針に異論はありませんが、ではなぜ一々ブログや店先に「満席」と掲示する必要があるのか。なぜ最初から「1日4組限定」と公表しないのか。本当に5組以上入れたことがないのか。フリの客ではなく予約が主体の店ですから、ブログや店先に「満席自慢」を出す必要はないのです。しかも、この松橋シェフ、厨房にはほとんど居らず、ホールでオーダー受けやワインサービスばかりしています。調理はスーやスタッフに任せているようですが、自分が厨房に入りサービスのプロを雇えばより多くの客に対応できるはず。スタッフの雇用をケチり、「満席偽装」で効率よく客を集める営業と読みました。料理はメニューから自由に選べるコースが5千円チョイ、アラカルトはボリュームもかなりあります。ウリのジェノヴェーゼのパスタは松の実とチーズを溶かした濃厚なもの。悪くはない。豚の煮込みも量多く美味しい。食後のグラッパも種類が多いと良い所もかなりある店だけに、出たがりシェフが謙虚に厨房に引っ込めば、「偽装」しなくても本当の満席になる可能性があると考えます。シェフが裏方に徹して料理だけ造っていたら、結構良い店なんですけどね。

賞味期限は短いだろう、タツヤ・カワゴエ

イタリアンのプリンチペ(王子様)と言われている川越シェフ。Who is 川越 ?と疑問を持たれる方も多いと思いますが、ある女性層には絶大な人気があるとか。友里も「東京カレンダー」(以下「東カレ」と略す)の愛読者でなかったら彼の存在を知ることはなかったでしょう。昨年から特別待遇の掲載連発。あの学芸大学の有名イタリアンが広尾に移転、とありましたが本当に有名だったのか。うまく「東カレ」のライターを丸め込んだとの噂を聞きますが、川越シェフは「カノビアーノ」の植竹シェフと同じくイケメンで売れるタイプなんだそうです。「辻調」をでてから大した修業歴なくいつの間にか有名シェフに祭り上げられてしまいました。大家との契約問題から恵比寿店をクローズ、代官山へ移転したと言われていますが、漏れ聞くところ色々裏があるともいう話。私は「東カレ」で、内装工事現場にコックコート姿でポーズをとっている川越氏の写真を見て、勘違いしたシェフを確認に代官山店をすぐさま訪問しました。
店内は正面が半オープンキッチン。プリンチペが笑顔で迎えてくれます。カウンターはなんと2席だけ。ホールはパーティションで仕切られて各テーブルが半個室のように区切られていました。料理は前日までに予約のお任せ1万円の他、7500円と5500円の3コース。一番安いコースが前菜7皿とパスタでメインはなし。7500円は前菜が3皿にパスタとメイン。高いコースの方が、前菜が少ないのが変わっています。前日予約のお任せコースはドルチェを入れて10皿。しかしその内容がひどい。各前菜は当日オーダーのコースとほとんどダブっているのです。要は、7種の前菜を用意しておき、それを3コースに使いまわしているだけ。テーブル間の仕切はその仕掛けを客に見せない為のようです。内装は凝っていますが、料理は凝っていません。穴子のマリネや水ダコはデパ地下物との差を見出せないレベル。コンソメジュレやジェノヴァソースも業務用と大差ない味。イカ墨のリゾットも生米から造ったものなのか疑問。メインの和牛も美味しいものではない。ワインリストも貧弱でたいしたワインがありません。料理ではなく川越シェフ目当ての女性客はボトルを頼まないのでしょう。良く言えば「わかりやすい味」、はっきり言えば「セントラルキッチンの味」のイタリアン。噂では川越シェフは既婚者だというのを隠しているとの話も聞きますが、料理店は顔面ではなくやはり料理が大事。この料理では早晩飽きられてしまうと私は予想します。

大阪割烹の限界か、本店浜作

東京で最初のカウンター割烹、政治家や財界人御用達の店、と聞いて期待していたのですが、店内は居酒屋のような喧騒さです。テーブルでは雄たけびを上げる初老5人組。カウンターでは周囲の目や耳を気にせず妙齢のキャリア女性を口説き続ける年配常連客。JFKだ、ニュージャージーだと海外慣れを気取っているのですが、冷静な他人が聞くと滑稽なだけ。どうやらこの店で自腹の客を見つけるのは難しいようです。10月下旬に出版予定の共著で取り上げようと訪れたのは初夏の頃。良く言えば老舗、はっきり言えば賞味期限切れの「今浦島」的な店が大好きな共著相手のJ.C.オカザワ氏の推薦だったので、料理は元々期待していなかったのですが、客層や雰囲気がこれほどとは想定外でした。テーブルには最初から灰皿が用意されている、経費族御用達の居酒屋風割烹料理屋であります。
先付けの滝川豆腐。接客係りのお婆さんに「全部飲んで」と言われましたが出汁が濃すぎて無理。辛目の梅肉に合わせる鱧の落しは凡庸、鰈の刺身は熟成感が出すぎでした。大き過ぎる蛤の「はますい」は質がよくないからか出汁も大味で美味しくない。沢煮椀はこの店のウリモノらしくかなりのオーダーを受けていましたが、追廻が赤いキャップの瓶入りの粉を仕上げに振り掛けておりました。おいおい、もしかしてそれは「味塩こしょう」ではないのか。客前でアミノ酸系調味料に見られやすいものを堂々と使っている神経に驚きました。厨房内にはケチャップも置いてありましたが、あれは賄い食限定なのだろうかとの疑問も沸いてきます。オープンキッチンなのですから細心の注意を払っていただきたい。太田川の天然鮎の塩焼きは、業務用のガス焼物器の限界か焼き方の腕が悪いのか、蒸し焼きに近いものでした。せっかくの天然鮎が台無し。もう一つのウリである鰈の煮下ろし。から揚げした鰈に出汁とオロシ、そしてレモンをかけた一品です。造りよりも質を落としているのか身に旨みを感じず、出汁はレモン負けしているようで酸味が立ちすぎでした。以前は「浜作」を名乗る店が銀座に3店ありましたがいつの間にか淘汰されこの1店だけ。踏みとどまっているようですが、これが大阪割烹の限界なのではないでしょうか。一人当たり2万数千円の支払いを考えると、京料理と比べるのは酷かもしれませんが、同じスタイルの店、例えば「阪川」とは雲泥の差の食後感。高級和食を得意としないオカザワ氏も、私の評価を気にしたのか、新著で取り上げることを断念した次第です。
最後に。
日刊ゲンダイにこの記事を掲載後、本店浜作から以下のような連絡が入ったそうです。
「本店浜作では、化学調味料は一切使っておりません。赤いキャップの中のものは、「味塩こしょう」ではなく「胡椒」であります」
私は造っているところを見ただけで味わっていないので味塩が入っているかわからなかったのですが、店が違うと言うので間違いないでしょう。ただ、本文中にも書きましたが、ちゃんとした胡椒であるならば、誤解を受ける容器に入れることをしないほうがいいと思います。味塩を他の容器に詰め替えて使用を隠すならわかりますが、わざわざ誤解を受ける容器を使うのは意味がないからです。